◎婚外子をめぐる相続差別規定についての判例
民法900条4号ただし書きでは、嫡出子(婚姻関係にある男女から生まれた子)と非嫡出子(=婚外子:婚姻関係にない男女から生まれた子)の相続分について「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一」と規定しています。
本規定については、憲法14条の「法の下の平等」に反するのではないかとの論争がありました。最高裁は平成7年7月5日、この民法900条4号ただし書きと憲法14条1項の問題について、「本件規定(民法900条第4号ただし書き)の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。」とし、民法900条4号ただし書きの規定は合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するものとはいえないとしました。
しかし、平成23年8月24日、大阪高裁が婚外子をめぐる相続差別規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、嫡出子と同等の相続を認める決定をしました。
決定が出たのは平成20年12月に亡くなった大阪府内の男性の遺産相続についての審判で、嫡出子3人と婚外子1人の配分をめぐり、大阪家裁が民法の規定通り、婚外子の相続分を嫡出子の半分としたため、婚外子側が抗告していました。
決定理由では、平成7年の最高裁の決定以後の①婚姻や家族についての実態や国民意識の変化・多様化、②戸籍や住民票での嫡出・非嫡出を区別しない表示の採用 を指摘し、「婚外子との区別を放置することは、立法の裁量判断の限界を超えている」としました。
なお、婚外子の司法判断では、平成20年6月に最高裁が未婚の日本人父とフィリピン人母との間に生まれた子供の国籍取得裁判で、日本人の父と外国人の母との間に生まれた後、父から認知されたとしても、両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない当時の国籍法を違憲とする判決を言い渡しています。
そして今回、2月27日に「法の下の平等」を定めた憲法に違反するかどうかが争われた2件の裁判で、最高裁第一小法廷は、審理を最高裁大法廷に回付した。
これにより、大法廷が1995年(平成7年)に示した「合憲」の判断が見直される可能性が出てきました。