カワイイ、カワイイ、ボクノ、オ人形サン――
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保は幼い頃から人形が好きだった。男の子なのにヒーローや怪獣のフィギュアではなく、きらびやかなドレスに身を包んだお姫様人形、特に着せ替えの出来るものを好んだ。
保の家は裕福ではなかったが、誕生日やクリスマスには両親からちゃんとプレゼントがもらえた。
保にはヒーローの塩ビ人形や走るミニカーなどで、妹にはレースの帽子や洋服を着た少女人形。
保はいつも妹が抱く少女人形を物欲しげな目で見ていた。
「早川君は男の子でしょ。そのお人形は女の子用よ」
毎年行われる子供会のクリスマスパーティーで用意されたプレゼントは女の子用と男の子用に分けられていた。
幼い頃、保はいつも間違ったふりをしていて女の子用の前に並び、役員のおばさんにそう注意されていた。
だが、小学生になる頃にはやめた。どうやっても女の子の人形は手に入らなかったからだ。
保はいわゆる『心は女の子』として人形を欲しているわけではない。性的な興味しか持っておらず、人形を手に入れられないことはさほど深刻な悩みではなかった。
だが、欲求不満はどんどん溜まっていき、両親や周りの大人たちから刷り込まれた性差の意識に反する罪も抱えながら保は大人になっていった。