桜木さんの本はこれが初めて。タイトルと装丁が素敵だったので手に取りました。
どのお話も北海道の道東の地を舞台にした、淋しげで暗いお話。
その地で暮らすことの閉塞感や、土地や時に相手への切れないしがらみ等が描かれています。ちょっと昭和な感じも漂っているかな・・。
先日読んだ、芥川賞を受賞した「共喰い」(感想は書いていませんが)と、舞台は違うけれど、少し似たムードがあるかも・・。
こちらは女性が書いているのもあってか、性描写もさらりと読める気がします。
あと、仕事に対してのプロ意識、みたいなお話が幾つもあって、面白かったです。和服のお仕立て業とか、理容師とか、歯科医師とか。
こういう仕事に対して真剣に向き合っている人を読むのは気持ちが良いです。
どの話も、憂鬱なお話ですが、面白かったです。4つ☆
桜木さんの他の本も読んでみたいです。
桜井さんのプロフィールなどはこちら 釧路は夏にガスがかかって、スカっと晴れずに、肌寒い日が続くから、半袖を買っても3回くらいしか着れない夏もある・・と、釧路出身の友達が言っていたことがありましたっけ・・。
・雪虫(オール読物新人賞受賞作)
バブルが崩壊して故郷に戻った自分は、かつての恋人(既に結婚していた)と時々逢瀬を重ねていた。そんなある日、後継ぎの子供が欲しい為、父親は息子にフィリピンの幼い嫁を用意するのだった・・。
・霧繭
和服のプロフェッショナルな、お仕立て屋さんの女性のお話
・夏の稜線
東京から嫁いで来た嫁。地元の人たちの中で、生きづらいと感じている。姑から娘の次に息子を産む様にせっつかれている。
赴任してきたウブそうな小学校の先生は実は、なかなかのしたたか男であった。
・海に帰る
理容院を営む男の店に、高級クラブで働く女が時々やってきて・・
・水の棺
道東で歯科医院を営む男と、その愛人である女。2人の関係も5年を過ぎて、潮時を感じ、田舎に新しくオープンする歯科に自ら志願する。新しい地で順調に馴染んで来た頃、男が倒れる。
・氷平線
横暴な父親と弱い母。ここでの暮らしを捨て出て行くために、必死で受験勉強をし、東大に受かって出て行く男。この地で高校時代、一度だけ抱いた、幸薄い売春女の友江。
「私の男」とか「共喰い」みたいなムードの漂う小説。
便所みたいな女と言われる友江を、男が最後どうするのか? 友江はどうなるのか・・と思いきや、、やっぱりそうなったか・・。
氷平線 / 桜木紫乃 2007年11月発売
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