「アインシュタイン選集(2)」の3つ目の論文を読みながら、どうして彼は時間と空間という全く別のものをいとも簡単に時空という4次元空間にまとめてしまえたのだろうと不思議に思えてきた。
相対性理論ではこのページでわかるように4次元の行列やテンソルで時間と空間を1つのグループにまとめて対等に取り扱っている。(時間の要素だけプラスとマイナスの符号が逆になってはいるが。)
3次元の空間はX座標、Y座標、Z座標で表すからどれも「長さ」という単位を持っている。けれども時間だけは「長さ」という単位で測るものではないから物理的には別のモノなので、4つをまとめて扱うことが腑に落ちなくなったわけだ。
時空間での微小距離 ds を表す式も時間要素の符号こそ違え、4つの要素は対称(対等)に取り扱われている。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 - (ct)^2
等速直線運動をする物体について、特殊相対性理論では物体の長さは縮み、その物体とともに動く時計は遅れるとされている。しかし、これによって変化する割合は長さに対しても、時間に対しても(逆数的ではあるが)全く同じなのだ!
長さの収縮はこのページで、時間の遅れはこのページで計算方法が確認できる。長さと時間という別の種類ものが同じ影響を受けるのは不思議でならないと思った。まるで時間と空間が同じ種類のものだと主張しているように思えてしまう。
「アトムの物理ノート」というブログのこの記事では「ローレンツ変換と虚数時間」について説明している。ホーキング博士が提案した「虚数時間」を認めることよって、ビッグバン宇宙理論が抱えていた「特異点問題」が解決され、宇宙のはじまりの瞬間では時間は実数ではなく虚数の時間が流れていたとされている。(インフレーション宇宙論の登場で最近ホーキングの虚数時間説は人気がないが。解説ページ)
ともかく、時間 t を虚数にしたものは it であり、先ほどの式に代入すると次のようになる。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 + (ct)^2
これは4次元時空のピタゴラスの定理=4次元球を表す方程式となって、ローレンツ変換は4次元時空の回転を意味する1次変換となる。もはや時間と空間は式の中で全く対称(対等)に取り扱われ、時間と空間の区別をすることはできない。
ああ、やはり時間と空間はかなり似ているものなのかなぁ。。。と自然の神秘を感じて悦に入っていたのだが、ある公式を思い出したとたんその夢はすぐ覚めた。
「速さx時間=距離」は小学校で習う公式だ。最初の式の ct って光の速度と時間を掛けただけじゃん!だから他のx, y, zも距離だから同じ単位として扱っているのは当然のことで何も不思議がることはない。つまり時間と空間をひとつにまとめて扱うアイデアの元を正せば「速さx時間=距離」の公式だったんだな。。。
また上に掲げたこの式は時間と空間が一体となっていることも意味している。それを時空と呼んでいる。これは時間と空間が切り離して存在できないこと(時間と空間の不可分性)を意味しているのだ。物体が存在するのならば縦(X)と横(Y)が必ず存在するのと同じ理屈で空間(X,Y,Z)が存在すれば必ず時間(t)が存在しなければならない。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 - (ct)^2
時間と空間が全く同じだとはもちろん思っていない。時間だけが過去から未来へ流れるという性質、つまり「時間の矢」という性質を持っているからだ。このあたりのことは「どうして未来は決まっていないのだろうか?」という記事に書いたので、お読みいただきたい。
それでも、(特殊相対性理論の範囲で)光の速度cは定数なのだからローレンツ収縮の影響が空間と時間の両方に同じ割合で効いているのは不思議に思えてくる。当たり前のことなのか神秘的なことなのかいったいどっちなんだ??
「お前もまだまだ未熟じゃのう。」と、アインシュタインがいたずらっぽく笑いかけているように僕には思えた。
応援クリックをお願いします!
参考リンク:
時空回転と不変量(時間と空間の対称性)
http://eman-physics.net/relativity/invariable.html
関連記事:
アインシュタイン選集(1)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559
アインシュタイン選集(2):読みはじめた
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e
時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e
時:渡辺慧 - 「時間の矢」の解説本の「金字塔」と呼ばれている本のレビュー記事
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d149cf16bb9dd319f572e4228fdfe241
相対性理論ではこのページでわかるように4次元の行列やテンソルで時間と空間を1つのグループにまとめて対等に取り扱っている。(時間の要素だけプラスとマイナスの符号が逆になってはいるが。)
3次元の空間はX座標、Y座標、Z座標で表すからどれも「長さ」という単位を持っている。けれども時間だけは「長さ」という単位で測るものではないから物理的には別のモノなので、4つをまとめて扱うことが腑に落ちなくなったわけだ。
時空間での微小距離 ds を表す式も時間要素の符号こそ違え、4つの要素は対称(対等)に取り扱われている。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 - (ct)^2
等速直線運動をする物体について、特殊相対性理論では物体の長さは縮み、その物体とともに動く時計は遅れるとされている。しかし、これによって変化する割合は長さに対しても、時間に対しても(逆数的ではあるが)全く同じなのだ!
長さの収縮はこのページで、時間の遅れはこのページで計算方法が確認できる。長さと時間という別の種類ものが同じ影響を受けるのは不思議でならないと思った。まるで時間と空間が同じ種類のものだと主張しているように思えてしまう。
「アトムの物理ノート」というブログのこの記事では「ローレンツ変換と虚数時間」について説明している。ホーキング博士が提案した「虚数時間」を認めることよって、ビッグバン宇宙理論が抱えていた「特異点問題」が解決され、宇宙のはじまりの瞬間では時間は実数ではなく虚数の時間が流れていたとされている。(インフレーション宇宙論の登場で最近ホーキングの虚数時間説は人気がないが。解説ページ)
ともかく、時間 t を虚数にしたものは it であり、先ほどの式に代入すると次のようになる。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 + (ct)^2
これは4次元時空のピタゴラスの定理=4次元球を表す方程式となって、ローレンツ変換は4次元時空の回転を意味する1次変換となる。もはや時間と空間は式の中で全く対称(対等)に取り扱われ、時間と空間の区別をすることはできない。
ああ、やはり時間と空間はかなり似ているものなのかなぁ。。。と自然の神秘を感じて悦に入っていたのだが、ある公式を思い出したとたんその夢はすぐ覚めた。
「速さx時間=距離」は小学校で習う公式だ。最初の式の ct って光の速度と時間を掛けただけじゃん!だから他のx, y, zも距離だから同じ単位として扱っているのは当然のことで何も不思議がることはない。つまり時間と空間をひとつにまとめて扱うアイデアの元を正せば「速さx時間=距離」の公式だったんだな。。。
また上に掲げたこの式は時間と空間が一体となっていることも意味している。それを時空と呼んでいる。これは時間と空間が切り離して存在できないこと(時間と空間の不可分性)を意味しているのだ。物体が存在するのならば縦(X)と横(Y)が必ず存在するのと同じ理屈で空間(X,Y,Z)が存在すれば必ず時間(t)が存在しなければならない。
(ds)^2 = (dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2 - (ct)^2
時間と空間が全く同じだとはもちろん思っていない。時間だけが過去から未来へ流れるという性質、つまり「時間の矢」という性質を持っているからだ。このあたりのことは「どうして未来は決まっていないのだろうか?」という記事に書いたので、お読みいただきたい。
それでも、(特殊相対性理論の範囲で)光の速度cは定数なのだからローレンツ収縮の影響が空間と時間の両方に同じ割合で効いているのは不思議に思えてくる。当たり前のことなのか神秘的なことなのかいったいどっちなんだ??
「お前もまだまだ未熟じゃのう。」と、アインシュタインがいたずらっぽく笑いかけているように僕には思えた。
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参考リンク:
時空回転と不変量(時間と空間の対称性)
http://eman-physics.net/relativity/invariable.html
関連記事:
アインシュタイン選集(1)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559
アインシュタイン選集(2):読みはじめた
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e
時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e
時:渡辺慧 - 「時間の矢」の解説本の「金字塔」と呼ばれている本のレビュー記事
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d149cf16bb9dd319f572e4228fdfe241
また遊びにきます。
はじめまして。コメントありがとうございます!
お忙しい日々を過ごしていらっしゃるのですね。アトムさんのブログの物理関係の記事はとてもわかりやすいので、ときどき参考に読ませていただいています。今回、紹介させていただき、こちらこそありがとうございました。
僕のほうは「なるべく数式を使わない」という方針で書いていますが、結構これが大変です。でも、行列とか微積分とか、数式で表現したほうが簡潔に説明できることって多いですしね。。
これからも、アトムさんの記事を読ませていただきます。