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週刊 お奨め本
2012年2月5発行 第484号
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『絶望の国の幸福な若者たち』 古市憲寿
¥1,800+税 講談社 2011/9/5発行
ISBN978-4-06-217065-9
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格差社会。
ロストジェネレーション。
ワーキングプア。
悲惨な現実が連日報じられ、その中心となるのは「若者」。
今の若者はかわいそうだ。
経済成長を知らず、将来に夢を持つこともできない。
でも実際には、2010年時点で二十代男子の65.9%、二十代女子の75.2%が現在の生活に満足しているという。
いったい、今の若者は幸福なのか不幸なのかどっちなんだ?
著者の古市憲寿は、弱冠26歳の若手社会学者。
発行人はこの本で名を知りましたが、既に著書がこれで三冊目らしく(うち一冊は共著)、その世界では知られた存在のようですね。
しかし本書一冊読んで、現代の若者について把握できるかといえば、もちろんそんなことはない。
著者も冒頭でそのことについては宣言している。
この本は現代日本の若者を「ざっくり」と把握できるけれど、「すべて」ではない、と。
その「ざっくり」の中身を、ちょっとだけ紹介すると。
> 若者の生活満足度や幸福度はこの四〇年間でほぼ最高の数値を示している。[…]一方で、生活に不安を感じている若者の数も同じくらい高い。そして社会に対する満足度や将来に対する希望を持つ若者の割合は低い。(102頁)
いまは下にいるけれど、将来は上にいける。そういう希望を持つことができるとき、いまいる場所を下と認め、不幸と感じる。
将来に希望をなくしたとき、人は幸せになれるのだ。
大きな世界に不満はあっても、小さな世界には満足。
今だけを見る、身近な幸せを大切にする、そんな「コンサマトリー」化が進んでいる。
小さな幸せを抱きしめながら、大きな社会にもつながりたい。
そんな欲求は、ワールドカップでの日本応援でのお祭り騒ぎになり、ボランティア志向になる。
東日本大震災では被災地支援というわかりやすい形で、コミットすべき対象が立ち現れた。
皆、何かをしたかった。役に立つことをしたかった。でも何をすればいいのかわからなかった。そこに起きた大震災。ようやくすべきことが見えた。待ってましたとばかりに募金運動を行い、現地入りし、反原発デモに参加する。
古市本人は、幸せの条件を「経済的な問題」と「承認の問題」と言っている。
WiiやPSPを買えるくらいの経済状況で、それをいっしょに楽しむことができる友だちがいれば、だいたいの人は幸せなんじゃないか。
ああ、それ、わかる。
もちろん、ゲームに興味がなければWiiやPSPじゃなくてもよくて、例えば一緒に旅行に行く友だちがいて、旅行に行けるだけの経済状況である、ということ。
それが映画でもカラオケでもデモ行進でも。
問題は、その経済状況がいつまで続くか、なんだけど。
若者が感じる幸せの基盤が、少しずつ根腐れしているように思えてならない。
> 世代ごとの意識の差は減少し続けているし、今後ますます多くの若者が「正社
> 員」や「専業主婦」という既存の社会が前提とした「大人」になれないのだと
> したら、彼らは年齢に関係なく「若者」であり続けるしかない。
> まさに僕たちは、日本中の人々が年齢に関係なく「若者」化する時代、その
> 過渡期にいる。(261~262頁)
いやー、なるほどねー。
なんかね、「ざっくり」とわかったような気になりますよ(笑)。
若者論、とか聞くと難しそうに感じちゃうけど、いやこれ読みやすいし、おもしろい。
26歳らしく、文章が若い!
若い人に読んで欲しいけど、自分が若いつもりでいる中高年層にオススメかもしんない。
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絶望の国の幸福な若者たち | |
古市 憲寿 | |
講談社 |
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