今まで水上勉さんの名前は存じていましたが、読む機会が無く・・、今回初めて読んでみました。
雁の寺・越前竹人形 水上 勉/ 1969-03
読んだ感想はというと、面白かったです。
昔の本とはいえ、読みやすく、有名な文学作品なのに、結構設定がエロ本めいている(失礼!) 処もあって・・。つい最近、ドラマと映画の「天城越え」を見たばっかりだったのですが、どことなくこれら同じ様な匂いがするお話だなぁ~なんて思ったりもして。
松本清張さんも水上さんも昭和の大作家さんですね。
こういう少年が、大人の場を目撃し・・・って内容は、現代では奇しくも先日直木賞を受賞した道尾秀介さんが好んで書かれておられます(^^ゞ
なんというか、登場人物がリアルに頭に浮かぶというか、キャラ立ちしてるので、読みやすくて楽しいんですよ。京都弁の女性の口調が柔らかく、色っぽいですねー。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
雁の寺は寺の小坊主が、どうやら殺した犯人らしいって言うのは、うっすら想像がついたものの、棺桶に2人の人間を入れてしまうというトリック?は、なかなかだったと思います。また、越前竹人形の父とは、もしや雁の寺の小坊主のその後だったのか?(深読みし過ぎ?)なんて思ってしまうほど、外貌が似ていました。そして、その息子である主人公が、父が慕っていた女性を嫁にもらうも、彼女への愛情は母に対する様な質のものだったのと、美しすぎる女性であるが故、醜い自分のような者が・・という気持ちが切なかったです。この気持ち、凄く解る気がしました。ところがその妻はというと、昔の客がふいに偶然家に訪ねて来て、ついふらふらっと1回やってしまうのです。その1回で妊娠してしまい、夫にバレないように堕胎をしようとするのですが、あの時代は簡単にそんな事は出来ず・・・。どうなるのか?と思いきや、流産してしまい(この辺りの夫にバレるんじゃないか?どうするんだ?堕胎出来る医師が見つかるのか?という処はハラハラしました)、なんとか夫に隠し通せると思った矢先、風邪から肺炎になり亡くなってしまうという悲しいお話でした。以上
読み終わった後、水上さんについてちょっと調べて見たところこちら福井県の大工の家に生まれ、5人兄弟の次男として育った。9歳の時、小僧として修行に出されるが、あまりの厳しさに出奔。 その後、連れ戻され・・・(これらの経験がのちに『雁の寺』、『金閣炎上』の執筆に生かされた)。
その後、10代後半で還俗した。その理由は、徴兵検査を受けて戦場に出ることになれば、俗世の生活を知ることなしに戦死することになると考え、徴兵検査の前に一度は世の中に出て自由な暮らしをしてみたかったからだ、という事らしいです。
で、その水上さんの息子さん(2歳で養子に出された)が、戦争で亡くなった方や特攻隊の方々が残した絵画を集めた美術館「無言館」を作った方だったと知ってビックリ!
窪島 誠一郎(くぼしま せいいちろう)(1941年生まれ)
その「無言館」についてはTV番組で見て、こんな素晴らしい美術館を作るだなんて、立派な人だな~って思っていたものの、どんな人なのか?というのは知らなかったんですよ。それで、今回偶然知ったわけなのですが、なんと・・・予想に反して、あまり人間的に立派な善い人!とは言えないらしいことに、またまた驚きまして・・。ネットで色々な方々の文章を読んで、興味が沸いて来たので、窪島さんの本も読んでみることにしました。何冊も本は出されていらっしゃるのですが、水上さんと再会するまでの経緯を綴った本を選びました。
「父への手紙」1981-12
子供の頃から、体格や体質や性格が、まるっきり両親と違うと思っていた。真面目で人柄の良い両親(養父母)は、愛情をかけて彼を育ててくれたのに、なぜか彼は、教養の無い靴修理職人の両親を見下している処まであり、素直な人間に育たなかった。これは生まれつきの性質ではないだろうか?と彼は幼い頃から自問していたようだ。本人曰く「9歳頃から、どこか暗く鬱屈し、ひどく物ほしげな、それでいて猜疑心の強い、見栄張りな性格で、虚言癖も酷かった」庭付きのある家に住んでいる人+ホウズキの木のあるお家の子は?というのに、手を上げてしまうとか、中学の時の万引きが先生にバレると、級友のせいにしたりしたそうだ。
ある日、両親がつけている「セイチャンにかかった生活費」という帳面を偶然発見する。そこには細かい飴玉などの金額も書かれてあった。何故そんな帳面を付けていたのかは解らないけれど、彼に悪い印象を受け付けた事件だった。
しかし彼は、まだ若いのに、酒場やら飲食店やら画廊などを次々と成功させ、高級住宅街にお家も建てたりと、世渡り上手な才覚に恵まれているのだった。その後、結婚し、子供も出来るが、成城の2階建てのお家に同居していた義父母に、段々と病的な程嫌悪感を抱く様になってしまう。(彼らが触ったものには絶対触れたくないとか・・・)
そして遂に長年探し回った親が、偶然近所に住んでいた水上勉と解る。(養父母の古い知り合いをたどって行って、ついに実父母と昔同じアパートに住んでいた女性から教えてもらう事が出来た。)
ちなみに彼が水上氏がまだ父親だと解る前、偶然彼の幼い子供が、道を散歩中に水上宅にふらりと入り込んで犬と遊んでしまい、後日妻が菓子折を持ってお詫びに行ったものの、留守なのか門が閉められていたので諦めた・・・というエピソードにはビックリしました。
この本以後の事はネットで見た処、実母に辛くあたり、実母は1999年に自殺。養父母にも冷たくあたったまま、妻に介護を押しつけたそうです。多額の借金を作りながら無言館を作ったとのこと。。。
う~~ん、人間的に冷たい人の様ですね・・・
でも、この「父への手紙」を読んだ限り、ご本人もしっかりそれを自覚しており、人でなしな性格を、冷静に分析されています。
なんかね、最近2冊読んだ西村賢太さんと、どこかかぶる部分があるんですよね・・・。自分の中のしょうもなさや醜い処を、ぶちまけながら、開き直っている処があるというか・・。もうこういう血なんだから、しょうがないでしょう?と言ってる感じというか・・・。
いずれにせよ、養父母が不憫でなりません・・。それと、この本って、とてもプライベートな事が赤裸々に書かれていて、奥さんやら子供さん2人も、こんな本が世に出ちゃって、大丈夫なんだろうか?とか、余計な心配をしてしまいました。奥さん、とっても苦労されているだろうなあ・・・。
なんというか・・・名を残す芸術家とかアーティストさんとか・・そういう人は、地道に行くという事が出来ない人が多かったりするのかな・・。みんながそうじゃないけれど、家庭崩壊しているけれど凄く才能溢れる人っていらっしゃいますよね。
で、水上さんのこと。
私が気になったのは、やはり、水上さんの、寺の世界に対する並々ならぬ嫌悪感ですね。
水上さんが還俗したのは、
>徴兵検査を受けて戦場に出ることになれば、俗世の生活を知ることなしに戦死することになると考え、徴兵検査の前に一度は世の中に出て自由な暮らしをしてみたかったからだ、という事らしい
というのは私も拝見しましたが、もし、ホントにその世界に絶望していなければ、戦争が終わってから寺に戻って、住職になる道を選んでもいいわけで。
しかし、彼の生い立ちではその世界で道をきわめることも叶わないし・・・
出世しなくてもそこに希望があったかといえば、その寺で、ただ、ただ働きさせられ、なまぐさいことを見せつけられ・・・
私がその、気になるのは、彼が兄弟子の夜伽の相手をさせられていた、っていうことですね。
彼のその後の女性遍歴は、なんていうか・・・汚れとか、恨みなどを晴らしているかのような・・・
何かとてもグロテスクな感情がほとばしっているような・・・
愛されていないのに、生々しい世界に放り込まれたという憎悪を、燃やして燃やして、それでもなお相殺できない苦しみがあったのでは、って想像したんです。
だから、まあ、女性というものを、理解する相手とは見なせないんでは、って個人的な勘ですが、そう思いました。
愛されていないってことは、どうしてこうも深い業のような、断ちがたい連鎖を生むのでしょうね。
逆に愛されるということは、無敵で、これもまた強い絆を生むし・・・
運命が、愛という、言葉にするととてもチープでありふれたものに、どうしようもなく左右されてしまうのだな、って彼の女性を描写するシーンから想像しました。
この二つの作品で描く女性の何とステレオタイプで安易なことよ・・作家なのに可哀想・・・って私は思います。
特に、実生活で自分が堕胎させておいて、よく越前竹人形のようなラストが書けたもんだと思いません?
こう、神聖なものとして描くか、こきおろして汚らしい存在として描くか、その両極端っていう、間のなさが、この人の、う~ん、みっともなくて人間くさいところだと。
長く書いちゃってごめんなさいね。
何かゼロ人だったから・・・
水上さんが還俗した理由、私もそれだけじゃ無いと思います。牧場主さんが書いていらっしゃるとおり、お坊さんとか・・寺での生活で、失望されたり嫌悪感持った事が大きい気がしますね・・。
>彼が兄弟子の夜伽の相手をさせられていた
これは私もビックリしました・・・。本当なんでしょうか・・ひどいですね・・。
>生々しい世界に放り込まれたという憎悪を、燃やして燃やして、それでもなお相殺できない苦しみがあったのでは、って想像したんです。
だから、まあ、女性というものを、理解する相手とは見なせないんでは、って個人的な勘ですが、そう思いました。
それにしても、いつも思うんだけれど、牧場主さんの、そういう洞察力と文章表現力って本当に凄いわー。牧場主さんは、何か書く仕事についた方が良いんじゃないかなー。まだまだ人生長いし!!
で、水上さんの息子さんですが、特に文章書く様な仕事をされていないのに、「父への手紙」などは、小説家さんじゃないの?って位の筆力です。子供の頃から、感想文とか作文とかは上手かったと本人もおっしゃっていましたが、それも解る感じ。やっぱり遺伝とか有るんだろうか・・。
で、牧場主さんも、そういう文才があるのに、勿体ないな~!って思いますよ。本当に。
>特に、実生活で自分が堕胎させておいて、よく越前竹人形のようなラストが書けたもんだと思いません?
ホントですよね・・・。
>神聖なものとして描くか、こきおろして汚らしい存在として描くか、その両極端っていう、間のなさが、この人の、う~ん、みっともなくて人間くさいところだと。
急にふと頭に浮かんだのが、キム・ギドク監督です。彼もそういう感じが少々ありませんか・・?
幼い頃の家庭環境や、育って来た経緯等って、とても大きい影響を与えますね・・。
なかなかお邪魔することが出来なくて、うう、何と
本屋大賞投票することも出来ませんでした。
締め切りを知っていたのに、もうダメじゃ、って布団に・・・
投票するつもりだったのに・・・ギリギリまで迷っていたら、急に仕事が入って。
と誰かに言い訳したくてここに。
だって仕事場でそんなこと話す相手いないんだもん。
みんな相変わらず本に興味ないんですよ、本屋だけど。
で、お返事。
そうね、気づかなかったけど、ギドクさんもそうね。
理解する相手として女性を見てはいない、けど、女性をどうしても必要としている人の感覚ですね。
何て言うか、こう、癒されたいというとアレですが、傷をどうにかしようともがいていて、女性に助けを求めているけど、叶わないことに腹を立てているかも、女性全般に。
こちらが何を求めているのか、分かれよ!ってジャブがきてるけど・・・私は「えー? 関係は全てフィフティ・フィフティでしょ」ってつっぱねるタイプ(貧乳にありがちな思考かも)だから・・・
ビーズクッションみたいに包み込むオッパイはないよ、自分で自分のことは頑張れよ、私も自分のことは頑張るからさ! って肩はたたけるけどねぇ。
仕事が肉体労働だなんて、キツイですねー。疲れ果てて夜8時とか9時とかにバタンキューっていうのは、相当ですね・・・
でも、凄く疲れているはずなのに、なかなか眠れない・・っていうのも辛いから、眠れるなら健康的って風に思って、なんとか大変な時期をやり過ごしてください!
でも、本屋大賞も投票出来ないくらいって・・・、もしやまた牧場主さんが一人で色々な仕事を任せられ過ぎなのではないですか・・・。
それにしても、本屋さんで働いているのに、本好きな人がいないって・・・悲しい事です・・・。最近本屋さんがドンドン無くなって行っている気がします・・・。大きい処は残っているものの、文芸書のコーナーは狭められるばっかり・・・って声も聞こえて来ます・・・。
> 理解する相手として女性を見てはいない、けど、女性をどうしても必要としている人の感覚ですね。
> 何て言うか、こう、癒されたいというとアレですが、傷をどうにかしようともがいていて、女性に助けを求めているけど、叶わないことに腹を立てているかも、女性全般に。
いやぁ~!ほんっと鋭いっすね。 そういう感じ!
> 関係は全てフィフティ・フィフティでしょ」ってつっぱねるタイプ(貧乳にありがちな思考かも)
爆笑!! 自分の回りの貧乳・巨乳タイプの女子は、実際どうかな?って考えてみました。考えてみると、結構私の回りって、胸が小さい人が多かったんだ、って今回気がつきました。
でも、どうなんだろうなぁ~ 今ひとつ傾向が掴めない。回りの人も、そして私自身も、自分の恋愛のパターンみたいのが一定じゃなくて、相手によって違うみたいで、良く解らないんです・・
ま、妄想も数に入れるなら、支えてあげたいとか考えたこともないですわ。
胸は、日本人全般、そんなにでっかくはないですよね・・・って先日銭湯行ったときに思いました。
ところで、「ツーリスト」の記事読みました。
「悪魔を見た」とどっち見るか迷ったんですよね。
で、ほほう、だめか、って思って、「悪魔を見た」を見てきました。
で、私はこっちもダメだったです。
寒いですー!そちらはどうかな・・・。
>胸は、日本人全般、そんなにでっかくはないですよね・・・って先日銭湯行ったときに
うははは!!!
確かに、あんまり大きい人はいないかも・・。
銭湯行くと、若い女性のピチピチしたのと、おばあさんの哀しい状態のと目の当たりにして、結構衝撃を受ける私です・・
でも、昔の女性より、最近の女性の方が、胸が若干平均値として、大きくなってきてるんじゃないか?という噂も・・。食べ物による影響とかあるんだろうか?
「ツーリスト」は、見に行っちゃダメですよ。
「悪魔を見た」は、エグそうですよねー。ああいうのは大画面で見る勇気が無いので、レンタルになったら見ます。