中級者向けの量子力学の名著、J.J.サクライの教科書の下巻の第2版が6月25日に発売される。アマゾンでは現在予約受付中だ。これで上巻、下巻ともに第2版が揃うことになった。(後日追記:6月25日に発売されました。)
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ」
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ」
内容
上巻
本書のもとである、J.J.サクライによる Modern Quantum Mechanics は1985年の刊行以来、量子力学の核心に迫る名著として高く評価され世界中で読み継がれてきた。ここでは波動関数もシュレーディンガー方程式も与えられた仮定ではなく、全てが明確に提示された基礎概念から極めて自然に導かれている。
この第2版では実験家であり教育者であるジム・ナポリターノ氏が共著者となり、量子力学の基礎に関連する新しい実験データや講義で必要となる一般的事項や問題を追加した。そして相対論的量子力学への拡張を考慮して改訂がなされている。
理論の道筋を説得力をもって示す一方、その帰結である極めて非古典的な実験事実を紹介するのも本書の特徴である。中性子の重力干渉、アハラノフ-ボーム効果、ベルの不等式の検証や最近のニュートリノ振動のデータなどは、初学者にとって新鮮な驚きであろう。本書は量子力学の魅力と普遍性を雄弁に語っている。
下巻
著者J.J.Sakurai(桜井純1933‐1982)は東京で生まれ、高等留学生として渡米して以来アメリカで高等教育を受けた理論物理学者。素粒子物理学の分野で先駆的理論を提出していたが、1982年CERNに出張中に急逝、本書はその遺稿をもとにする。上巻に収めた第3章までは原稿が完成していたが、この第2版の下巻では共著者となった実験家のJim Napolitanaが大胆に再編を試みた。初版が非相対論的量子力学の記述にとどまっていたのに対し、第2版では場の理論とのつながりを意識して、第2量子化を用いた多粒子系の扱いや電磁場の量子化、ディラック方程式による水素原子の問題なども含まれ内容は相対論的量子力学まで広がっている。また近年の実験からベリーの位相、カシミール効果、スクィーズド光などのデータも提示され、いまなお魅力を増している量子力学の世界が紹介されている。共著者は本書の初版を教科書としてきた経験から、改訂に当たって内容の選択や章末の問題など随所に教育的配慮をしている。
著者略歴
桜井明夫
1967年東京大学理学系大学院博士課程修了。1967~1978年東京大学物性研究所、ベルリン自由大学理論物理学研究所勤務。1979~2007年京都産業大学理学部勤務。専攻:物性理論。現在:京都産業大学名誉教授。理学博士。
以下は第2版の目次情報。下巻の第6章と第7章の順番が初版と逆になっていることがわかる。第2版で追加された箇所を青で示した。
現代の量子力学〈上〉第2版 J.J.サクライ:目次
第1章:基礎概念
- シュテルン・ゲルラッハの実験
- ケット、ブラおよび演算子
- 基底ケットと行列表現
- 測定、観測量および不確定関係
- 基底の変更
- 位置、運動量および平行移動
- 位置空間および運動量空間における波動関数
第2章:量子ダイナミックス
- 時間的発展とシュレーディンガー方程式
- シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
- 調和振動子
- シュレーディンガーの波動方程式
- シュレーディンガーの波動方程式の初等的な解
- プロパゲーターとファインマンの経路積分
- ポテンシャルとゲージ変換
第3章:角運動量の理論
- 回転と角運動量の交換関係
- スピン 1/2 の系と有限回転
- SO(3)、SU(3)およびオイラーの回転 - 初版では「O(3)」になっていた。
- 密度演算子ならびに純粋アンサンブルと混合アンサンブル
- 角運動量の固有値と固有状態
- 軌道角運動量
- 中心ポテンシャルに対するシュレーディンガー方程式
- 角運動量の合成
- 角運動量を表わすシュウィンガーの振動子モデル
- スピン相関の測定とベルの不等式
- テンソル演算子
付録
A:電磁気の単位
- クーロンの法則、電荷と電流
- 両システム間の変換
B:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本解の要約
C:角運動量の合成則 - 不等式(3.7.38)の証明
現代の量子力学〈下〉第2版 J.J.サクライ:目次
第4章:量子力学における対称性
- 対称性、保存則、縮退
- 非連続的対称性、パリティ、すなわち空間反転
- 非連続的対称操作としての格子上の平行移動
- 時間反転の非連続的対称性
第5章:近似法
- 時間を含まない摂動論:縮退のない場合
- 時間を含まない摂動論:縮退のある場合
- 水素様原子:微細構造とゼーマン効果
- 変分法
- 時間に依存するポテンシャル:相互作用表示
- 時間依存性が極端なハミルトニアン
- 時間を含む摂動論
- 古典的輻射場との相互作用への応用
- エネルギーのずれと崩壊による幅
第6章:散乱理論
- 時間を含む摂動としての散乱
- 散乱振幅
- ボルン近似
- 位相のずれと部分波
- アイコナール近似
- 低エネルギー散乱と束縛状態
- 共鳴散乱
- 散乱における対称性の考察
- 非弾性電子 - 原子散乱
第7章:同一種類の粒子
- 置換対称性
- 対称化の要請
- 2電子系
- ヘリウム原子
- 多粒子状態
- 電磁場の量子化
第8章:相対論的量子力学
- 相対論的量子力学への道
- ディラック方程式
- ディラック方程式の対称性
- 中心ポテンシャルがあるときの解
- 相対論的量子場理論
付録A:電磁気の単位(再掲)
付録B:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本的解の要約(再掲)
文献リスト
初版編者序
訳者あとがき
なお、初版にあった以下の項目は第2版で削除されている。(削除されているものを赤で示した。)
第6章:同一種類の粒子
- 置換対称性とヤングの図式
第7章:散乱理論
- リップマン - シュウィンガー方程式
- 光学定理
- 自由粒子の状態:平面波と球面波
- 部分波の方法
- 同一種類の粒子と散乱
- 時間を含む散乱の定式化
- クーロン散乱
訳者増補:断熱変化と幾何学的位相
翻訳の元になった英語版はNew Internal Editionである。Kindle版がでているのがうれしい。その後Second Editionが刊行された。
「Modern Quantum Mechanics: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」
New International Edition Kindle版 ペーパーバック
Second Edition: Kindle版 ハードカバー
その後、英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
初版については、紹介記事を書いているのでお読みいただきたい。これらの記事には詳細目次も記載しているので参考にしてほしい。
現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed/
現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37/
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ」
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ」
内容
上巻
本書のもとである、J.J.サクライによる Modern Quantum Mechanics は1985年の刊行以来、量子力学の核心に迫る名著として高く評価され世界中で読み継がれてきた。ここでは波動関数もシュレーディンガー方程式も与えられた仮定ではなく、全てが明確に提示された基礎概念から極めて自然に導かれている。
この第2版では実験家であり教育者であるジム・ナポリターノ氏が共著者となり、量子力学の基礎に関連する新しい実験データや講義で必要となる一般的事項や問題を追加した。そして相対論的量子力学への拡張を考慮して改訂がなされている。
理論の道筋を説得力をもって示す一方、その帰結である極めて非古典的な実験事実を紹介するのも本書の特徴である。中性子の重力干渉、アハラノフ-ボーム効果、ベルの不等式の検証や最近のニュートリノ振動のデータなどは、初学者にとって新鮮な驚きであろう。本書は量子力学の魅力と普遍性を雄弁に語っている。
下巻
著者J.J.Sakurai(桜井純1933‐1982)は東京で生まれ、高等留学生として渡米して以来アメリカで高等教育を受けた理論物理学者。素粒子物理学の分野で先駆的理論を提出していたが、1982年CERNに出張中に急逝、本書はその遺稿をもとにする。上巻に収めた第3章までは原稿が完成していたが、この第2版の下巻では共著者となった実験家のJim Napolitanaが大胆に再編を試みた。初版が非相対論的量子力学の記述にとどまっていたのに対し、第2版では場の理論とのつながりを意識して、第2量子化を用いた多粒子系の扱いや電磁場の量子化、ディラック方程式による水素原子の問題なども含まれ内容は相対論的量子力学まで広がっている。また近年の実験からベリーの位相、カシミール効果、スクィーズド光などのデータも提示され、いまなお魅力を増している量子力学の世界が紹介されている。共著者は本書の初版を教科書としてきた経験から、改訂に当たって内容の選択や章末の問題など随所に教育的配慮をしている。
著者略歴
桜井明夫
1967年東京大学理学系大学院博士課程修了。1967~1978年東京大学物性研究所、ベルリン自由大学理論物理学研究所勤務。1979~2007年京都産業大学理学部勤務。専攻:物性理論。現在:京都産業大学名誉教授。理学博士。
以下は第2版の目次情報。下巻の第6章と第7章の順番が初版と逆になっていることがわかる。第2版で追加された箇所を青で示した。
現代の量子力学〈上〉第2版 J.J.サクライ:目次
第1章:基礎概念
- シュテルン・ゲルラッハの実験
- ケット、ブラおよび演算子
- 基底ケットと行列表現
- 測定、観測量および不確定関係
- 基底の変更
- 位置、運動量および平行移動
- 位置空間および運動量空間における波動関数
第2章:量子ダイナミックス
- 時間的発展とシュレーディンガー方程式
- シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
- 調和振動子
- シュレーディンガーの波動方程式
- シュレーディンガーの波動方程式の初等的な解
- プロパゲーターとファインマンの経路積分
- ポテンシャルとゲージ変換
第3章:角運動量の理論
- 回転と角運動量の交換関係
- スピン 1/2 の系と有限回転
- SO(3)、SU(3)およびオイラーの回転 - 初版では「O(3)」になっていた。
- 密度演算子ならびに純粋アンサンブルと混合アンサンブル
- 角運動量の固有値と固有状態
- 軌道角運動量
- 中心ポテンシャルに対するシュレーディンガー方程式
- 角運動量の合成
- 角運動量を表わすシュウィンガーの振動子モデル
- スピン相関の測定とベルの不等式
- テンソル演算子
付録
A:電磁気の単位
- クーロンの法則、電荷と電流
- 両システム間の変換
B:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本解の要約
C:角運動量の合成則 - 不等式(3.7.38)の証明
現代の量子力学〈下〉第2版 J.J.サクライ:目次
第4章:量子力学における対称性
- 対称性、保存則、縮退
- 非連続的対称性、パリティ、すなわち空間反転
- 非連続的対称操作としての格子上の平行移動
- 時間反転の非連続的対称性
第5章:近似法
- 時間を含まない摂動論:縮退のない場合
- 時間を含まない摂動論:縮退のある場合
- 水素様原子:微細構造とゼーマン効果
- 変分法
- 時間に依存するポテンシャル:相互作用表示
- 時間依存性が極端なハミルトニアン
- 時間を含む摂動論
- 古典的輻射場との相互作用への応用
- エネルギーのずれと崩壊による幅
第6章:散乱理論
- 時間を含む摂動としての散乱
- 散乱振幅
- ボルン近似
- 位相のずれと部分波
- アイコナール近似
- 低エネルギー散乱と束縛状態
- 共鳴散乱
- 散乱における対称性の考察
- 非弾性電子 - 原子散乱
第7章:同一種類の粒子
- 置換対称性
- 対称化の要請
- 2電子系
- ヘリウム原子
- 多粒子状態
- 電磁場の量子化
第8章:相対論的量子力学
- 相対論的量子力学への道
- ディラック方程式
- ディラック方程式の対称性
- 中心ポテンシャルがあるときの解
- 相対論的量子場理論
付録A:電磁気の単位(再掲)
付録B:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本的解の要約(再掲)
文献リスト
初版編者序
訳者あとがき
なお、初版にあった以下の項目は第2版で削除されている。(削除されているものを赤で示した。)
第6章:同一種類の粒子
- 置換対称性とヤングの図式
第7章:散乱理論
- リップマン - シュウィンガー方程式
- 光学定理
- 自由粒子の状態:平面波と球面波
- 部分波の方法
- 同一種類の粒子と散乱
- 時間を含む散乱の定式化
- クーロン散乱
訳者増補:断熱変化と幾何学的位相
翻訳の元になった英語版はNew Internal Editionである。Kindle版がでているのがうれしい。その後Second Editionが刊行された。
「Modern Quantum Mechanics: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」
New International Edition Kindle版 ペーパーバック
Second Edition: Kindle版 ハードカバー
その後、英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
初版については、紹介記事を書いているのでお読みいただきたい。これらの記事には詳細目次も記載しているので参考にしてほしい。
現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed/
現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37/
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」