随分前にリクエストしていた本でした。
運悪く、短編集を読みたい気分ではなかったため(集中して6つのそれぞれ違うお話に入りこんで読む気力が無かったというか・・) あんまり乗り切れませんでした。意欲的に短編が読みたい気分の時だったら、もっと楽しめたと思います。
「さよなら妖精」「王とサーカス」の太刀洗万智のストーリー。とのことですが、その2冊は未読なため、太刀洗さんとなる女性に出会うのは今回が初めてでした。クールで探偵ばりの推察力のある女性ですね。まあ、でも特に好み!なタイプではなかったかも・・。
読む順番をミスった感ありますね・・。先にその2つを読んでいたら、リンクする登場人物に反応出来たでしょうに・・。「王とサーカス」はリクエストしてるんですが、まだ回って来ていないんですよ。
以下6篇が入っています。
私が特に面白かったのは、正義漢と、名を刻む死でした。
注意! 以下ネタバレ含む説明・感想です!
真実の10メートル手前
行方をくらませ早坂真理。彼女が、うどんみたいなものを食べた、男の人に介抱された、という事は解っている。
みごとな推理で、彼女が立ち寄ったお店、そしてアルバイトの青年(外国人)に行きあたるも・・・
間に合わず・・・車の中で自殺されていました・・。
正義漢
電車の人身事故で騒然とする中、迷惑な行動にわざと走り、犯人をおびき出して特定するという手腕にびっくり。
自殺ではなく、他殺だったんですねー。これは、面白かった!
恋累心中
心中自殺した2人の高校生。だが、同じ場所で死体が見つからなかった。何故だろうか?
2人が服毒した薬物の黄燐、即死できず苦しむことになり、その時書かれたのが「たすけて」であり、苦しむ彼女を見ていられなかった男が女を刺し、自らは崖から飛び降りた。黄燐を管理していたのは、教師の下滝で、長年この学校にずっと勤務していた。
名を刻む死
62歳の問題ある老人が絶食状態で亡くなっていた。第一目撃者の高校生は、死にそうな老人を気にしつつ、予測通りに、そのまま死んでしまった事に対して何か後ろめたい気持ちがあった。
実は、この老人は、死ぬときに「無職」と書かれるのがいやで(これはこの本を読んで初めて知った感情で、こういう人がいるんだ?!と、驚きました)「元会社役員」などの肩書が欲しかった。それで、少年の父が経営する印刷所で給料はいらないから働かせてくれと懇願するも、断られていた。
老人の息子は、母の7回忌の日に実家を訪れていた、その際、父親は危篤状態だったが、見ぬふりをして立ち去っただろうと思われる。そして父親が定期的に購読していた歴史雑誌のアンケートはがきに、なりすまして記入をし置いて行った。そこには彼が決して書きたくなかった、無職に丸がつけられていた。
プレゼントの希望番号の2、6に関し、筆跡確認をしたかったため、太刀洗万智は、インタビューの謝礼としての領収書の金額と日付に、その数字を書かせた。そして心を痛めている少年を励ますのだった。
ナイフを失われた思い出の中に
幼い少女が刺されて死んだという事件。娘を数時間一人で放置していた若い母、その弟が犯人であろうとされているが・・。
(このお話はちょっと微妙だったかも・・・)
綱渡りの成功例
水害で何とか助け出された老夫婦。彼らは、数日間を、家に残っていたコーンフレークで食いつないで、なんとか生きながらえたのだった。
コーンフレークに何をかけて食べたか? について追及されて、最後分かったのは、無断で入って、隣の家の冷蔵庫にあった牛乳を使ってしまったということだった。こういう状況では、この行動は責められることでは全くないと思う。ただね、必ずしも牛乳がなくちゃ食べられないって事はなかろうよ。何もかけないでも食べられよね・・。
真実の10メートル手前 2015/12/21 米澤穂信
内容(「BOOK」データベースより)
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。太刀洗はなにを考えているのか?滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執―己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、本書のために書き下ろされた「綱渡りの成功例」など。優れた技倆を示す粒揃いの六編。
米澤穂信
「真実の10メートル手前」
満願
TBとカキコありがとうございました。
「王とサーカス」を読んであまり経たないうちにこの作品を読むことが出来たので、万智がジャーナリストとして仕事に真摯に取り組む姿を読むことが出来て良かったです。
どの作品も完成度が高くてミステリ要素もあって流石米澤さんだと思いました。
そうかー、苗坊さんは、ベストタイミングで読まれていたのですね。
私も、そのうち「王とサーカス」が回ってきますが、なるべく早く読みたいなあー
忘れたころだと、双方の繋がりとかを楽しめなくなっちゃうから(記憶力凄く悪いので・・・)
短編それぞれに、はっとするトリックというか、推理アイディアが織り込まれていましたね。