***********************************************
週刊 お奨め本
2012年2月19発行 第486号
***********************************************
『ニンジアンエ』 古処誠二
¥1,800+税 集英社 2011/11/30発行
ISBN978-4-08-771429-6
***********************************************
古処誠二は好きな作家です。
新刊が出ると、すぐに買います。
買ったからといってすぐに読むわけではないところが、あまり良い読者ではないのだけど(^^;ゞ。
今回もちょっと買ってから間が開いちゃいました。新刊紹介にしてはタイミング外してますけど、ご勘弁くださいm(_ _)m。
このメルマガでも、既に何冊か紹介してきている古処誠二。
一貫して太平洋戦争をテーマにしています。
ここ何冊かは、舞台はビルマ。
本書もビルマ。昭和十八年の、未だ日本軍が優勢を誇る頃…。
> むかーしむかし、というほどでもない昔、東洋の日本というにおじいさん
> とおばあさんが住んでいました。
> ある日、おじいさんは田んぼに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。(5頁)
「マンゴー太郎」の紙芝居で、物語は幕を開ける。
マンゴーから生まれたマンゴー太郎。悪い白鬼団をやっつけるために、おばあさんが焼いたおいしい乾パンを持って旅立ちます。乾パンを食べれば元気が出ます。途中で猿・キジ・犬を家来にし、ビルマを白鬼団から救います。
けれど白鬼はまた戻ってくるでしょう。マンゴー太郎はビルマに残り、次なる戦いに備えるのでした。
美濃部は新聞記者。
戦争取材でやってきたビルマで、まずは宣撫班につけられた。
一度はビルマから敗走した英印軍が、戦力再建に励みつつビルマ奪回を図っている。戦況は楽観を許さない。
美濃部がつく後藤軍曹の宣撫班も、宣撫を休めて、敗走中のウィンゲート旅団の捜索に当たることになった。
> 「我々も戦っているのです。あなた方とは戦い方が違うだけで、この戦争に
> 勝つために我々も戦っているのです」(31頁)
後藤班に従軍することになった美濃部。
インドを目指すコーンウェル中尉とその一団を追う。
モンセンという名のビルマ人密偵は、家族を英軍に殺され、復讐のために日本軍に協力している。その私情が捜索隊に影響を与える。
イギリスのビルマ支配は長い。
百二十年にわたる植民地支配下で、ことあるごとにビルマ人は反英運動を盛り上げてきた。
反英感情。日本軍への期待。
民意は日本軍に向いている。
その筈だった。
> 「日本軍がこの腰布の国を追われる場面に遭遇したとき、君は写真を撮る度胸
> があるか。それを記事にする度胸があるか」(167頁)
> 「今こうしている間も腰布の人々は日本人を観察しているぞ。彼らは気性が優
> しく、協調性に溢れ、見知らぬ者にも親切を惜しまない。そんな姿に慣れるほ
> どに日本人も勘違いを深めるのだ。そして気づいたときには遅いのだ」(194頁)
戦は住民しだい。
敬虔な仏教徒であるビルマ人たちは、日本軍に対して食事や寝る場所を気安く提供する。施しは功徳であるから。
そして、日本軍が優勢だから。
捕虜になったイギリス人将校の不遜な態度。
若い新聞記者が、きれいごとではすまない戦争の現実を知る。
戦争の現実。
戦地の真実。
………考えちゃうわけですよ、やっぱり、こういう小説を読むと。
戦争について。
そして、考えなくちゃいけないんだと思うんですよ。戦争って。
考えさせてくれる小説なんです。
☆★☆★☆★☆★☆ Amazon ☆購入はこちらから☆★☆★☆★☆★☆
『ニンジアンエ』 古処誠二
***********************************************
まぐまぐにてメルマガ配信中。
よろしかったらご登録お願いしますm(_ _)m。
http://www.mag2.com/m/0000099780.html
まぐまぐサイト内では検索がしにくいので、自分の覚えとしてここにもUPしています。