香竹日記

書道の奥深さを楽しんでいます

芳野三絶(日本人による吉野桜の漢詩)

2021-06-13 20:51:44 | 漢詩
ちょっと季節外れになってしまいましたが今頃、
桜の花のまとめとして、かねてより気になっていた「芳野三絶」について記しておきたいと思います。

「芳野三絶」というのは、
梁川星巌(1789~1858)・
藤井竹外(1807~1866)・
河野鉄兜(1825~1867)の三名が
吉野山をうたった優れた漢詩のことです。
吉野が桜の名所ということで、わざわざ芳という字にしている。



① では梁川星巌の詩から
 芳野懐古
今来古往事茫茫  
石馬無声抔土荒  
春入桜花満山白  
南朝天子御魂香  

今来古往 事茫茫
石馬声無く 抔土(ほうど)荒る
春は桜花に入って 満山白し
南朝の天子 御魂香し

※ 南朝天子:後醍醐天皇(1288~1339)



② 二番目に藤井竹外の詩
 芳野懐古
古陵松柏吼天飆  
山寺尋春春寂寥  
眉雪老僧時輟帚   
落花深処説南朝  

古陵の松柏 天飆(てんぴょう)に吼ゆ
山寺の春を尋ぬれば 春は寂寥
眉雪の老僧 時に帚(ほうき)を輟(とど)めて
落花深処 南朝を説く

※ 古陵:後醍醐天皇の御陵。延元陵
天飆:つむじ風
※ 山寺:如意輪寺を指す
※ 南朝:1336年~1392年の72年間



③ 最後に河野鉄兜の詩
 芳野
山禽叫断夜寥寥  
無限春風恨未消  
露臥延元陵下月  
満身花影夢南朝 

山禽叫ぶを断ち 夜寥寥
無限の春風 恨み未だ消えず
露臥す 延元陵下の月
満身の花影 南朝を夢む

※ 延元陵:後醍醐天皇の御陵



三首どちらの詩にも風景が映画の一場面の様に描き出されてきます

春、桜花の季節、こころ躍るような美しい風景の時期に
悲劇性を帯びた南朝の後醍醐天皇を偲ぶ・・・

どちらも深い詩情が沸き上がり、感動の詩が生まれていますね。

🌕 🌸🌸🌸

露臥延元陵下月 
満身花影夢南朝  


後醍醐天皇の陵のところにごろんとそのまま寝転んでいると露が降りています
するとそこに月が差し、桜の花影が満身を包み込んでくれている・・・
そんな中で南朝の夢を見るんです。。


ここの部分がたまらなく好きです 💛


吉野山について気持ちが向いていると、「桜本坊」天武天皇夢見の桜とか、、、この地にゆかりのある、大海人皇子と讃良皇女のことが浮かんで来て又機会があったら思い出し整理してみようと考えてしまいました。。。



尚、「芳野三絶」につきましては石川忠久講話集他、参考にさせて頂きました
感謝です。

    ― 桜シりーズ一旦終わり ー
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