今日、目が覚めてカーテンを開けて窓を見ると、昨日から降り続いた雪が積もってやっと冬らしくなった。秋のオススメの小説は?、というお題のなかでじっくり読んで楽しい小説としてはこの推理小説がオススメ。実際の事件を元に作られたフィクション。あなたが名探偵ぶりを発揮して解決できるかも知れない。
現在、経済の発展が著しい「タイ王国」の本当の話
タイのシルク王「ジムトンプソン」の失踪の謎を解明する「松本清張」氏の本格推理小説。
実際、この舞台となったマレーシアの避暑地「キャメロンハイランド」で事件は起きる。
この事件と 小説では同じ避暑地の軽井沢を舞台に「密室殺人」が行われるところがフィクションである。
シルク王の失踪に関しては、綿密に実際の捜査を踏まえて忠実に再現されている。
そのため、東南アジアの社会情勢など、あらゆる可能性に言及しているため「文庫本」では「上・下巻」となっている。
内容は非常に濃いのだが、この分厚い二巻があっという間に読み終えた。
ストーリーがまるで、作られたかのようなテンポで進んでいくのだが、実際は、未解決事件として本当にあった話であると我に返る。
実際に捜査状況を研究した資料「ウィリアム・ウォレンの失踪」を読んでみると、よりこの小説がノンフィクションに限りなく近く書かれていることを再認識する。
※ミステリーの扉は、世界の情勢化のなかにあった。
登場人物の設定は若干違うところがあるが、ジムトンプソンの世界大戦の時のOSS(現CIA)の所属の事や謎の「透視術師」へのお金のかけ方、キャメロンハイランドで有名な紅茶の栽培方法が日本の緑茶栽培に使われる「段段畑」であることなど、展開の置き換えが真実を元に自然に再現されている。
ここまでくると、この「熱い絹」だけを読んでシルク王を「ジムトンプソン」に置き換えるだけで、この失踪はどんな事件で、どんな人が関わってきたが分かるくらい詳しい小説となっている。
この展開を追って行くと、つい旅行好きな私は、すぐにでもタイからマレーシアへ行きたくなる。寒い日本を抜け出して乾期で暖かい国へ。
この小説を読んで、最初の段階に「クメール遺跡」が出てくる。この失踪事件のあった当時、タイとカンボジア国境付近から出土する遺跡の数々。
※ジムトンプソンの家(ミュージアム)には、このような遺跡の展示物もある。
ジムトンプソンのもう一つの趣味、遺跡の古物収集。
作者、松本清張氏は、「なぜマレーシアだったのか」「親しい友人4人が集まったのか」と事件で検証されなかった盲点を推理する。(失踪の作者ウィリアム・ウォレンも同様の事を感じていたようだ)
この本は、未だ未解決となっている事件を、推理小説仕立てで推論したものである。
時代もまだ生きているから、遺体さえ見つからないと時を刻む。
今となっては、未開決事件として収束している。
タイの旅行のお土産でも有名な「ジムトンプソンの家」であるミュージアムは日本語で説明を受けながら見学できる。
今なお、熱い絹のジムトンプソンの家は、文字通り各国から観光客が「タイシルク」を求めて止まない。
少し厚手の文庫ですが、一気に読み終えてしまいます。
重さに左右されないKindle版もあります。