切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

満願寺 京都市左京区

2021-04-16 22:58:56 | 撮影
満願寺

 

『京都市指定有形文化財
満願寺  六棟
本堂、 鐘楼、 手水舎、表門、 文子天満宮本殿、文子天満宮拜殿

 満願寺は示現山と号する日蓮宗の寺院で、 もとは西ノ京にあ って、天慶三年(九四〇)に 北野朝日寺の最珍を開山として創建されたと伝える。 当初は真言宗に属し、北野天満宮の御供所であった北野七保のなかの五ノ保社ともなっていた。その後、元禄十年(一六九七)に日蓮宗へ改宗するとともに、元禄十五年に現在地へ移転してきた。
 本堂は、移転後まもなく元禄十五年から宝永元年(一七〇四)にかけて造営されたもので、 京都市内に残る日蓮宗の一般寺院本堂のなかでは古い方に属する。建築的には、桁行三間・梁行 一間の身舎の四周に一間幅の裳階をまわして背面に内陣部を突出し、さらにその後方に土蔵造の奥陣を付設した複合建築で、変化に富んだ外観をみせている。また、その内部の力強い空間構成には近世的特色がみられ、日蓮宗本堂の近世遺構の一例として貴重である。  境内にはこのほか、当寺が現在地へ移転してきたときのものとして、鐘楼、 手水舎、表門、 文子天満宮本殿・拝殿などが残っており、位置が一部変化しているものの、江戸時代中期における日蓮宗の一般寺院の寺観をよく伝えている。
  平成七年三月三十日 指定
  京 都 市』  (駒札より)

    

 満願寺は左京区の岡崎地域にある。すぐ隣に平安神宮があり非常にわかりやすい場所だ。またこの地域は多くの寺院が建ち並び、また文化施設や京都市立動物園、美術館など地域全体が文教地域のようになっている。
 万願寺の創建については上記駒札の内容の通りになる。元々は西ノ京の方に菅原道真を追悼する目的で創建されたお寺が、後にこちらへ移ってきたということになる。神仏習合の時代であり、境内には文子天満宮が建つ。もちろん天満宮なので菅原道真を祀る。
 撮影に行った日はなんと桜が終わっていた。例年ならば満開の時期であったのだが、今年は暖冬ということもあって、全体的に桜の開花が早く、散るのも早かった。その辺は残念だ。境内は比較的広く、本堂の建物はなかなかの迫力がある。専門家ではないので詳しいことはわからないが、日蓮宗の寺院になったことによって、江戸時代の比較的早い時期に、堂宇が日蓮宗の様式によって建てられたとのこと。これも京都市の指定文化財の説明駒札にある通りだ。
 そして文化財に指定されている文子天満宮の拝殿と本殿にも期待していたが、なんと石造鳥居を残して他の建物は倒壊していた。まるで地震によって建物の柱が 全部同じ方向にに倒れたように見え、無残な姿だった。上にはブルーシートがかけられており、おそらくは再建修理されることになるとは思う。おそらく一昨年の台風19号が原因ではないかと思われる。
 満願寺は日蓮宗のお寺であり、本来ならば本尊は大曼荼羅となる。しかし過去の歴史的経過の中から、真言宗に属していたことも関係あるのか、こちらでは釈迦如来が本尊となっている。釈迦如来というのは仏教の開祖である仏陀(ゴータマ・シッタルダ)のことであり、その仏陀お尊称する仏像ということになる。ここ万願寺では特に本堂の中を見ることはしなかったが、なぜか日蓮宗のお寺に行くと本堂の扉が開いていて、奥にかけられた曼荼羅を目にすることが結構あった。
  岡崎一帯では平安神宮や知恩院がどうしても目立つが、その他にも多くの著名な寺院がある。満願寺もその著名な寺院の一つであり、機会があれば是非とも訪れたいところだ。桜の名所でもある。

   

 尚このお寺には世界的な映画監督、溝口健二氏の碑がある。彼の作品についてはいくつか見ているが、何と言ってもヴェネツィア国際映画祭で受賞した上田秋成原作の「雨月物語」が強く印象に残っている。白黒映画であり、戦国の世の中で若い夫婦が幸せに暮らしている中、夫も戦いに加わるよう要請があった。長い長い年月が過ぎ、夫はなんとか生き延びて妻が一人守っている屋敷に戻ってきた。二人の抑制された感動的な出会い。その夜、妻は夫のためにご馳走を振る舞った。酒も飲んだ。いつしか夜もふけ眠りに落ちていく。そして翌朝目覚めた夫が見たものは・・・ 無常感漂う静的な空間が、より一層人間の営みの本質を描く。当時まだ原作を読んでおらず、衝撃的なが最後のシーンだった。溝口健二はすでにヨーロッパで高い評価を受けていたが、この「雨月物語」でその評価は決定的なものになり、多くの欧米人に衝撃を与えた。今となっては古い映画だが、見る価値は十二分以上のものがある。是非とも見てほしい映画の一本だ。


   
コメント
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