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[「ウ」の目・鷹の目]三陸へ 吉村昭の祈り…編集委員 鵜飼哲夫

2013年03月15日 | その他

 あの日。2011年3月11日。黒い濁流が田畑を呑(の)み、家や車を押し流していくテレビ映像を見ながら、声を失っていた。同時に「津波は必ず再来する」という作家、吉村昭さんの言葉を思い出していた。

 吉村さんは04年9月の本紙夕刊に「高さ五十メートル 三陸大津波」というエッセーを寄稿している。三陸の津波史を、体験者の証言をもとに再現した『三陸海岸大津波』(文春文庫)の取材余話だった。余震を感じながら本書を再読、当時の読書面編集後記に<自然は、人間の想像をはるかに越えた姿をみせる>という本の言葉を引用した。

 警告通りだった。明治の津波で1859人、昭和の津波では911人が犠牲となるなど壊滅的被害を受けた岩手県宮古市の田老地区ではその後、「万里の長城」と呼ばれる高さ約10メートル、全長約2・4キロの防潮堤を築いたが、本書では、大津波は〈防潮堤を越すことはまちがいない>と記されていた。今回の大震災で防潮堤は一部破壊され、同地区では約180人の死者・行方不明者が出た。

 ただ、気になる箇所もあった。本書の最後に引用された「津波は時世が変わってもなくならない(中略)。しかし、今の人たちは色々な方法で充分警戒しているから、死ぬ人はめったにないと思う」という三陸の古老の言葉だった。吉村さんは<この言葉は、すさまじい幾つかの津波を体験してきた人のものだけに重みがある>と記している。『戦艦武蔵』など徹底調査と冷静な目で歴史を見つめる小説を書いた作家はなぜ、「死ぬ人はめったにない」という言葉に重きを置いたのか。06年に故人になった作家の胸の内を知る術(すべ)はなかった。

     ◆

 今年2月26日、『三陸海岸大津波』の文庫解説を書いた作家、高山文彦さんと小型ジェットで、空から田老地区を見た。地上からは見上げるばかりの威容の巨大防潮堤は、空からはとても小さく、大地を這(は)っているように見えた。リアス式海岸の三陸では、海と急峻(きゅうしゅん)な崖、山が主役、人々は、わずかな平地にしがみつくように生きている。防潮堤とてその一部にすぎないのだ。

 平地は津波の後遺症で、今なお大半が更地だった。それでも海沿いでは水産関連施設が仮復旧している。宮古の南隣の山田町の海ではカキなどの養殖いかだが復興しつつあった。高山さんは「恵みの海」に生きる人々の復興の歩みに感嘆の声をあげた。「津波には勝てない。勝てないけれど、諦めず生きようとする人たちの、宿命とともに生きようとする姿に力づけられる」

 板子一枚下は地獄、という大海原に生きる船乗りの危険を示す言葉がある。海沿いでは津波もある。吉村さんもまた、海とともにたくましく生きる三陸の人々への畏敬の念を示したかったのだろう。

 宮城県の石巻、女川、気仙沼は、無名時代の吉村さんが、津村節子さんと結婚した直後、メリヤス製品の行商をした思い出の地だった。宮古の北の田野畑村は、芥川賞に4回落ちた吉村さんが、妻が芥川賞をとった際、「一年間ヒモになる」と宣言して執筆した「星への旅」の舞台だ。この小説は太宰治賞に輝いた。田野畑は作家の出発点となった。

 文芸誌「群像」に現在連載中の津村さんの「三陸の海」によると、吉村さんは毎夏、田野畑を訪れ、海岸の美しさを愛したという。そんな日々の中で作家は、〈二階家の屋根の上にそそり立った波がのっと突き出ていた〉という婦人の津波体験談を聞く。それが1970年刊の『三陸海岸大津波』の調査の始まりだった。

 「死ぬ人はめったにない」という言葉は、「めったなことでは死んでほしくない」という作家の祈りにも似た願いだったに違いない。津波ではすぐ高台に逃げろ、と吉村さんは再三警告していたのだ。

 人間の想像力を超える自然の力に勝つ術はない。近くにいる人が助け合い、誰もがすぐに避難できるルートを整備すること。そして、いざという時は、毅然(きぜん)と逃げることが、よく生きることなのだ。

     ◆

 岩手県釜石市の子供たちが、訓練の成果をいかして震災直後に避難し、助かった事実を絵本にした『つなみてんでんこ はしれ、上へ!』(文・指田和/絵・伊藤秀男)が先月、ポプラ社から出た。子供たちには『三陸海岸大津波』の最後のページの言葉を贈りたい。<度重なる津波の激浪にも堪えて毅然とした姿で海と対している>と。

 (次回は4月20日掲載です)

(2013年3月15日3時1分 読売新聞)

東京地裁  違憲判決

2013年03月14日 | 成年後見

成年後見制度で選挙権制限は違憲…東京地裁

 「成年後見人が付くと選挙権を失う」とした公職選挙法の規定は参政権を保障した憲法に違反するとして、知的障害がある茨城県の女性が国に選挙権の確認を求めた訴訟で、東京地裁(定塚(じょうづか)誠裁判長)は14日、規定を違憲、無効とした上で、女性の選挙権を認める判決を言い渡した。

 この規定の合憲性を巡る初の司法判断。今回の判決は、札幌、さいたま、京都の各地裁で起きている同種訴訟にも影響を与えそうだ。国側は控訴を検討する。

 提訴していたのは、ダウン症がある同県牛久市の名児耶(なごや)匠さん(50)。匠さんの財産管理を心配した父親が2007年に成年後見人に付いたため、選挙権を失った。

 選挙権を制限する規定はもともと、判断力が欠如した「禁治産制度」の利用者を対象とし、同制度を改正して00年に始まった成年後見制度の下でも引き継がれた。原告側は「選挙権を奪うのは、障害者らの決定権を尊重した成年後見制度の理念に反する」と指摘。「選挙権は平等に保障されており、障害の有無などを理由に制限するのは許されない」と主張していた。

 これに対し、国側は「障害者らが、第三者の言うがまま投票するなどの不正を防ぐには制限が必要」と反論していた。

(2013年3月14日13時43分 読売新聞)

確定申告提出

2013年03月08日 | 所得税・法人税

 

平成24年度分確定申告を提出してきた。昨年より4日早い提出。ほんとは2月中に提出することを考えていたけれど今になってしまった。資料だけは何とか揃えても実際に取り掛かるのがおそくなってしまう。ギリギリになってようやく出来上がるのがいつものパターンとなっている。ま、これで一安心。らいねんは電子申告に挑戦してみよう。e-tax、導入当初挑戦したが、その時は会社勤めで、勤務中でないと申告できなかった。いまは時間があるのでいつでもいいんだが、当時は時間がなく機器のみ購入しただけで、結果的に申告せずに今日までに至っている。次回は少し時間の余裕を持ち、e-taxで申告しよう。

とても暖かくなってきたと同時に花粉がいっぱい飛んでいる。利根川のサイクリングロードを走っているが、目を開けていられない。痒くてどうしようもない。大きなゴーグルでもして走らないととても無理。これからもっと飛ぶ日が続くようだ。困ったものだ。