「磁気」について慶応大学の大学院生が新現象を発見したそうだ。(詳細はこちら)
電磁気学はマックスウェルの方程式により完成された分野かと思いきや、実は全くそうではない。磁石にはN極とS極があって引き合うことは小学校で習うし、電気力(電荷によるクーロン力)については高校物理でも習うし、磁力についても電子の運動や電気が流れることで発生することがモーターや発電機の原理として示される。そしてもう少し勉強すれば「磁荷(モノポール)は存在しない。」とかいうことを何かの本で読んだりする。
電気力について成り立つ多くの方程式が、磁力についてもそれに対比される形で成り立っている場合が多い。電流、電位、電束に成り立つ法則と似た形で磁流、磁位、磁束の法則が成り立っている。電気力だけでなく磁力にも逆2乗の法則が成り立つし、電磁波の電場と磁場は対称的だ。だから電気力の法則をひととおり理解すれば、磁気の法則も同じようなものだろうと錯覚してしまう人もいるのではあるまいか。
でも、磁力について学校で勉強した以上のことを私たちは知っているだろうか?電子や電気について知っている以上に磁力や磁気について知っているだろうか?電気の流れていない鉄にどうして磁石がつくのか?あなたはこれらの質問に答えることができるだろうか?
自然界に4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)がことを知るに至って、磁力についての知識が欠如していることに気づくのだ。自然法則をくまなく理解しようとするとき磁力を抜きにしていいはずがない。
磁力の原因は電子の運動によって起きるほか、電子のスピン(自転)によっても引き起こされる。量子力学的な原理によって引き起こされる現象なのだ。電磁気学の教科書でもかなり専門的な本でなければ磁力や磁気について詳しいことは書かれていない。(強磁性、常磁性、反磁性などの箇所)
「鉄は磁石につくが、アルミニウムはつかない。」ことも量子力学の知識を使ってはじめて理解できるのだ。(これについての説明はこちらがおすすめ。)
学校で教えてもらえなかったのは無理もない。短時間で教えるには難しすぎるのだ。磁気や磁力は量子力学や物性物理学、熱力学が関係する手ごわいフィールドなのだ。
「磁力を使った不思議な実験」については現在公開している映画「容疑者Xの献身」の冒頭で「ガウス加速器」として紹介されている。運動量保存の法則やエネルギー保存の法則を一見破っているかのように見えてしまうこの現象も子供の関心を引きつけるには格好の材料だろう。(注意:運動量やエネルギーは保存されている。磁石に吸い付きながら磁力のエネルギーが鉄球の運動エネルギーに移動しているからだ。)
ガウス加速器の実験(動画)
磁力や磁気について、もう少し深く学んでみたい方のためにいくつかリンクを紹介しておく。レベルはそれぞれ違うがどれも面白い。大学院生でも新発見をすることができる余地が残された「磁気」という分野は、未解明の物理現象がまだたくさん潜んでいるようである。
バーチャル未来科学館
磁気:
http://www.pref.akita.jp/kagaku/1f/mono/2/index.htmlフェライト:
http://www.pref.akita.jp/kagaku/1f/mono/3/index.html
Magnet World
http://www.26magnet.co.jp/kids/kids.html
インターネット大学講座: 磁石の不思議、強磁性体の性質、磁性入門 - スピンから磁石まで
http://www.ne.jp:80/asahi/shiga/home/Lecture/lectureindex.htm
電子のスピンと磁石(宇部高専発 学問のススメ):注:この記事トップの掲載画像はこのページから転用させていただきました。
http://www.ube-k.ac.jp:80/jpn/topics/susume/2007/senba.html
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ニュース記事:
【科学】温度差で磁気の流れ実現 慶大院生が新現象発見
2008.11.3 09:11
磁石の両端に温度差をつけるだけで磁気が流れる新現象を、慶応大大学院理工学研究科修士1年の内田健一さんらが発見した。省エネで大容量の磁気メモリー開発につながる成果で、パソコンやDVDなどへの応用が期待できる。「スピンゼーベック効果」と命名し、英科学誌「ネイチャー」に発表した。
金属の両端に温度差をつけると電流が生じる現象は、「ゼーベック効果」として知られる。磁気の流れ(スピン流)と電流は、ともに電子の移動で発生するため、磁気だけが流れる現象も存在すると予想されていたが、未発見だった。
内田さんは慶大理工学部の卒業研究で、この課題に挑戦。長さ6ミリの磁石(鉄とニッケルの合金)の両端に白金を取り付け、磁気の流れを電流に変換して観察した。その結果、磁石の両端に温度差をつけると、磁気は高温側と低温側へ逆方向に流れることが判明。東北大と共同で理論的に検証し、“磁気版ゼーベック効果”と確認した。
この現象では、電荷は磁石の両端から打ち消し合うように移動するため、電流は発生しない。発熱によるエネルギー損失が避けられ、磁気メモリーの大幅な省エネも期待できる。
学生の卒業研究が一流科学誌に掲載されるのは珍しい。内田さんは「自由に研究できたのが良かった。白金以外の物質を使うなどし、この現象を掘り下げたい」と話している。
電磁気学はマックスウェルの方程式により完成された分野かと思いきや、実は全くそうではない。磁石にはN極とS極があって引き合うことは小学校で習うし、電気力(電荷によるクーロン力)については高校物理でも習うし、磁力についても電子の運動や電気が流れることで発生することがモーターや発電機の原理として示される。そしてもう少し勉強すれば「磁荷(モノポール)は存在しない。」とかいうことを何かの本で読んだりする。
電気力について成り立つ多くの方程式が、磁力についてもそれに対比される形で成り立っている場合が多い。電流、電位、電束に成り立つ法則と似た形で磁流、磁位、磁束の法則が成り立っている。電気力だけでなく磁力にも逆2乗の法則が成り立つし、電磁波の電場と磁場は対称的だ。だから電気力の法則をひととおり理解すれば、磁気の法則も同じようなものだろうと錯覚してしまう人もいるのではあるまいか。
でも、磁力について学校で勉強した以上のことを私たちは知っているだろうか?電子や電気について知っている以上に磁力や磁気について知っているだろうか?電気の流れていない鉄にどうして磁石がつくのか?あなたはこれらの質問に答えることができるだろうか?
自然界に4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)がことを知るに至って、磁力についての知識が欠如していることに気づくのだ。自然法則をくまなく理解しようとするとき磁力を抜きにしていいはずがない。
磁力の原因は電子の運動によって起きるほか、電子のスピン(自転)によっても引き起こされる。量子力学的な原理によって引き起こされる現象なのだ。電磁気学の教科書でもかなり専門的な本でなければ磁力や磁気について詳しいことは書かれていない。(強磁性、常磁性、反磁性などの箇所)
「鉄は磁石につくが、アルミニウムはつかない。」ことも量子力学の知識を使ってはじめて理解できるのだ。(これについての説明はこちらがおすすめ。)
学校で教えてもらえなかったのは無理もない。短時間で教えるには難しすぎるのだ。磁気や磁力は量子力学や物性物理学、熱力学が関係する手ごわいフィールドなのだ。
「磁力を使った不思議な実験」については現在公開している映画「容疑者Xの献身」の冒頭で「ガウス加速器」として紹介されている。運動量保存の法則やエネルギー保存の法則を一見破っているかのように見えてしまうこの現象も子供の関心を引きつけるには格好の材料だろう。(注意:運動量やエネルギーは保存されている。磁石に吸い付きながら磁力のエネルギーが鉄球の運動エネルギーに移動しているからだ。)
ガウス加速器の実験(動画)
磁力や磁気について、もう少し深く学んでみたい方のためにいくつかリンクを紹介しておく。レベルはそれぞれ違うがどれも面白い。大学院生でも新発見をすることができる余地が残された「磁気」という分野は、未解明の物理現象がまだたくさん潜んでいるようである。
バーチャル未来科学館
磁気:
http://www.pref.akita.jp/kagaku/1f/mono/2/index.htmlフェライト:
http://www.pref.akita.jp/kagaku/1f/mono/3/index.html
Magnet World
http://www.26magnet.co.jp/kids/kids.html
インターネット大学講座: 磁石の不思議、強磁性体の性質、磁性入門 - スピンから磁石まで
http://www.ne.jp:80/asahi/shiga/home/Lecture/lectureindex.htm
電子のスピンと磁石(宇部高専発 学問のススメ):注:この記事トップの掲載画像はこのページから転用させていただきました。
http://www.ube-k.ac.jp:80/jpn/topics/susume/2007/senba.html
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ニュース記事:
【科学】温度差で磁気の流れ実現 慶大院生が新現象発見
2008.11.3 09:11
磁石の両端に温度差をつけるだけで磁気が流れる新現象を、慶応大大学院理工学研究科修士1年の内田健一さんらが発見した。省エネで大容量の磁気メモリー開発につながる成果で、パソコンやDVDなどへの応用が期待できる。「スピンゼーベック効果」と命名し、英科学誌「ネイチャー」に発表した。
金属の両端に温度差をつけると電流が生じる現象は、「ゼーベック効果」として知られる。磁気の流れ(スピン流)と電流は、ともに電子の移動で発生するため、磁気だけが流れる現象も存在すると予想されていたが、未発見だった。
内田さんは慶大理工学部の卒業研究で、この課題に挑戦。長さ6ミリの磁石(鉄とニッケルの合金)の両端に白金を取り付け、磁気の流れを電流に変換して観察した。その結果、磁石の両端に温度差をつけると、磁気は高温側と低温側へ逆方向に流れることが判明。東北大と共同で理論的に検証し、“磁気版ゼーベック効果”と確認した。
この現象では、電荷は磁石の両端から打ち消し合うように移動するため、電流は発生しない。発熱によるエネルギー損失が避けられ、磁気メモリーの大幅な省エネも期待できる。
学生の卒業研究が一流科学誌に掲載されるのは珍しい。内田さんは「自由に研究できたのが良かった。白金以外の物質を使うなどし、この現象を掘り下げたい」と話している。
最近,単極誘導モータなるものを見つけました.
まだまだ奥の深い世界ですね.
「単極誘導モーター」というのは知りませんでした。検索してみると、これのことだとわかりました。
http://sysplan.nams.kyushu-u.ac.jp/gen/hobby/elec/Motor/UniMotor.html
確かにこれは不思議ですね。。。
YouTubeに動画も見つけました!
http://jp.youtube.com/watch?v=7CiEFsQstsI