2012-05-30
2.行くか戻るか…
また、キララの魔術で、違う空間へと移動したタケル達。
位置的には、さっきまでいた宇宙船と同じ場所にいるようなのだが、モヤに包まれながら、何か空間に浮かんでいるような、妙な気分だなとタケルは思った。
キララは、この空間を維持しようと、まじないのようなつぶやきを続けながら、何かに集中していた。
しばらくは、空間を浮遊するように動いていたので、子供達は体勢を整えるのに必死だったが、モヤが白い壁のように堅くなってくると、自分の体重を足で支えられるようになった。
子供達の中で、一番不満げなニックが、キララに向かって怒りをぶちまけた。
「オレはこんなことに巻き込まれなかったらさぁ
今ごろ宇宙ステーションで、ゲーム三昧の生活してたンだぜ~!
ちゃんと、元のとこに戻してくれるンだろうな…?」
「さぁね。アンタは戻っても、まずホスピタルで治療が待ってるだろ?
それから、アンタが正常な頭だったとわかれば、
あンなとこで何をしてたかって、取調べが始まるだろうけどね…」
「なんだよ。オマエが連れて行かなきゃ、あンなとこに行けるわけないじゃンよ~!
オレには、何の罪もないじゃン!」
「アンタは、自分でマシンをいじってたじゃないか。警察はとっくにわかってるよ。
アンタがシーナ、シーナって叫ンでたから、頭がおかしくなってさ
あンなことしたと思われたンだろ?」
「オマエが、急に消えるからだろ? 何で勝手に消えたりするンだ!
オレがこんなトコにいるのも…何もかも、オマエのせいだろ!!」
「何でも、アタシのせいにしてればいいさ!
…それで何でも解決すればね…」
ニックは、まだ言い足りなさそうに、ふてくされてしゃがみこんだ。
「そりゃそうと、タケル。
アンタの友達が、なんか妙なものを送ってくれたみたいだけど、この使い方知ってるのか? 」
タケルは、キララに小さなMフォンみたいなものを見せられたが、まったく見覚えがない。
「アンタがあの宇宙船で縛られている間に、
悪党に捕まってた、アンタの言うアニキって奴に聞いてみたけど、
宇宙でも使えるボックスらしいンだ。
タケルのMフォンにくっついてたから、アタシが持ってたのさ。
さっきの宇宙船からの転送には、こいつも使ってたンだ。
なかなか、良かっただろ?
アタシ的には、この空間ごと、これで地球まで行けるといいンだけどねェ」
「そんなこと、できるのか?」
タケルは、思わず叫んだ。
「どうだろう。アタシは、やってみたいンだけどね…」
「ちょっと、待って!
オレ、やっぱり家族のとこに帰りたくなった!」
キララに向かって、少年達の1人が、叫ぶように言った。
「うちの親は、ホント勝手で、オレのことなんてちっとも心配しちゃいないだろうけど。
オレには弟とか、妹もいるし…。
今までろくに面倒見てなかったけど、これから気持ち切り替えて面倒見たら、
こいつらみたいに、オレの言うこと聞くかもしれないし…。
アイツラの悩んでること、ちょっとは聞いてやってもいいかな~って…。
なんか、自分は何もしないのに文句バッカ言ってたし…、
親がナンかやってくれること、期待しすぎてたのかな~って。
もう一回やり直せたら、オレも自分で努力すれば、何とかやっていけるかもって…。
そう思えるようになったンだ…」
「それだったら、オレも…」
「ボクも、帰りたい…。もう、こんなのいやだよ…」
他の少年も、次々に帰りたいと言い始めた。
「タケルは? アンタが地球に行きたいンだったら、アンタひとりでも、アタシは行くよ」
タケルは、どうしてよいのか決めかねた。
「オレ達は、どうするンだ…?」
ニックは、ムスッとした顔のまま言った。
「そりゃ、戻ってもらうしかないね。アンタ達がそう思ってるンなら…」
「どうやって?」
「そりゃ、こうするしかないさ…」
再び、キララが呪文を唱え始めた。