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【書籍】下川裕治著-「僕はLCCでこんな風に旅をする」

紀行作家下川裕治氏のオフィシャルブログ「たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治」
http://odyssey.namjai.cc/

の新刊プレゼント企画になんと当選しました応募条件が「本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてる」となっているので早速レビューを書くとします。


私も今書いている旅行記の香港旅行の帰路の香港エクスプレスでようやく??LCCを初体験
詳細は旅行記の方で書きますが、JALの特典航空券の空席待ちが取れずにしびれを切らして香港エクスプレスを予約
預け荷物込みで片道13331円かかったものの、よく言われる座席の狭さも気にならず、思っていたよりもずっと快適しかも香港発の夜行便なので夜まで香港で遊べて満足「これはもうJALに(有料で)乗る必要はない」と思ったものですが・・・




朝日文庫。2017年11月初版。定価700円+税

下川裕治氏のLCC関連の本では2009年の「格安エアラインで世界一周」の本を以前に紹介しましたが
http://yaplog.jp/kiyop/archive/1668
ここから10年近くが経過し、今や下川氏が「日本のLCC元年」として提唱する2010年からも8年目。

今回紹介する「僕はLCCでこんな風に旅をする」は「LCC暦8年」の2017年の今の日本とアジアのLCC事情を紹介する本です。


第1章は著者下川氏のLCC搭乗体験記から「アジアのLCCの今」を感じるあれこれなエピソードが紹介されます。初っ端からプロペラ機のLCC路線が紹介されるなど、「LCC価格でプロペラ機に乗れる」という興味深い話が登場します。

第2章「LCCってなに?なぜ安い?」ではLCCとは何か?から始まりLCCの格安運賃の秘密に迫り、第3章の「LCCはいま」では近年の東アジア・東南アジアでのLCC界の話題など、クアラルンプールやシンガポールのLCCターミナルは既に閉鎖されていることなど、既に2009年の「格安エアラインで世界一周」の時代の話が古くなっていることが読み取れます。

「第4章・LCCの落とし穴」ではビザの要否・パスポート残存有効期限・片道航空券での入国問題・乗継時間など、かっては旅行会社が手伝ってくれたことを全部自分で情報収集・確認しないといけないといった注意点が言及されています。この辺りは旅慣れた人ならば今更な注意点かもしれませんが、色々な旅をする上で気に留めておいて損はない話です。


全体的に下川氏の豊富なアジア圏でのLCC搭乗体験をベースとして、それに解説を加えるような形で内容が進行。机上のネット検索で書いているようなハウツー本・記事とは一線を画しています。

一方でハウツー本のような「〇〇に行きたいならこれ」のような、ざっと見て必要そうなところだけ読めばいいような解説本ではなく、本書全体を通じて「LCCのいま」を知ったり、この本をとっかかりに次の旅行のに夢を膨らませたり計画を立てる。そんな本であるといえます。

なおアジア圏の体験談が主体となっている為、北南米や欧州などの話題は殆どありません。この辺りを期待している人にはちょっと残念かも・・・。


194ページ~最後269ページ?まで70ページ以上を使って資料編として、東京在住の馬場夫妻の対談形式でのキャンペーンの利用術や予約術を紹介。
「LCC=キャンペーンの驚くような低運賃」が話題になりやすいですが、キャンペーンだからといって最安値とは限らない。とか、色々なオプションがデフォルトでチェックが入っているので画面をよく確認しないと・・。など実体験を元にした興味深いエピソードも色々と・・。

また実際に今年5~6月頃の成田~台北桃園・那覇線の値動きを紹介。一週間の中での値動き、予約する時期による違いなど「何曜日が安いか」「早く予約した方が安いのは本当か?」などを調査しています。

火曜~木曜が特に狙い目とか、2か月前~2週間前がベストといった一定の法則があるものの、最後は、〇〇に行くのに何円までなら適正価格だと考えるのか?何円なら行きたいのか?という本人の気持ちの問題も重要になってくるのかな?と思いました。

「日本に就航しているLCC各社データ」では日本就航各社の概要と路線図など旅の計画に役立つほかに「2017年の今のLCC事情」を後年に伝える貴重な資料になりそうですね。
日本発着国際線では地の利を生かしたのか韓国系航空会社航空会社が多いのが注目点。一度ソウルに渡ってから、そこから乗り継いで先に進む・・というのも手かも??



「LCCのカテゴリーには入れない」という意見があると注釈付きながら、スカイマークも紹介。
日本の格安航空の草分け的存在ながら2大巨頭に頭を抑えられ苦戦。


本文中に登場する「日本のLCCは周回遅れ」という言葉を初め、要所要所に登場するLCC先進地の東南アジアの実例から日本のLCCはまだまだ発展途上であることが読み取れます。

既に日本以外のアジア圏では、LCCターミナルは過渡的存在として消え、機内食・預け荷物の有料化など「LCCの原則」が崩れつつあること、特に中長距離路線でレガシー航空会社と運賃面での差がないなどの実例、そもそもでLCCとレガシー航空会社の違いはわかりづらく、「中間クラス」と呼べる航空会社も登場など、変化の激しい状態は今も続いているよう。

「周回遅れでも端から見ればトップ争いをしているように見える」といいますか、日本では特に「ピーチ・ジェットスター・バニラの3社こそがLCCである」と明確にしたいという意思があるのかなと感じます。
支払手数料のような不明瞭な手数料、代理徴収しているはずの空港使用料や出国税の返金問題。支払済み運賃全額没収するキャンセル料金など、法令に抵触したり信義に反するようなことを「LCCという新しいスタイルの格安航空会社だから」という理由でなんとなく許されている。そういう環境を維持したいのかな?という印象を受けます。

特に新生エアアジアを除いた3社はJAL・ANAという日本の2強航空会社の傘下である。という点も見逃せないと思います。
(注・消費者契約法9条ではキャンセル料は事業者側の損害額を超えるキャンセル料を無効としている。1~2か月前のキャンセルでも無返金は果たして実損額と言えるのか?)


また、預け荷物に数千円徴収するLCC航空会社が大半な中で、「荷物を極力機内持ち込みで済ます」というのは節約旅行術の一つ。下川氏の旅のスタイルとして全体的に荷物を預けないで済むぐらい減らしている囲気を感じますが、その辺り、荷物を減らすテクニックの紹介などもあると良かったかなと思います。
資料編に「(沖縄旅行で)お土産はゆうパックで送る」という話が一応ありますが、恐らく旅慣れた下川氏独自のノウハウなどもあると思うので・・。
国際線の液体物機内持ち込みが厳しいので、特に化粧品やコンタクトレンズがどうなるのか気になりますね。その辺りに明確に言及した話はネット上でもあまり見ないのでよくわからないのが実際で・・・。
それにしても液体物持込み制限とLCCは嫌な意味で相性がいいなと


航空券を購入するベストなタイミングの件に関連して、香港エクスプレスのように座席数が違う機材を運用している場合の予約管理をどうしているか気になります。LCCはオーバーブックがなさそうなので。
機材によって使用路線・便を完全に固定している可能性もありますが、不効率になりそう。
国内の鉄道の場合、少ない座席数の車両を想定して予約を取り運用が確定する2日前頃に差分を放出。というのは聞く話ですが、それと同じように「直前のある一定日に放出する」スタイルならそこを狙えば安く買える可能性もあるかも??と期待したり・・・


また第4章「LCCの落とし穴」に関連して、自己責任という言葉がネガティブに捉えられることもありますが、LCC時代になって片道航空券を組み合わせるような,
かっては難しかった旅程でも気軽に自由に楽しめる。という旅行者側が大きなメリットを享受できる「楽しみ方も無限大」という意味での「真の意味での自己責任」の時代に突入したことを改めて感じます。
旅行会社が手伝ってくれる・・といっても、今年4月のてるみくらぶ倒産のように、旅行会社が倒産して旅行に行けない、支払済み代金の返金も望めない。となってしまえば泣くに泣けません。既存旅行会社の業態が既に終わりつつあることは本文からも読み取れます。

「今度の夏休み。予定がないからちょっと旅行に行ってみようかな」のように行先を決めずに旅行会社に行き、お勧めの行き先を相談する。かってはそういう受け身な旅行スタイルも珍しくなかったと聞きます。
「若者の旅行離れ」という言葉も聞かれますが、「とりあえず旅行に行ってみる」ではなく「旅行に行きたい」「移動したい」人が好きな旅行をする。「LCCの時代」からはそんな変化をも改めて感じさせられますね。


奇しくも「日本のLCC元年」である2010年にJALが経営破綻。
当時は格安航空券といえば正規割引も含めて、大型機の座席を埋めるために格安に放出されるもの。
破綻前夜の頃からしきりに「ダウンサイジング」や「ジャンボ機の時代」の終焉が語られるようになりましたが、そうなれば格安航空券の実勢運賃は上がり、また海外旅行に行きづらくなる時代がくるのでは?そんな不安も感じました。

しかし航空業界はLCC時代に突入。日本発国際線の実勢運賃が上がるどころか、ますます下降して今に至るという当時の不安が杞憂に終わる嬉しい結果となりました。

LCCの魅力といえばなんといっても値段・・のはずですが、下川氏が前書きで
「出来ればLCCを利用せずに旅をしたいと思っているのだが、気が付くと狭い座席に腰を下ろしている」
と述べています。どこか値段だけではない魅力があるのではないか??どうせ乗るならLCCに乗りたい。
レビューとしては余計な記述も多く長くなりましたが、そんなLCCの魔力をも感じる一冊でした。


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2017/12/11 23:13(JST)
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