昭和30年代からの日本の学校や塾のたどった経緯を、文部省やら国の方針と、当時の家庭の教育や進学への考え方などを、からめて書いてある本でした。分厚い本ですが、内容も凄く読み応えがありました。
昔は塾って、肩身が狭い存在だったのね・・ってことも、この本で初めて知りました。
吾郎の教え方とか生徒に対する態度とかとても良くて、好感を持ったものの、数人の生徒の母親とデキてた、ってところがあって、嘘でしょう??って驚き、、、もしかして、この本、ダメかも?ってちょっと思ったのだけれど、大丈夫でした。
吾郎と千明が、年月を経て、だんだん教育方針や塾に対する考えが違ってきてしまって、千明が勝手にどんどん塾を大きくして行き、吾郎を解任してしまったのは、やっぱりちょっと頂けなかったなあ。
でも、千明も欲にくらんでお金儲けのために、そうしたのではないんですよね。
娘が3人、吾郎とは血のつながりの無い長女の蕗子は、千明が未婚で産んだ。
そもそも、吾郎の元に出入りしたことがきっかけで、千明と吾郎がその後結婚することになる。
聡明で賢い子で、吾郎はとても彼女を愛していたし、蕗子も吾郎を慕って仲が良かった。
大学卒業後、母の反対にあうのを承知で、学校の先生になる。
母が父を解任して以後、母に愛想が尽き、音信不通に。(結婚はじめ、子供が出来たことも、まったく知らせなかった。)
彼女が結婚した男とは、かつて塾の先生だった人でした。彼の実家である秋田に、長男一郎と娘と4人で幸せに暮らしていたものの、夫に先立たれ、千明と一緒にまた暮らすことに。
次女の蘭は、千明に似た、いやそれ以上にバリバリした子で、一橋大学に進み、塾の経営に少しかかわるも、独り立ちして、高級な個人塾を開講し成功させる。しかし、援助交際がらみの事件が起きてしまう。
その後、お花屋さんの次男坊と結婚、老人向けのデリバリー弁当会社をやって成功させます。彼女が教育から離れた仕事をするようになるのは、ちょっと意外でした。
末っ子の菜々美は、中学時代、ちょっと夜遊びしたりするものの、父の影響で海外に興味を持ち、カナダに留学して、日本に帰国。
結局、千明の母の頼子、千明、蕗子、奇しくも、この3人はシングルマザーとしてがんばるんですよね。
途中で、千明が未婚の母になった経緯が解るのですが(蕗子がセレブの男性と交際している事に対して心配で手紙を送ったことがあり、その内容が明かされる)、避妊とかしてなかったのは千明らしくないなあ・・・と思ったり。
タイトルは、千明が亡くなる少し前に、人間って何か欠けたところがあって良いんだ、三日月みたいに、って悟るところから来ている様子。
後半まではとても面白くて、一気読み。
あんなに昔は、学校VS塾って反する存在同士だったのに、最後の方は、千葉のとある小学校で土曜だけ塾が勉強介入するようになり、共存というか、なんというか、手を取り合うことになった、っていうのは、時代の流れですねー。
★以下ネタバレ★
千明が亡くなった後、今度は一郎がメインになって話が続くのは、ちょっと長かったかも・・。
貧困問題で、ボランティアで子供に勉強を教えることを始めるのだけれど、こんな親切な人たちや、手を差し伸べてくれる人が色々登場したりと、そううまく行くものなのかなあ・・・と懐疑的になってしまいました。
やってる事は、凄く立派なのだけれど、一郎自身は生活は楽じゃないだろうし、余裕があるわけでもないわけで・・・。以上
私自身は、落ち着きが無く、集中力の無い(=勉強のできない)子供で、ほとんどの先生からは嫌われるダメな生徒でした。
みかづき 2016/9 森絵都
2017年本屋大賞第2位
王様のブランチ ブックアワード2016大賞受賞
「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」
昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、
塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。
「DIVE!!」森絵都 ガラスの仮面、ピンポンを連想^^
長い話でしたねー。まさか3代も続くとは思いませんでした。でもあっという間に読んじゃいましたね~。
吾郎はいい人なんだと思っていましたけど、女癖が悪いというのはちょっとショックでした^^;
確かに一郎の生き方はかっこいいけどそううまくいかないし金銭面も大変だろうなぁ…とも思いました。まあ、周りのサポートが強そうですから、何とかなっていくのかもしれないですね。
関東は豪雨です。
北海道は、どうかなー。
そうそう、吾郎の欠点は、女癖が悪いところでしたよね。
古本屋の女性との関係は、彼女も良い人だったので、大きな騒動にならなくて良かった・・・。
一郎みたいな考えの人がいても、金銭的なこと、回りのサポートがないと、なかなかやれない事ですよね。
でも一郎は、それが出来る貴重な人材・環境にいる人なのかもですね。