先師遷化の翌日、近隣のお寺さんにお集まりいただいて打ち合わせがありました。
取り急ぎ必要となる「遺偈」「経歴」「葬儀の方針」について確認、勤めかたを教わりました。
「遺偈(ゆいげ)」とは、禅僧が亡くなる際に心境を示した偈頌のことをいいます。
先師の場合は、毎年1回作り替えるという話を聞いていましたが、
還暦の時に作ったものはありましたが、それ以降のものが見当たりません。
生前、自宅での病床中に、気持ちを推し量りながら遺偈について聞いてみました。
数日して「硯と筆を」と言い出して深夜にしたためたものをいただきました。
多くの場合で遺偈は漢詩の絶句(四句)の形式をとりますが、
先師がしたためたものは四文字で「世恩報謝」と。
これをもとに絶句の漢詩を作ってもよいかと尋ねたところ、
これには手を加えてはためだと…。
「経歴」とは、一般社会的な経歴と、僧侶としての歩みをまとめたものです。
急に取りまとめることもできますが、数ヶ月前に宗派事務所にお願いした経歴書をまとめていたので、
いくつかの確認事項を解決してすぐに作ることができました。
「葬儀の方針」については、難儀な問題と、解決済みの問題がありました。
難儀な問題のひとつは、日取りの件です。
8月9日に遷化したので、日本は全国的に8月の旧盆の直前という時期です。
ご縁のお寺さん方にすぐに動いていただいて葬儀をすることが最も難しいタイミングです。
そのため、取り急ぎ8月盆に影響を受けない近隣のお寺さんのみにお願いをして、
8月15日に荼毘式(だびしき;火葬前のご供養)を勤めることになりました。
そして次の節目は、四十九日忌です。
が、これもまた、秋のお彼岸と日程が重なることがわかりました。
お寺さんに動いていただいて、法要を勤めるのは難しいタイミングです。
荼毘式同様、近隣寺院(組寺)ご荷担のもと、近親者にて勤めることになりました。
次の節目は百ヶ日忌です。
ここれでようやく、近隣のご寺院さまご荷担のもとご葬儀の日取りが組めました。
難解な問題の二つ目は、新型コロナのことです。
感染症終息とはいえないこのタイミンクで、
多くの方に関わっていただく葬儀を勤めることができるのか…
堂内に多くの方を招き入れて、長時間にわたって読経をすることが許されるのか…
法要はできるかぎり言葉少なに勤め、堂内にお入りいただく人数も制限することにしました。
最後に、解決済みの問題とは、ご葬儀にお願いするお導師さまの人選についてです。
これは、生前の本人に直接希望をたずねてみたところ、すぐに答えが返ってきました。
葬儀は三仏事師の形式とし、三仏事師(秉炬師、奠茶師、奠湯師)の人選もさっと決まりました。
本人の希望を聞けたことによって、それぞれの佛事師さまへの依頼も受け入れていただけました。