「サクリファイス」、「エデン」とロードレースものが人気の近藤さん。今回のはそれらと全く違った内容と雰囲気。
この小説の舞台であるウイグル自治区、カシュガルは、30年位前から「シルクロード」繋がりで、ずっと憧れていた場所。20代のころには真剣に旅行に行こうと色々資料も集め、計画も立てた事もあります。それ故、この本を読んでみようと思い立ちました。
最初の内は、大学生の主人公が、自分を慕ってくれている親友に、内心うんざりし、嫌悪感まで抱いている様子が描かれます。主人公の気持ちも全く解らないわけじゃないけれど、やっぱり性格悪過ぎるよなぁ~という感じ・・・。特に美人の胸の大きな先輩と知り合い、親友とつき合ってくれたら・・・という処は、オイオイ! それを受けちゃう女も・・・。
そこから怪しい危険な人たちに脅される様になり、結果的に中国へ・・という展開。
最後になって、タイトルの意味が解ります。
う~ん、面白く引きこまれて読んだのだけれど、ラストの1割部分だけが、それまでの雰囲気と趣が全く違っているので、びっくりしました。だから、なんだか最後のその1割が浮いて感じるんです・・。衝撃的なんだけれども、それ「砂漠の悪魔」のことを作者は一番言いたかったんでしょうけれども、それよりも広太とウザイ親友の関係と綺麗な彼女との事の方が印象に強く残ってしまったというか・・。
中国に行ってから鵜野と出会い、彼が広太に近づいた本当の理由や、ウイグル族のことなど、徐々に解って来るのです。
民族問題や中国国内の社会的な事に重きを置くならば、あと2倍位の頁数があったら、もっとずっしり来る内容になったのにな・・・と勿体ない気もしたりして・・。この本の厚みの範囲で書くとなると、アッサリした感じになっちゃうのはしょうがないかな・・・。
とはいえ、あっという間に小説に読者を引きこむ筆力というか、さすが近藤さん凄いな!って思いました。なかなか物語に入っていけない小説がある中、(この本の前に、スウェーデンのバンパイヤ映画「僕のエリ」の原作「モールス」を、苦心してやっとこさっとこ読んだ後なので)す~っとサクサク読めることの凄さを思い知ったというか。3つ☆
「砂漠の悪魔」近藤史恵/ 2010-09-30
内容(「BOOK」データベースより)
大学生の広太は小さな悪意から親友を死なせてしまう。平凡な大学生活から一転、極寒の北京で日本人留学生の鵜野と出会い、広大な中国西部を旅することに…。終着地のウイグル自治区で、広太は生きる意味を見いだせるのか。
エデン
「サクリファイス」「タルトタタンの夢」感想
近藤さんの本は、歌舞伎関係の『桜姫』と『二人道成寺』も前に読んで、感想は書かずじまいになってしまいましたが、面白かったです。
旅行とか、食べ物とか、その他色々な事に知識が豊富で、多趣味で、凄いですよね~。これからも彼女の本を楽しみにしています。
わーい!TBコメント、ありがとうございます
私も好きな作家さんです。
これはちょっと残念でしたが、今後も読んで行くつもりです^^
この小説、あと倍のページを使えるならば、もっと壮大で社会派な素晴らしい作品になれたのかもしれないけれど・・・頁数に制限があったのかもしれませんね・・・。
おっしゃるとおり、タイトルとラストの1割だけ違う話のようで浮いていましたね。
好きな作家さんだっただけにちょっと残念だったかもです。
やっぱり、なんだか、もったいない感じでしたよね。
あんな事が行われている!っていうのは、衝撃的でショッキングでしたが、そこを強調したいなら、こういう内容の小説じゃない方が、良かったのかな・・・。
3分の2の部分とラストのその部分が、全然違った感じでしたもんね。
そうなんです!
>ラストの1割部分だけが、それまでの雰囲気と趣が全く違っているので、びっくりしました。
ここ、同感です。
無理やりこじつけてるような印象を受けました。
それに、ここでこんなアイテムを使う????みたいな。
その扱いにも、何だか怒りすらわいてきて、あまりいい印象は持てませんでした。