恒川光太郎さんの新作。「けものはら」、「屋根猩々」、「くさのゆめものがたり」、「天化の宿」、「朝の朧町」の全5編が入っています。少しづつリンクする人とか物があったりしますが、凄く繋がってるー!って程ではありません。相変わらず不思議な風合いのお話で、面白く読みました。4つ☆
「けものはら」
中3の雄也は、けものはらで、行方不明になった友人の春をみつける、そのかたわらには、春のお母さんの死体があった。
これは今まで読んだ恒川さんの他の作品にも似た感じのがあったので、いつもの様に楽しんで読めたものの、斬新さと驚きという点では少なかったかな。2人がクラスで好みの女子をあげて行くのだけれど、そのメンバーが後で登場するのが、なんだかくすっと可笑しかった。
「屋根猩々」
なかなか面白かったです。 沖縄のシーサーを連想してしまうお話。そして順番にその守り神的な立場に誰かが受け継がれて行く?というのは、恒川さんの以前の作品「神家没落」に通じる部分があったな。でもちょっと違うのは、仲違いの仲裁という部分がとても目新しくて面白かったです。 摩訶不思議な少年タカヒロのエピソードと、現実的な、高校の意地悪なクラスメートとのいざこざが、異質な素材なのに合わさっているお話。
「くさのゆめものがたり」
これが一番面白かったです。薬草で毒や不思議な薬を作れるというのからしてワクワクしてくる。結構グロくてダークな部分もあるんだけど、クサナギという薬とか、ソソられます~。
128頁で、絹代が言う言葉「誰かから優しくされたら、それを10倍にして回りの人に返さなければならないよ、優しさは巡って自分に戻って来るのだから」「返って来なかったら?」「それはそれでいいじゃない、ケチなこと言いなさんな」と受け流す・・というのが凄く素敵だな~と思ったのに・・・
「天化の宿」
こちらも不可思議な世界と、現実世界がミックスしたお話^^
苦解き(クトキ)と天化(テンゲ)というカードゲームみたいなものを教えてくれる、おやじさん、そして双子ちゃんとのお話の方は、なんだか訳わからん不思議なゲームだけれど、曼陀羅的というか・・壮大な世界観もあって、独特。
そして、2個年上のちょっと不良っぽいアミさんと、バイオリン教室で一緒だったレイ君のお話。こちらは、なんだか胸の奥がチクっとした。
「朝の朧町(おぼろまち)」
小さなガラス珠の中に青空がある。その中の世界に入ってしまったような不思議な感覚のお話と、夫とその友人との殺人事件、クサナギを~~と言う部分など、それぞれが全然違った風合いのお話が、ごちゃごちゃとミックスされたエピソード。
長船さんは子供の頃から自分で作るジオラマみたいな町作りが好きだった。高校2年の夏、そ自分が繋がっていると実証され・・。そして・・そこには色々な人が・・・。
206頁にある「かげろう蜥蜴(トカゲ)」のお話が好き。恒川さんの書く世界にもこういう部分があるよな~と思います。
アザミとナデシコの咲く場所にちょっとの時期現れるトカゲなんだけど、アザミの花を動かしたら色が薄くなっちゃって、ナデシコの花も動かしたら、消えてしまって、もう2度と現れなかった。花と土と季節と、微妙で危ういバランスのところにいたもんだったんだろう・・・。考えてみれば今世に在るものも、みな多かれ少なかれあやふやなバランスに在るんじゃないかと思うよ。何か一つの要因をずらしたり、入れ替えたりしたら、ふっと消えてしまうものはたくさんあるんじゃない。
(内容・あらすじ)団地の奥から用水路をたどると、そこは見たこともない野原だった。「美奥」の町のどこかでは、異界への扉がひっそりと開く―。消えたクラスメイトを探す雄也、衝撃的な過去から逃げる加奈江…異界に触れた人びとの記憶に、奇蹟の物語が刻まれる。
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「雷の季節の終わりに」
半年くらい前に読んだのですが、感想を書かないままになってしまいました。「夜市」「秋の牢獄」が凄く面白く、続けて三番目に読んだのがこれ。面白かったです!でも、先の2つの方が私は好きかな。前半は凄く面白かったです。風わいわいって~ 相変わらずこういうの、面白いな~!
(内容・あらすじ)現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?
独創的なお話、楽しかったですね(毒草と掛けてます、笑)。
「けものはら」の好みの女子の部分、伏線?って思ってたら予想通りでした。
クサナギは、そうです、ソソられますよね。
天化もしてみたくなりました。
ぷふふ☆どくそう、と掛けてるの受けちゃいました^^
恒川さんの世界、不思議な世界で、かつ、どこか上品?で、好きです。
不思議で、おどろおどろしいとか、+グロorエロ系っていうのは、読んだ気がするのですが・・・
これからも楽しみですー