経営革新支援をしていて、ゴール間近で躓くケースがたまにあります。
自分の場合、「数字をつくる」ことはしないので、事業計画書の最後で数値の検証をすることになります。
参考までに経営革新承認の要件は以下のとおりです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/9a/9fb2797297448fedaa0fffbae8ced5ec.jpg)
一昨日、ある企業の経営革新支援をしていて数値計画の検証を行いました。
経常利益は文句なしの伸び率です。
ところが付加価値額や一人当たり付加価値額が承認要件に足りません。
一体どうしたことか・・・。
実はこういったケースはよくあります。
極端なケースで見て行きましょう。
以下のような状況のA社とB社があります。
いま売上高、営業利益、経常利益いずれも同じ金額です。
A社とB社の違いは費用の中身です。費用の大部分を人件費と減価償却費が占めるA社。一方、B社の人件費と減価償却費の割合はそれほど高くありません。
【A社】経営革新前
売上高 10,000万円
諸経費 1,000万円
人件費 5,000万円
減価償却費 2,000万円
営業利益 2,000万円
営業外費用 1,000万円
経常利益 1,000万円
【B社】経営革新前
売上高 10,000万円
諸経費 6,000万円
人件費 1,000万円
減価償却費 1,000万円
営業利益 2,000万円
営業外費用 1,000万円
経常利益 1,000万円
いまこの2社が新たな取り組みにチャレンジし、5年計画で以下のような事業計画をシミュレーションしました。
やはり売上高、営業利益、経常利益いずれも同じ金額です。
【A社】経営革新後(5年後)
売上高 15,000万円
諸経費 5,000万円
人件費 5,000万円
減価償却費 2,000万円
営業利益 3,000万円
営業外費用 1,000万円
経常利益 2,000万円
【B社】経営革新後(5年後)
売上高 15,000万円
諸経費 10,000万円
人件費 1,000万円
減価償却費 1,000万円
営業利益 3,000万円
営業外費用 1,000万円
経常利益 2,000万円
ここで経営革新の承認要件について検証してみましょう。
①経常利益の伸び率
A社 (2,000-1,000)/1,000*100=100%
B社 (2,000-1,000)/1,000*100=100%
いずれも100%の伸びなので、承認要件の5%を大きく上回っています。
②付加価値額の伸び率
A社 (10,000-9,000)/9,000*100=11.1%
B社 (5,000-4,000)/4,000*100=25.0%
(注)付加価値額=営業利益額+人件費+減価償却費
付加価値額の承認要件は15%の伸びです。
残念ながらA社の事業計画書では承認要件を満たしません。
⇒一人当たり付加価値額は割愛させていただきます。
このように費用に占める人件費と減価償却費の割合が高い企業では、思わぬところで「やり直し」になることがあるわけです。
「じゃあ、人のリストラで営業利益を改善したらいいじゃん」と考えた方。果たしてそうでしょうか。
先ほどの例でA社の事業計画書が以下のように推移したとします。
【A社】経営革新後(5年後)
売上高 15,000万円
諸経費 5,000万円
人件費 3,000万円 ←リストラした。
減価償却費 2,000万円
営業利益 5,000万円
営業外費用 1,000万円
経常利益 3,000万円
経常利益の伸び率は(3,000-1,000)/1,000*100=200%で大幅に改善しました。
肝心の付加価値額の伸び率は・・・。
(10,000-9,000)/9,000*100=11.1% で変わりません。。。
まあ営業利益算出の課程で差し引いた人件費と減価償却費を足し戻しているだけですから、当たり前といえば当たり前ですが。
結局、何が言いたいかといいますと。
労働集約的や資本集約的な企業では、相当頑張らないと(リストラに頼ることなく)経営革新承認は難しいということです。
上述の企業については、数字を操作することなく「正攻法」で計画の練り直しをすることになりました。
p.s
一方で、昨日は今年度4件目の承認企業が誕生しました。