小関順二公式ブログ

プロ野球、アマチュア野球、野球史

イチロー型を取り入れた田中賢介の野望

2011-06-20 19:25:18 | プロ野球観戦記
◇6月15日(水曜日)甲子園球場
セ・パ交流戦
阪神対日本ハム

 6月3日のヤクルト戦で今季初めて日本ハム戦を見たが、そのときは田中賢介(日本ハム)の変身に気づかなかった。そして2日後、6月5日の巨人戦を見て、アッと思った。多くの選手のような「軸回転」ではなく、「前重心」で打ちに行っていたのだ。これはイチロー(マリナーズ)くらいしかやっていない、極めて珍しい打ち方だ。
 簡単に言えば田中賢やイチローのような左打者の軸足、左足が打ちに行きながら前に動いていく。その長所は下半身は打ちに行っているのに、バットを持つ腕は後ろにあるところ。つまり、打ちに行っているのに寸前までボールを打とうか打つまいか、見極めることができるところにある。
 打とうか打つまいか、体の近くまでボールを呼び込めることができる半面、それほど体の近くでボールを捉えることができるのか、選手の能力が問われる。プロ・アマにかかわらずほとんどの選手はそれほど体の近くでボールを捉えることはできないので、この取り組みはマイナスになることが多い。投手にとっての「トルネード投法」と同じ問題点を孕んでいるのだ。
 私は以前、中・高生はイチローの打ち方や、野茂英雄(元ドジャースなど)の投げ方はマネしないほうがいいと頻繁に書いた。技術が一定のレベルにない選手にとってイチロー型や野茂型は難しすぎる。前重心はどん詰まりの打球を量産するはずだし、トルネードは早い体の開きを助長し、抜け球を量産するはずだ。
 しかし、この難しい打ち方を1000本近いヒットを打っている一流打者の田中賢が取り組むとなると話は違ってくる。ちなみに、6月19日現在、通算1382安打放っている柴原洋(ソフトバンク)はイチロー信奉者として知られ、技術的にも前重心を取り入れていたが、15日に行われた阪神との二軍戦(代打出場)を見た限りでは普通の打ち方になっていた。今の柴原に前重心は難しすぎるのだろう。
 現在、田中は左足首ねんざで登録を抹消され(6月19日)、オールスター後の復帰が予想されている。打撃成績は打率・290(パ・リーグ9位)。そこそこだが、いまいち物足りない。超絶技巧の前重心をモノにできるかどうか、産みの苦しみを味わっているところである。これをモノにできたとき田中がどれほどの打者になっているのか、私は楽しみでならない。 


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