2013-01-26
6.キラシャの運命
「アタシの言うこと、まだ信じられない?
まぁ、いいさ。
じっとしてても、時間は過ぎちゃうんンだ。
もし、アンタさえ、自分の運命変えたいと思ったら
いつでもいいよ。
アタシは、地球に行ってみたいだけなンだ。
アタシの知らない星だからね…」
キララは、そう言いながら、少し遠い目をして、何かを思い返していたようだ。
しばらく沈黙が続いた。
「それじゃ、教えるよ。タケル、覚悟しな!
アンタのかわいいあの子が、どうなるのか。
これを見れば、わかるさ…」
キララは、タケルの目の前に手を広げ、3Dホログラムを浮かべた。
その映像には、たくさんの民族衣装をまとった人々が、
華やかな音楽に乗せて、夢中に踊っている姿が見えた。
見ていると、自分も踊りたくなるような、熱気と楽しそうな笑顔が映っている。
その中に、少し違和感のある小さな集団が見えた。
民族衣装ではなく、タケルの見慣れたMFiエリアの服装だ。
『何だよ! ケンと、マイクじゃないか。それとキラシャだ!!
アイツら、いったい何やってんだ!
今は休暇中で、ケンはオリンの大会に出るとかって、ヒロは言ってた気がする…。
アッ、キラシャが、ケンを突っついた!
アイツら、アンナに仲良かったっけ…?
クソ~っ、2人ともヘンな踊りしやがって~~~』
タケルは、まるで目の前で起こっている出来事のように、自分を忘れて映像の世界へ入り込んでいた。
音楽の調子が変わると、人々は踊るのをやめ、中央の映像に目を向けた。
その映像には、自然の風景が写されていたが、やがて1人の老人が映し出され、共通語で話し始めた。
共通語の苦手なタケルには、ほとんどその内容はわからなかったが、その姿を見つめながら涙を流している人達を見て、その老人はとても偉い人なのだと想像した。
そして、スポットがキラシャの近くにいる知らない女の子を照らし、人々が歓喜の声をあげた。
とても、きれいな女の子だったが、タケルはキラシャの方が気になって、もっとキラシャを映してくれないかと、キララに目で催促した。
キララは、ニタリと笑って「これからだよ!」と言った。
その時、映像は真っ暗闇に包まれてしまった。
音だけが、状況を物語り始めた。長く続く銃撃戦。
タケルは、なにが起きたのかわからず、キララをジッと見つめた。
「アンタのかわいい子は、これで死ンじゃうのさ…」
タケルは茫然と、キララを見つめた。
「まだ、良くわかってないみたいだけど
今なら、間に合うンだよ、タケル。
あの子は、まだ生きてるンだ。
アンタがあの子をホンキで助けたかったらね。
しかも、その事件がきっかけで、地球規模の戦争につながっちゃうかもしれないンだ…」