昨年2021年12月17日、小田急では大幅な減量となる2022年3月12日ダイヤ変更が発表されました。
それにあわせてもう一つ、ロマンスカーVSEがダイヤ変更前日の2022年3月11日をもって定期運用からの離脱。その後イベント列車用となり2023年秋頃の引退(廃車)という衝撃的なニュースが発表されました。
ロマンスカーVSEは2005年デビューで21世紀のロマンスカーにふさわしいフラッグシップな特急車両。現在では最新型のGSEがデビューし座席コンセントなど見劣りが出る部分も出てきたものの、GSEとVSEの2種で兄弟のように小田急の顔役として活躍しています。
今年2022年でデビューから17年、鉄道車両としては実に早すぎる引退。2編成で35億円といわれる開発製造費の元が取れたのかどうかも怪しいと言いたくなります。
引退の理由として後述する記事等では、車体傾斜やダブルスキンという特殊な車体構造により保守部品の枯渇などが言われています。
また私の想像として、それ以前のロマンスカーが11両連接であったのに対し、VSEは10両連接として1両の車体長を伸ばしたことが祟ったのでは?とも感じます。
しかしながら理由はともかくVSEの引退はとても衝撃的です。私としても特急車両の引退としては2012年のJR371系の引退に次ぐ衝撃であり大変残念です。VSEは今まで何回も乗っているとはいえ、3月までにもっと乗っておきたいもの。
VSEの車内。座席が窓側に少し傾いていることで着席すると通路から隔てられている感が出てワンランク上な感があります。
ただ窓の下辺が高めなのは少々残念。
☆小田原駅箱根湯本方面の時刻表
箱根湯本発着のロマンスカーは平日7.5往復、土休日6往復の削減が発表されている。平日はかなりの時間帯で毎時1本化、土休日も毎時1~2本になることが推測されます。
この他に各駅停車の減便も発表されており、コロナ収束に向け繁忙期を中心に輸送力不足が懸念されます。繁忙期の臨時増発の計画はあるのでしょうか?
今回はVSE引退と小田急ロマンスカーの今後に関しての雑感を書きます。
☆ロマンスカーとホームドア
もはや2020年代の都市鉄道の必須装備となった感のあるホームドア。一方で小田急は東急など周辺他社に較べホームドア整備が遅れ気味。現状では複々線区間の緩行線部分を除くと新宿(4・5番線)、下北沢・登戸(下り)など一部に留まっているものの、自治体がホームドア整備に補助金をつけるなど22年度以降本格化が予想されます。
その中でVSEが予想外の早期廃車になった理由としてファンの間では「他の車両と著しくドア位置が異なることでホームドア対応が難しいから」という下馬評が説得力を持って語られました。
一方で東洋経済オンラインの記事では小田急への取材で「ホームドアはクリアできる」「座席定員数などの理由ではなくあくまで保守面での問題」としています。
(東洋経済オンライン>小田急「白いロマンスカー」VSE、早すぎる引退理由)
なお、VSE以外のロマンスカーでもホームドア対応を考慮したGSE以外のMSEやEXEでも対応が難しく、地下鉄千代田線内では一部ドアのみを開けることで対応しています。
千代田線内でのMSEとホームドアの関係に関しては以下↓サイトが詳しいです
(YCS-info>東京メトロ千代田線のホームドア)
西武新宿線の西武新宿や高田馬場では扉位置が異なる特急車両に対応するために大開口タイプのホームドアが採用されています。今後小田急でも大開口タイプを採用するのかどうかにも注目したいところ。
それにしてもEXEはともかく2008年デビューで地下鉄直通前提のMSEですらホームドア対応が意識されなかったのは遅れてるように思います。
地下鉄千代田線内でドアが開くのは1・4・5・7・8・9号車
6号車の特急券を持っている場合、車内を丸々1両分以上歩く必要がある
(3・10号車も同じく)
☆ロマンスカーの今後の車両計画
今年3月のダイヤ改正でVSE2編成が定期運用から引退する一方で、平日朝のモーニングウェイは3本増発。新宿着6時29分~9時27分の約3時間に9~21分間隔で12本運転されることに。
平日朝のモーニングウェイでは改正前の現時点でEXE7編成のうち6編成が運用に就いておりギリギリ。恐らくは定期運用から引退するVSEを予備として他の編成をフルに活用すると予想します。
ロマンスカー車両の追加増備が行われるまでは、他の編成の長期検査、故障・事故による離脱の際は時々はVSEが定期列車の運用に入ることが期待できるかも??
今後の車両計画として既出の記事では「現時点での特急車両の追加増備の予定はない」また申込者向け見学会での「EXEの未更新車(残り2編成)の更新は当面行わない」との証言が報告されています。
この情報から今後追加増備があるとしたら23年度以降。ロマンスカーの顔である展望車がわずか2編成ではあまりに寂しすぎます。23年度にはせめてGSE1~2編成の増備に期待したいです。
車両運用が逼迫することを考えるとEXEの更新(EXEα化のリニューアル)に出す余裕がないともいえそうが、EXE自体のデビューが96~99年で既に20年以上経年していること、今後MSEの更新(リニューアル)も視野に入ることを考えると、未更新車2編成(+最初に更新した1編成)の計3編成の23年度以降の処遇も注目でしょう。
(余談ですが、EXEの更新第1編成は座席コンセントなしなど仕様が異なります。8000系も最初に更新した編成はVVVF制御化を行わなかったなど、どうも最初の1編成はやっちまう傾向がありますね)
ロマンスカーの編成数としてはHiSE・RSE・JR371系の4編成引退した2012年3月以来減量体制が続いています。(この時に代替新造されたのはMSE6+4両の1編成のみ)
またEXEの更新は既に5編成が終了したものの、年に1編成程度のスローペースでした。2012年以降複々線完成を挟みロマンスカーの車両・運用計画を決めかねていたようにも見えます。
☆一部特別車化の可能性
最後に一部特別車列車の導入の可能性について考えます
小田急での一部特別車導入に関しては私は2008年に↓の記事で述べました。
特に江ノ島線に関してはロマンスカーの本数が少なく、「追加料金を出して快適に行きたい」という需要にJRグリーン車等と較べても完全に後塵を排しています。
ここで23年度以降にEXE未更新車を中心に代替時期を迎え、更にロマンスカーの車両計画が現行から更に変わることを考えると、EXE2~3編成廃車による減量の代わりに一部特別車快速急行の新設の可能性が出てきたともいえます。
一部特別車を導入すると通勤車8両+特別車2両とすると通勤車の輸送力が減るのが難点。しかし2022年3月改正で減便により輸送力が減らした分を戻す形として行えば、22年3月改正前後の間を取ったような輸送力を確保することが出来るでしょう。
また朝ラッシュ時は一部のモーニングウェイ号を減便し一部特別車快速急行とすることで通勤列車の輸送力を減らすことなく一部特別車列車を導入出来るでしょう。
(例えばモーニングウェイ2~3本減で一部特別車快速急行を4~9本設定など)
一部特別車導入が実現した場合、車両面では新造特別車2両+通勤車8両(新5000系の組換えもしくは3000系の更新と組換え)が穏当なところでしょうか。その際新造する特別車はGSEタイプとして、小田急の顔である展望ロマンスカーに気軽に乗れるようにしてほしいなと思います。
また平日朝上り以外の本数としては江ノ島線・小田原線それぞれ毎時1~2本は欲しいところ。
VSE8号車の旧売店と旧喫煙室(写真右)
喫煙室には天窓もありデッドスペースにしておくには惜しい空間
一部特別車導入の暁にはJR普通列車グリーン車のように車内改札と車内販売を兼務する形でスタッフを乗務させて車内販売を復活させてほしいものです。
今回はここまで
2022/1/8 00:57(JST)