「改善勧告」だけとはふざけすぎだろう
青森 病院内殺人隠蔽事件 死亡診断書専門の高齢“みとり医”も
2025年3月7日 23時11分 事件
青森県八戸市の病院で院内の殺人事件を隠蔽しようとしたとして元院長らが逮捕された事件で、県と市は病院の立ち入り検査の結果、一部の医師の勤務実態が記録と合わなかったり、複数の病室で定員以上の患者を受け入れたりしていたことが分かったとして、7日、病院に改善勧告を行いました。
元院長らが殺人事件を隠蔽しようとしたとして逮捕された事件を受けて、県と市は2月、2度にわたって病院の立ち入り検査を行い、医療体制や運営の実態を調べてきました。
その結果、一部の医師の勤務実態と出勤簿などの記録が合わなかったほか、複数の病室で定員を超える患者を受け入れていたことや、許可を受けずに病院の設備を変更していたことが分かったということです。
県と市は7日午後、病院の責任者を八戸市保健所に呼んで改善勧告を行い、すべての医師の勤務を証明する書類を提出するとともに、病室の定員の超過を直ちに解消することなどを求めました。
みちのく記念病院はNHKの取材に対し「指摘されたことを粛々と改善していく」とコメントしました。
その結果、一部の医師の勤務実態と出勤簿などの記録が合わなかったほか、複数の病室で定員を超える患者を受け入れていたことや、許可を受けずに病院の設備を変更していたことが分かったということです。
県と市は7日午後、病院の責任者を八戸市保健所に呼んで改善勧告を行い、すべての医師の勤務を証明する書類を提出するとともに、病室の定員の超過を直ちに解消することなどを求めました。
みちのく記念病院はNHKの取材に対し「指摘されたことを粛々と改善していく」とコメントしました。
保健所「検査する難しさ感じている」
八戸市保健所は、医療法に基づいて毎年1回検査を行っていますが、これまでに改善命令が出されたことはないということです。
検査は事前に日程を伝えたうえで行われ、病院側が準備した書類や職員への聞き取りを基に、人員や設備などを確認してきました。
八戸市保健所の北村政則 副所長は「準備書類が多岐にわたり、スケジュールも調整する必要があるため、事前告知は早めに行う必要があるし、警察の捜査のように踏み込んで書類を精査することもできない。限られた時間の中で効率的に細かく検査する難しさを感じている」と述べました。
そのうえで今後の立ち入り検査について、「検査項目は国で定めているもので市で独自に定めるのは難しい。市としては対応する人を増やすなど、必要な見直しを図りたいと考えている」と話していました。
検査は事前に日程を伝えたうえで行われ、病院側が準備した書類や職員への聞き取りを基に、人員や設備などを確認してきました。
八戸市保健所の北村政則 副所長は「準備書類が多岐にわたり、スケジュールも調整する必要があるため、事前告知は早めに行う必要があるし、警察の捜査のように踏み込んで書類を精査することもできない。限られた時間の中で効率的に細かく検査する難しさを感じている」と述べました。
そのうえで今後の立ち入り検査について、「検査項目は国で定めているもので市で独自に定めるのは難しい。市としては対応する人を増やすなど、必要な見直しを図りたいと考えている」と話していました。
死亡診断書を専門に書く“みとり医”
みちのく記念病院の関係者がNHKの取材に応じ、病院には死亡診断書を専門に書く高齢の医師がいて「みとり医」と呼ばれていたことを明らかにしました。
院内の殺人事件を隠蔽しようとしたとして元院長と医師の2人が逮捕された事件では、死因を「肺炎」とするうその診断書が出され、名義人の医師は認知症の疑いで入院中だったことが分かっています。
院内の殺人事件を隠蔽しようとしたとして元院長と医師の2人が逮捕された事件では、死因を「肺炎」とするうその診断書が出され、名義人の医師は認知症の疑いで入院中だったことが分かっています。

取材に応じた関係者は、病院ではこうした医師を「みとり医」と呼び、以前から繰り返し雇っていたと話しました。
数年前に勤務を始めた「みとり医」は当初は通常どおりに勤務していましたが、高齢で徐々に認知症の症状が進み、最後は自分で聴診器をあてられない状態になったということです。
この病院は夜間や休日の当直医を置いていないということで「夜間や休日に毎回出勤するのが大変で、みとり専門の医師を雇っているのだろう。いずれも高齢で認知症傾向の方だった」と話していました。
八戸市や青森県の立ち入り調査で、一部の医師の勤務実態と記録が合わないことが判明したことについては「病院には勤務実態のないいわば『幽霊医師』がたくさんいる。これまで県や市は毎年1回の立ち入り検査をしているはずだが、事前に予告された上で、数時間もかからずに終わる。勤務医の出勤簿やタイムカードをしっかり確認してはいないのではないか」と述べ、検査が不十分だったと述べました。
事件の背景については、病院が逮捕された元院長ら2人がトップダウンで物事を決める組織で、たてつくと辞めさせられたり異動させられたりするとしたうえで「殺人事件が起きるとイメージダウンになると考えたのではないか。重大事件が起きても隠蔽されるだろうなという予測は職員みながもっていた」と話していました。
数年前に勤務を始めた「みとり医」は当初は通常どおりに勤務していましたが、高齢で徐々に認知症の症状が進み、最後は自分で聴診器をあてられない状態になったということです。
この病院は夜間や休日の当直医を置いていないということで「夜間や休日に毎回出勤するのが大変で、みとり専門の医師を雇っているのだろう。いずれも高齢で認知症傾向の方だった」と話していました。
八戸市や青森県の立ち入り調査で、一部の医師の勤務実態と記録が合わないことが判明したことについては「病院には勤務実態のないいわば『幽霊医師』がたくさんいる。これまで県や市は毎年1回の立ち入り検査をしているはずだが、事前に予告された上で、数時間もかからずに終わる。勤務医の出勤簿やタイムカードをしっかり確認してはいないのではないか」と述べ、検査が不十分だったと述べました。
事件の背景については、病院が逮捕された元院長ら2人がトップダウンで物事を決める組織で、たてつくと辞めさせられたり異動させられたりするとしたうえで「殺人事件が起きるとイメージダウンになると考えたのではないか。重大事件が起きても隠蔽されるだろうなという予測は職員みながもっていた」と話していました。
元院長と弟の医師を起訴
青森県八戸市の病院で、院内の殺人事件を隠蔽しようとしたとして、元院長らが逮捕された事件で、検察は7日、元院長らを犯人隠避の罪で起訴しました。
起訴されたのは、八戸市にある「みちのく記念病院」の元院長で、運営法人の理事長の石山隆被告(61)と、弟で、医師の石山哲被告(60)です。
起訴状によりますと2人はおととし病院内で男性患者が別の患者に殺害された事件が起きた際、すぐに警察に通報せずに▽死因を「肺炎」とするうその死亡診断書を出したり、▽加害者の患者を閉鎖病棟に隔離したりして、事件を隠蔽しようとしたとして、犯人隠避の罪に問われています。
捜査関係者によりますと、うその診断書は認知症の疑いで入院していた、別の医師の名義で作られていて、2人が指示して出させたとみられています。
また警察のこれまでの調べで、殺人事件からまもなく看護師から報告を受けた元院長が「そんなことで騒ぐな。家族への連絡は必要ない」といった指示をしていた疑いがあることも分かったということです。
検察は2人の認否を明らかにしていませんが、警察によりますと、逮捕後の調べに対し、いずれも容疑を否認しているということです。
起訴されたのは、八戸市にある「みちのく記念病院」の元院長で、運営法人の理事長の石山隆被告(61)と、弟で、医師の石山哲被告(60)です。
起訴状によりますと2人はおととし病院内で男性患者が別の患者に殺害された事件が起きた際、すぐに警察に通報せずに▽死因を「肺炎」とするうその死亡診断書を出したり、▽加害者の患者を閉鎖病棟に隔離したりして、事件を隠蔽しようとしたとして、犯人隠避の罪に問われています。
捜査関係者によりますと、うその診断書は認知症の疑いで入院していた、別の医師の名義で作られていて、2人が指示して出させたとみられています。
また警察のこれまでの調べで、殺人事件からまもなく看護師から報告を受けた元院長が「そんなことで騒ぐな。家族への連絡は必要ない」といった指示をしていた疑いがあることも分かったということです。
検察は2人の認否を明らかにしていませんが、警察によりますと、逮捕後の調べに対し、いずれも容疑を否認しているということです。
元院長知る看護師“患者と会話 あまり見たことない”
元院長らを知る看護師がNHKの取材に応じ、元院長らの患者への対応について「直接患者と会話をする様子はあまり見たことがなく、症状を見て薬を処方するという対応だった。患者の話を聞くことはあまりなかったと思う」と話しました。
みちのく記念病院では、ほかの病院でみられない患者も受け入れていたということで「病院自体は存続していくことが地域のためでもあると思う。ただ、今いろいろと明るみに出てきたところは、正しく直してほしい」と話していました。
みちのく記念病院では、ほかの病院でみられない患者も受け入れていたということで「病院自体は存続していくことが地域のためでもあると思う。ただ、今いろいろと明るみに出てきたところは、正しく直してほしい」と話していました。
入院患者の家族「医師と会うことすらできず」
3年前、みちのく記念病院に母親が入院し、3か月後に亡くなったという女性は、病院に当時の状況について説明を求めても、医師と会うことすらできなかったと話しています。
八戸市に住む細越由美さん(62)の89歳だった母親は骨折をきっかけに歩くことが難しくなって入院し、ほかの病院を転々としたあと3年前にみちのく記念病院に入院しました。
認知症の症状が重くなると次第に受け入れてもらえる病院は見つからなくなり、最後に紹介されたのがみちのく記念病院でした。
当時は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて、母親とは面会できないまま3か月後に亡くなりました。
細越さんが病院に着くと、母親は葬儀会社の車に乗せられ、荷物はすべて段ボール箱に詰められていたということです。
医師はおらず、亡くなった状況についての説明もなかったということで、当時の院長名義の死亡診断書を後日看護師から手渡されました。
女性はその後、母親にどのような治療をしたのかや、生前の様子、それにどのように亡くなったのか主治医から説明するよう求めましたが、指定された日時に行くと急用を理由に会えなかったということです。
女性は母親が入院してから死亡するまで、医師と直接会うことはなかったとしています。
女性は「病院に説明してほしいと何回も言ったが、それがかなわなかった。今も知りたいという気持ちは変わらない」と話していました。
八戸市に住む細越由美さん(62)の89歳だった母親は骨折をきっかけに歩くことが難しくなって入院し、ほかの病院を転々としたあと3年前にみちのく記念病院に入院しました。
認知症の症状が重くなると次第に受け入れてもらえる病院は見つからなくなり、最後に紹介されたのがみちのく記念病院でした。
当時は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて、母親とは面会できないまま3か月後に亡くなりました。
細越さんが病院に着くと、母親は葬儀会社の車に乗せられ、荷物はすべて段ボール箱に詰められていたということです。
医師はおらず、亡くなった状況についての説明もなかったということで、当時の院長名義の死亡診断書を後日看護師から手渡されました。
女性はその後、母親にどのような治療をしたのかや、生前の様子、それにどのように亡くなったのか主治医から説明するよう求めましたが、指定された日時に行くと急用を理由に会えなかったということです。
女性は母親が入院してから死亡するまで、医師と直接会うことはなかったとしています。
女性は「病院に説明してほしいと何回も言ったが、それがかなわなかった。今も知りたいという気持ちは変わらない」と話していました。
専門家 外部からのチェック 入りにくいことが背景に
障害者福祉に詳しい兵庫県立大学の竹端寛教授は、精神科病棟は外部からのチェックが入りにくいことが背景にあると指摘しています。
竹端教授は精神科病棟の特徴について、「医師の指示の元であれば患者を閉じ込めたり、身体拘束をしたりすることができる。そういうところでは権力の監視をしないかぎり、乱用される恐れがある。今回殺人事件に関して隠蔽工作ができたのも、そうした中でおきたことだと思っている」と述べました。
病院の組織体制については、「トップダウン的に経営すると物が言えない構造が固定化し、普通の病院では非常識と思うことがあっても『そういうものだからしかたない』と職員らが反発しにくい雰囲気があった可能性がある」と述べました。
行政の検査や指導は、法令上の書類が整っているかなどを確認する程度で、医療の質はほぼ実質的に問わないのが通例だとしたうえで、「行政の監査などきちんとチェックするべきなのに、それをしないまま、困ったとき、行政がお願いしたときに患者さんを受け入れてくれるという、『必要悪』として社会的に黙認されていた可能性がなかったか」と指摘しています。
そして、「地域で抱えきれないから病院に任せるしかないという構造は、少子高齢化の中でさらに増える可能性がある。困難を抱える人を排除せず、地域の中で支えていく仕組みを、県や市町村がどのように考えていくのかが問われている」と話しています。
竹端教授は精神科病棟の特徴について、「医師の指示の元であれば患者を閉じ込めたり、身体拘束をしたりすることができる。そういうところでは権力の監視をしないかぎり、乱用される恐れがある。今回殺人事件に関して隠蔽工作ができたのも、そうした中でおきたことだと思っている」と述べました。
病院の組織体制については、「トップダウン的に経営すると物が言えない構造が固定化し、普通の病院では非常識と思うことがあっても『そういうものだからしかたない』と職員らが反発しにくい雰囲気があった可能性がある」と述べました。
行政の検査や指導は、法令上の書類が整っているかなどを確認する程度で、医療の質はほぼ実質的に問わないのが通例だとしたうえで、「行政の監査などきちんとチェックするべきなのに、それをしないまま、困ったとき、行政がお願いしたときに患者さんを受け入れてくれるという、『必要悪』として社会的に黙認されていた可能性がなかったか」と指摘しています。
そして、「地域で抱えきれないから病院に任せるしかないという構造は、少子高齢化の中でさらに増える可能性がある。困難を抱える人を排除せず、地域の中で支えていく仕組みを、県や市町村がどのように考えていくのかが問われている」と話しています。
みちのく記念病院とは
みちのく記念病院は東北新幹線の八戸駅から東に6キロ余り離れた住宅街にあります。
ホームページなどによりますと、1990年に開設され、内科や精神科、呼吸器科などの診療科があります。病床数は413床で、このうち6割を超える274床を精神科が占めています。
ホームページなどによりますと、1990年に開設され、内科や精神科、呼吸器科などの診療科があります。病床数は413床で、このうち6割を超える274床を精神科が占めています。

運営しているのは青森県と岩手県、東京都などで4つの病院を運営し、東北地方と関東地方を中心に介護老人保健施設などを展開する東京・目黒区に本部がある医療法人「杏林会」です。
複数の医療関係者によりますと、認知症や依存症といった重い症状がある患者をほかの病院から受け入れているということです。
複数の医療関係者によりますと、認知症や依存症といった重い症状がある患者をほかの病院から受け入れているということです。
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