読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第486号 『ニンジアンエ』

2012年02月19日 | メルマガお奨め本

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週刊 お奨め本

2012年2月19発行 第486

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『ニンジアンエ』 古処誠二

1,800+税 集英社 2011/11/30発行

ISBN978-4-08-771429-6

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古処誠二は好きな作家です。

新刊が出ると、すぐに買います。

買ったからといってすぐに読むわけではないところが、あまり良い読者ではないのだけど(^^;ゞ。

今回もちょっと買ってから間が開いちゃいました。新刊紹介にしてはタイミング外してますけど、ご勘弁くださいm(_ _)m

 

 

このメルマガでも、既に何冊か紹介してきている古処誠二。

一貫して太平洋戦争をテーマにしています。

ここ何冊かは、舞台はビルマ。

本書もビルマ。昭和十八年の、未だ日本軍が優勢を誇る頃…。

 

 

 

> むかーしむかし、というほどでもない昔、東洋の日本というにおじいさん

> とおばあさんが住んでいました。

> ある日、おじいさんは田んぼに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。(5頁)

 

 

「マンゴー太郎」の紙芝居で、物語は幕を開ける。

マンゴーから生まれたマンゴー太郎。悪い白鬼団をやっつけるために、おばあさんが焼いたおいしい乾パンを持って旅立ちます。乾パンを食べれば元気が出ます。途中で猿・キジ・犬を家来にし、ビルマを白鬼団から救います。

けれど白鬼はまた戻ってくるでしょう。マンゴー太郎はビルマに残り、次なる戦いに備えるのでした。

 

 

美濃部は新聞記者。

戦争取材でやってきたビルマで、まずは宣撫班につけられた。

 

一度はビルマから敗走した英印軍が、戦力再建に励みつつビルマ奪回を図っている。戦況は楽観を許さない。

美濃部がつく後藤軍曹の宣撫班も、宣撫を休めて、敗走中のウィンゲート旅団の捜索に当たることになった。

 

 

> 「我々も戦っているのです。あなた方とは戦い方が違うだけで、この戦争に

> 勝つために我々も戦っているのです」(31頁)

 

 

後藤班に従軍することになった美濃部。

インドを目指すコーンウェル中尉とその一団を追う。

モンセンという名のビルマ人密偵は、家族を英軍に殺され、復讐のために日本軍に協力している。その私情が捜索隊に影響を与える。

 

イギリスのビルマ支配は長い。

百二十年にわたる植民地支配下で、ことあるごとにビルマ人は反英運動を盛り上げてきた。

反英感情。日本軍への期待。

民意は日本軍に向いている。

その筈だった。

 

 

 

> 「日本軍がこの腰布の国を追われる場面に遭遇したとき、君は写真を撮る度胸

> があるか。それを記事にする度胸があるか」(167頁)

 

 

 

> 「今こうしている間も腰布の人々は日本人を観察しているぞ。彼らは気性が優

> しく、協調性に溢れ、見知らぬ者にも親切を惜しまない。そんな姿に慣れるほ

> どに日本人も勘違いを深めるのだ。そして気づいたときには遅いのだ」(194頁)

 

 

 

戦は住民しだい。

敬虔な仏教徒であるビルマ人たちは、日本軍に対して食事や寝る場所を気安く提供する。施しは功徳であるから。

そして、日本軍が優勢だから。

 

 

捕虜になったイギリス人将校の不遜な態度。

若い新聞記者が、きれいごとではすまない戦争の現実を知る。

 

戦争の現実。

戦地の真実。

 

 

………考えちゃうわけですよ、やっぱり、こういう小説を読むと。

戦争について。

そして、考えなくちゃいけないんだと思うんですよ。戦争って。

 

 

考えさせてくれる小説なんです。

 

 

 

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