ぐいぐいと引きこまれて一気読みしました。4つ★半
殺人犯の兄を持つ加害者の妹の教師と、双子の弟を殺された被害者の兄(中学生)とを、交互に描く。
加害者側家族と、被害者側家族、両方とも地獄だ・・・。
まずは、双子の兄弟の心理が素晴らしい。まだ3、4才の幼い子供ながらも、彼らの思っている事は、もう大人と同じに近い。
兄として産まれて来たが体や気が弱い祐也と、兄をかばってくれる正義感に溢れる弟。
しかし柔道を習って、初めて弟を投げ飛ばしてから、2人の関係は微妙に変わる。
祭りの日、2人が好きだったレンジャーものの靴。気まずい喧嘩を早く終わらせたくて、兄が弟にブルーと黄色とを交換してから、起きた殺人事件。
周りの者たちは、殺されたのが兄だと勘違いし、また兄も弟になりすまして生きる事になってしまう。弟には兄にはない腰にアザがあったので、毎日兄はその部分をつねってアザを作る日課を欠かさないが、母に猜疑感をもたれ・・・。
兄が殺人犯として捕まってから、妹の舞子を取り囲む世界の全ては変わってしまった。突然冷たくよそよそしくなったクラスメート。
中でも、今まで誰にも相手にされなかったクラスメートが、チャンスとばかりに親しげに近づいて来た時の嫌悪感。
先日見た「その夜の侍」でも、最愛の妻を殺された夫が、出所後の犯人を殺す!という話を見ましたが、その映画の山場と、この本と、少し通じるものがあったような気がしました。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
ナイフで刺したが、それを更に心臓に突き立てる事はしなかったんですよね。その時頭に浮かんだ「こいつを殺してもしょうがない」という思い。
復讐を遂げても満足や達成感を得られない事が解る。
殺人犯の兄に、さんざん苦労させられてきた女教師が、兄が自殺してやっと死んだ後に悟った「死んでも何も解決しなかった」の一言。
以上
タナダユキさんは、以前「百万円と苦虫女」を見た事がありますが、それもなかなか面白かった記憶があります。小説は読んだ事がありますが、まだ映画は見ていない『ふがいない僕は空を見た』も彼女が監督されたそうで、そちらもレンタル化になったし、近い未来、見るのを楽しみにしているところです。
「復讐」タナダユキ 2013/04/22
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