凄く面白かったー。
魔訶不思議な世界を書く恒川さんの小説が大好きで、「夜市」以後、新作が出る度に、ほぼいつも読んできています。
最近の「スタープレイヤー」等は、評判が良いようですが、私は「夜市」等の恒川作品が好きなので・・・
本作は久しぶりに大満足!読み終わってしまうのが惜しかったです。
一つ一つのお話のアイディアがユニークなので、短編ではもったい感も。もうちょっと長く、中~長編でも読みたかったなあーと思いました。5つ★
あらすじ、ネタバレで書いていますので、注意です!
「無貌の神」
表題作
赤い橋を渡ったむこうは、たぶん戦時中の日本。そこからこちら側に迷い込んでしまったであろう少年の主人公。
この不思議な場所には、顔のない神様がいて、怪我をして、その神の側にいると自然と治ってしまったりするのだった。
しかし、この神はたまに人を喰ってしまう。また人々は、その神(光る餅)を食べる。
一度でも口にしたが最後、もう赤い橋が見えなくなってしまい、元の世界に戻ることは出来なくなるのだ。
ここで自殺するということ、死ぬということは、神に食われるということ。
また、神を殺した者(アンナの様に)が次の神になる。
ここでの暮らしは安定はしていたものの、少年は不幸であった。
ガモウ君と少年は、顔のない神を谷底に突き落とした。想像したとおり、赤い橋が復活した。
しかし、どうやら、前を歩くガモウ君が、光る粒になってしまって消えてしまった。
そして私も同じく・・・というところで終わっています。
「青天狗の乱」
幕末時代。島流しにあった者に、届け物をする仕事をしている男が主人公。
ある時、無実の罪で伊豆に島流しにあっている鷲鼻が特徴である22歳の「ろしよう」に、彼の両親からの荷物を届けた。その中には、青い天狗のような化物のお面があった。
この時代、島流しに遭った者の多くは、早くに命尽きてしまうのがほとんどだった。しかし、幕末から明治への激動の時代を経て、世は変わり、島流しにあった者たちも解放されたりしたのだった。
ある日、立派な洋装をした、あの鷲鼻の男を見かける。声をかけるが、否定される。
そして、奇妙な噂話を聞く。ろしようは仮面を持ったまま行方不明になり、その後、番所の島侍で、意地悪で悪どいことをしていた者ら4人が、青い化物の仮面をかぶった者に殺された、というのだった。その後も彼らの一族が次々死んで行き、無人の島になってしまったというのだ。
しかしこのエピソードを、とある人間は、ろしようの仕業ではなく、島にもともと住んでいた農民などが起こした事件なのかもしれないという説を唱える。
思い立って、ろしようの宿屋を奪って、彼を罪人にしあげた悪女の元へ行ってみると、その宿屋は数年前、放火されて、女も死んでいた。
「死神と旅する女」
ある時、学校帰りに、謎の男(時影)に声をかけられ、その場で見知らぬ少年に、切り殺されそうになった少女。
とっさに身をかわし、逆に、その少年を殺せば、命を助けてもらえると言われ、やむを得ず少年を殺した。そして、その男のいいつけ(77人を殺す)を終えるまで、あちこちで、殺人を繰り返す日々を送るのだった。
ある時、その77人ではないが、一人の女性を殺すように言われる。躊躇して結局殺さなかったのだが、その時「お前へのプレゼントみたいなものだったが、まあいい・・」とスルーされる。
そして、77人を殺して仕事が終わると、解放され、元の世界に戻れたのだった。
しかし、時間の経過が違っていたようで、長く過ごしたはずが、数日しか経っていなかったようであった。
その後、年月が経ち、1945年の日本は戦争をしていなかった・・。
あの77人は戦争へ向かって進みだすように動くはずの人間だったのだった。
成長した娘は、都会でとある男性と知り合い恋仲になる。しかし彼には婚約者が現れ、泣く泣く別れることになってしまう。
そして、気がつくのだった。その婚約者とは、あの女性だった事を。
現在の娘はDV夫で苦労していた。久しぶりに、死神男と再会し、別の世界を見せてもらうと、そこは戦争で焼野原となった町だった。そして死んでいる自分と子供の姿も。
その後、DV男が通り魔に刺される。死神か、新しい死神の子分がやってくれたのだろう・・。
「十二月の悪魔」
白い家が続く不思議な謎の町に老人は暮らしている。記憶が曖昧で、自分は刑務所に長くいたはずだが・・・。
実は、彼は学生時代に自分をいじめていた男を、妻子ともども爆発物で殺した罪で死刑になるはずだったのだが、刑法が変わり、死刑はなくなり、罪人を塀のある街に隔離して暮らさせ管理する様になっていたのだった。
「廃墟団地の風人」
自分は、意識だけはある風人だった。姿や存在は見えないはずが、とある少年裕也には自分が見えたみたいで、友達になる。たまに波長があったりすると、こういう事が起きるようだ。裕也は母子家庭で、学校でいじめられており、孤独で友達がいなかった。
風人は、ある時高杉エアという女性が、自分もかつて風人だったが、他の人間を殺し、その肉体にすっと入り込み、今生きていることを聞く。段々思いが重くなると、天に戻れなくなって、3か月でどうやら消えてしまうらしい。
風人は団地の中で、以前より桑田という男を目撃していた。悪い男の様であった。
廃墟団地の中で、桑田は、謎の植物を育てていた。どうやら違法ドラッグか麻薬とか、そういう植物を育てては、売ってもうけているのだった。それを目撃した裕也は警察に報告するも、運悪く警官は桑田とつながりのある人間で、怒った桑田は、人身売買で裕也を売り飛ばそうとする。
ラストは、風人が桑田に乗り移り、売人2人を殺し、縛られていた裕也を解放してあげる。
そして、世界一美しい坂道(裕也と2人乗りした自転車で走った場所)を車に乗って通り、逃避行への旅に出発するのだった。
「カイムルとラートリー」
黒い謎の獣のカイムルは人間の言葉が解り、会話することが出来る。
族長から、皇帝のもとに引き取られて行く。そして千里眼の足の不自由な姫ラートリーと、仲良くなる。
ラートリーは、皇帝や彼女の国に、もう先がないことが解ったし、自由に生きたいという夢があったから、2人は一緒に外の世界に旅立つ。2年旅をつづけた後、とある廃墟の城で、逃げてきた他の奴隷や女性達と暮らしはじめるも、狂った鬼が時々現れては女を奪って行くのだった。その鬼をラートリーとカイムルは殺し、平和が訪れる。
ラストは、熱病で亡くなったものの伝説の女王として語り継がれるラートリーの思い出を忘れずにいるカイムル・・・。
無貌の神 2017/1/28 恒川光太郎
「スタープレイヤー」
私はフーイー
「金色の獣、彼方に向かう」
南の子供が夜いくところ
恒川光太郎「夜行の冬」
草祭
「秋の牢獄」「夜市」
大変遅くなってしまって申し訳ありません。。。
私も「夜市」等が好きなので、久々にこういう恒川作品を読めて嬉しかったです。面白かったですね!
短編じゃなく、中長編で読みたいというお気持ち、分かります。私も読んでみたいです。
いえいえ、全然OKですよ♪
いつでもコメント嬉しいです。
ありがとうございます。
この後、恒川さんの長編、「金色機械」を読んだのですが、うーん、長編が読みたい!と思ってとりかかったのにもかかわらず、私は本作の方が面白かったのが不思議です。笑
久し振りに恒川さんらしい、独特の雰囲気の物語を読んだ気がします。
そうですね、特に「無貌の神」や「死神と旅した女」はもっと深く読んでみたい!という気がしますね。
ゾッとするような物語もあるのに、とても気持ちよく読めました!
まだまだ9月だというのに暑いです・・。
天候も不順で、今年はキツイですね・・。
恒川さん、色々なタイプの小説を書ける作家さんですが、やっぱりこの手の内容が、私は一番好きです!!
また、こういう感じの小説を、コンスタントに発表し続けて頂きたいなー
「無貌の神」とっても良かったです。仰るように、特に「カイムルとラートリー」なんかは長編でも読みたいような作品でした。
でもこれはこれ、短編でシンプルにまとめたこれでいいのかな、とも思います。
6つの作品どれもこれも甲乙付け難く、大満足の一冊となりました!!!
とっても良かった様ですね。
なかなか大満足って言える本に出会うのは難しいのに、良かったです。
カイムルとラートリー
アイディアとか短編では勿体ない様な気もしましたが確かに短くシンプルにまとめて、もうちょっと読みたかったなーって思う位で留めておいたのが良かったのかもしれませんね。