菅野智之(投手・東海大)に巨人、日本ハム以外にも触手を伸ばす球団があった、という話をする。ドラフトが行われる数日前、ソフトバンクの永山勝スカウト部長と電話で話をしていると、「武田(翔太)か菅野かで迷ったんですよ」と言われて少し驚いた。30歳台に突入した馬原孝浩の後釜として菅野に白羽の矢を立てたのだという。指名にこぎ着けるのが大変、というニュアンスではない。地元の逸材、武田にあえて向かった、という口ぶりで、武田指名に落ち着いた経緯を話してくれた。ドラフト後ではない。ドラフトの3日前くらいのことだ。
日本ハム、巨人の関係者をはじめ、球界内外が「日本ハムの菅野指名の是非」で揺れ動いているが、少なくともソフトバンクが逸材の争奪戦に加わろうとしていた。実際に参戦していたらここまで「日本ハムは偉い」とか「日本ハムは人権を蹂躙している、空気を読めない」という偏った賞賛・批判の論調にはならなかっただろう。
その年、最も注目している逸材がいたら獲得に向かって全力を尽くす、というのはプロ野球チームなら当たり前のことだし、真摯な態度である。それが好奇な目で見られたり、批判・悪罵される。日本ハムだけではない、巨人にも批判・悪罵の刃は向けられている。繰り返すが、もしソフトバンクが菅野を1位に入札していたら、こういう事態にはならなかっただろう(武田の1位入札は大正解だと思っている)。3分の1の当たりくじを引き当てた日本ハムの強運をダルビッシュ有とともに驚いていただろう。そうなっていない現状が悲しい。