<前回から続く>
さて前回の記事では、1991年(平成3年)の大和市域の路線バス網を見てみましたが、読者の方から1978年(昭和53年)の運輸経済センター発行の神奈川県のバスマップの画像を提供いただいたので紹介します。
この運輸経済センターのバスマップは、地図上に停留所位置と路線を落とし込んだ路線図と地図に準拠した系統図の2枚で1組という構成になっています。
これまでのバス路線図と言えば、ターミナル駅を拠点とした系統図タイプで、このような実際の地図に準拠した路線図というのは当時としては画期的なものだったそうです。岩波新書「都市と交通」だったかな??ではこの路線図の開発した際の苦労話が載っていた記憶です。
さて1978年のバス路線図に話を戻すと・・、全体的には前回紹介した1991年とあまり変化がありませんが、細かい部分に違いがあります。
◎引地台公園関連。相鉄バス桜が丘駅乗り入れ
1991年時点で相鉄バス綾2・綾3系統として大和駅~引地台公園間で運行していた系統は、大和駅~大和警察署~日飛入口~光が丘~大和駅の循環系統となっており引地台公園には乗り入れがありません。
系統図では東門の表記が残っていることから、大和駅~東門の路線がイーストキャンプ閉鎖で短縮された、引地台公園開設直後の過渡期の姿ですね。
また大和駅~大和警察署~日飛入口~引地台公園入口~桜が丘駅で相鉄バスが桜が丘駅に乗り入れています。桜が丘駅は現代では相鉄バスの乗り入れはありませんが、大和市民まつりのシャトルバスは大和駅~引地台公園入口~桜が丘駅(神奈中バス・間17系統のルート)で相鉄バスと神奈中バスで運行され当時が偲ばれます。
◎大和駅の発着場と上和田発着場
大和駅の発着場は3か所に分かれています。
A:大和駅西口
大和駅北側の現在の「大和駅西口バス」停に類似した場所
B:大和駅
国道467号線沿いの現在のシリウス付近。1991年では消滅(深見バス停に)
C:上和田発着場
現在の大和南交差点付近。1991年では大和駅バス停
当時は大和駅前が整備されていない状態でバスの本数を裁く苦肉の策なのか乗場が駅周辺に分散していますが、特にBの大和駅バス停は今のシリウスの裏側辺り(と推測)。大和駅で電車とバスを乗り換えるのも一苦労です。
また上和田発着場というバスの行先を冠した乗場の名称も珍しいですね
ちなみに現代でも夏の阿波踊りの際は大和駅周辺で大規模な交通規制が敷かれる為、上和田団地方面のバスはCの上和田発着場相似の「天満宮バス停」で折返しとなります。
他にも鶴間駅の発着路線が多いことが、鶴間こそが元々の大和の中心だというのを示しているよう。
さて、紹介した1978年・1991年のルートマップともに路線網や停留所は分かるものの各路線の本数が分かりません。この路線図では1日1本でも10分に1本でも同じように表現されるため肝心の本数が分からないのが残念。
1991年に関しては当時の小田急時刻表で駅発の時刻表が掲載されているので、探し出したらまた続編を書きます。
鉄道にしろバスにしろ車両研究こそが王道のようになっていて、残念ながら路線やダイヤとなると資料がなかなか残りません。鉄道でも微妙ですがバスとなると絶望的で・・地域公共交通史を調べる上で資料のなさは残念なものですね。
1991年以降現代までの路線の変遷に簡単に触れます。
大和市のサイトに平成14年2月以降に廃止された路線の一覧が掲載されているので引用します。(廃止バス停は市内分のみ)
相鉄バス㈱
大和駅~引地台公園
警察署前、日飛入口、引地台公園
平成20年10月
相鉄バス㈱
相模大塚駅~さがみ野駅~相武台前駅
廃止バス停なし
平成18年1月
神奈川中央交通㈱
長津田辻~小学校前
廃止バス停なし
平成15年10月
神奈川中央交通㈱
学校前~大和駅
富士見町
平成15年4月
神奈川中央交通㈱
今泉~西鶴寺(国道246号新道経由)
廃止バス停なし
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
駅前通り~小松原入口
県営住宅、大和学園セシリア入口、鶴間原
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
鶴間駅~駅前通り
小学校入口、西鶴間二丁目、南林間四丁目
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
下鶴間(国道246号)~鶴間原
つきみ野二丁目、つきみ野一丁目、代官山、大和学園入口、鶴間原
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
つきみ野二丁目~町田ターミナル
つきみ野二丁目、北大和小学校、つきみ野橋、つきみ野七丁目、つきみ野八丁目
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
鶴間駅東口~つきみ野駅
鶴間中学校、南林間駅入口、代官山、中央林間二丁目、中央林間駅、中央林間四丁目、上野(かみの)住宅
平成14年11月
神奈川中央交通㈱
湘南台病院前~下和田
廃止バス停なし
平成14年10月
平成14年(2002年)秋以降に神奈中バスの大規模な路線整理が行われています。一方で同じ2002年度に6か月間ののろっと号の実験運行が行われ2004年度から本格運行化。更に2013年度にやまとんGOバスの実験運行が約半年間行われ、2014年度から本格運行化されました。
神奈中バスの路線整理を代替えするかのように、のろっと号が登場。その陰で相鉄バスの引地台公園乗入れは終了。更に2013年からはやまとんGOバスで路線網が拡充しています。
現代日本では神奈川県のような都市圏やその郊外も含めて、全国的に市街路線バスは乗客減が続き減便や路線廃止による縮減傾向にあります。
一方で大和市域だけでみれば、2004・2014年のコミュニティバス網(のろっと、やまとんGO、のりあい)の拡充による効果で、バス路線網としては充実し「最寄りバス停まで徒歩5分程度」のエリアも大幅に広がり路線バスの利便性が大きく向上しているのも見逃せません。
これらコミュニティバスは最終便が17時代(のりあい)18時代(やまとんGO・のろっと)と早く通勤通学の帰路に使いづらいこと。またのろっと号は2時間近く間隔が開く場面もあり本数面での難で、終日気軽に使えるとは言い難い部分もあるのも事実です。
一方で本数が少なく難がある路線は神奈川県内だけを見ても一般の市街バス路線でも珍しくないのも事実です。
公共交通論者や趣味人の間では公共交通への欧州並の高率な公的補助への待望論もよく聞きます。市街路線バスで見れば全国各地に登場しているコミュニティバスという形で、高率な公的補助による公共交通の運営が既に実現しています。
一方で例えば東京23区でもコミュニティバスが充実しているのが、港区・渋谷区・中央区・台東区といった都心部の比較的財政が豊かな区であるように、今回取り上げた大和市もまた市域の大半が最寄り駅から徒歩15~20分圏内でかつ人口増が続くなど財政的にも強い自治体であるのも事実です。
2020年代の現代、市街路線バスという地域公共交通のバス路線網の維持、利便性の高低が事業者のみならず、自治体の方針と手腕に大きく影響されることにも留意しておきたいものです。
2020/5/29 1:24(JST)