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「さよならオレンジ」岩城けい 感想

2014-05-10 | 小説・漫画他

図書館には単行本を置いていなくて、かわりに「太宰治賞2013」という本作および、最終選考に残った他3作品と、有名小説家先生の書評も載っている本を借りてきました。

面白かったです。私も英語が話せなくて、今まで何度も恥ずかしかったり、困ったりする経験を何度もしてきていますし、もし海外に長期で暮らすことになったら・・・と想像すると、サリマは自分だし、全く人ごととは思えないお話でした。
外見による差別ももちろん、言葉についての差別、これが大きいっていうのも解ります。
アフリカンや東洋人でもペラペラに、そこの土地の言葉や、英語などが話せると、全然違ってきますよね・・。

サリマ、ハリネズミ、この2人が主要人物ですが、周りを彩る人達、オリーブとか、同じ集合住宅に住む文盲のトラッキーなど、それぞれキャラが立っており、すべてのお話に無駄がなく、良く繋がっていました。
2,3時間で一気読みするほど、引き込まれて読ませてもらいました。4つ★半

読み終わった後、選考委員の小説家の先生たちの書評も、とても興味深く読めて、お得でした。
私の大好きな小川洋子さんと、三浦しをんさんの感想があって嬉しかったし、しをんさんは、結構辛口な事を書いていらっしゃって、でも、それが確かにそうだな・・・と思われ、でもちゃんと作家さんが傷つかないように、凄く褒めて、高く評価した上で、でしたね^^

一部抜粋してきました
 「率直に言おう。メタ構造だとラストでわかった時点で、「じゃあこの話は、いろいろつらいこともあったけれど、周囲のひとから励まされ、『きみには才能がある』と言われ、『そうかも』と思ったサユリが書いてみた小説ってことなのか」と、少々鼻白む思いがなくもなかった。つまり、サユリ万歳をサユリ本人が小説にしたということで、どんだけおめでたいんだサユリ。サリマやオリーブの物語、私が渾身で応援した登場人物たちは、すべてサユリがサユリを讃えるための駒に過ぎなかったのか。意地の悪い見かただが、メタ構造にしたことで、そう読まれてしまう余地が生じているのではないかと危惧される」

しをんさんは、英文の2つのメール、サリマの名前の変更、メタ構造にしたことによって、読者の中には、サユリを讃えるための駒に過ぎなかったと思われてしまう危険性もあることなどを書かれていて、なるほどーと思いました。
私は読んでいる最中に、英文の2つのメールのうち最初の方は、

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
赤ちゃんが突然死してしまったという、あまりに衝撃的な内容につき、そこは日本語にあえて翻訳しなかったのかな、と思いまして、次の英文は、妊娠したお知らせだったので、それも対にした感じなのかな?と思いました。
名前に関しては、変えなくても良いのになーと、ちょこっと思いました。
最後の最後に、このお話を書いたのがサユリ本人だと解ります。
私は、サユリ文才ある、って部分に関しては、サユリ文学的才能あるんだろうなぁーと、読みながらそれは感じていたので、鼻白む思いとか湧いてきませんでした。でもそれは全くど素人の文学に全く遠いところにいる私だから、そう思っただけであって、少しでも文学に携わった事がある方が読むと、やっぱりしをんさんの様に、少々鼻白む思いが湧いて来るだろうなあ・・・と思いました。

小説の内容的にも、これからカッコいいけどイタンジな監督さんと、サルマが良い感じになりそうな雰囲気も有るし、オリーブもハリネズミの娘を可愛がったり預かる事で元気になれそうだし、ハッピーエンドなラストで、読み終わった後味が、とても良かったです。やっぱりサルマを応援しながら読んだので、真面目に生きる彼女を、仕事の面でも、次男が残った事、友達が出来て来た事など、良かったです! 
以上

でもハリネズミが、肉をさばく様な職場に働きにやって来るんかいな? 来ないんじゃないだろうかーと、少々思ったりもしました。サリマでさえ最初は辛かったのに、文学やってた日本女性だと、もっと大変そうだけど・・・
岩城けいさんは、次回、どんなお話を書かれるのかな? 他の作品も是非読んでみたいです。

いちばん大事なことは母語で考えている/岩城けいインタビュー

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6 コメント

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そうか・・・ (牧場主)
2014-05-11 12:31:47
私、この本、すんごく困りました。
実際に日本以外で暮さないと分からないことを丁寧に書いていること、何と言ってもサリマという女性が生き生きと描かれている点で素晴らしいと評価しました。
だけど、この人がプロでないと思うのは、混乱したまま本にしたことで、テーマが薄らぐという点です。
サリマ、頑張ったね、いい男(白人で、収入がある人種)と最後ご褒美ラブでよかったよかった、で終わるじゃん、三浦さんのコメントにあったような気がするけど、編集者、作家育てる気あんのか、って感じで、惜しい、惜しすぎるっていう感想を持ちました。

ちょっと本屋大賞に投票した推薦文をそのままのせますね。

コメント : 芥川賞候補作にもなったこの作品について、あえて言おう。この物語は破綻している。祖国を奪われ、第二言語でしか生きる選択肢がない女性にとって言葉とは何か。人の心を書くには母国語でしか有り得ないと思い至る語り手にとって言葉とは何か。異国で生まれた二人の女性のバックボーンがあまりにも違うように、辿り着く真実もまたそれぞれ重ならない。だからこそ、この半径一メートルの世界で生きている私達、当然のように日本語で思考している私達に言葉とは何かという疑問を提示することに成功している。この物語はただ誇りを忘れずに生きる女性の生き方に感動するだけにとどまらず、言葉を獲得して生きることがどれほどに困難で、それでいて輝かしいかについて考えさせられる。サリマの母国語が地球上から消えてしまっても彼女は生きることをやめない。言葉とは何かということを考える素晴らしいチャンス。きっと、それは鮮やかなオレンジ色だろう。

もちろん、褒めまくってないので掲載されませんでしたが、今もこの感想以上はありません。
で、私が不満なのは、なんか腑に落ちないって感じの感想をあんまり見ないんですね。
サリマの造形が素晴らしすぎるから、それ以上のことは何も・・・
私は、だったら、移民女性のレポートで良くないか?って思うんです。これ、上野千鶴子さん(?)も仰ってました。
小説というツールをなぜとるか、もっと極められるはずなのに、編集者・・・原石を磨きもせず放置して、怠慢っていうか。
キレイって言ってくれる人を、もっと増やせたのに・・・プロでは書けないことを、やってのけて始まった作家生命終わったらどうすんのか、って、先が全く・・・惜しいです。

ながながと御免なさいね。
あ、「ぐっとくる題名」楽しんで読まれたとのこと。嬉しいわ。
じゃ、また。
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牧場主さん☆ (latifa)
2014-05-16 16:25:32
牧場主さん、こんにちは!
お返事遅れてしまって、すいません

そうかぁー!牧場主さんは、この本、微妙というか、何か引っかかるものがあったのねー。
腑に落ちないって感想、確かに見かけなかったかもしれません。
Amazonとかで、何人かの方の感想をパラパラ見た限りでは・・。
いつもそういうサイトで感想を読むときは、評価が高いのと、低いのと、両方読む様にしているんです。

牧場主さんは、本屋大賞の本はほとんど読まれているんでしたっけか・・・。
牧場主さんが、書いた、本屋大賞に投票した時の推薦文、読ませてくれて、ありがとう!
やっぱり絶賛じゃないと掲載はされないのね?(^^ゞ

>移民女性のレポートで良くないか?って
確かに。

編集者って、とても大切なお仕事なんですよね。その作家さん(漫画家さんも)にアドバイスしたり、いい方向に誘導したり・・・ 
優秀な編集者さんがついていると、ついていないのでは、全然違って来るでしょうし・・。
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私も読みました♪ (真紅)
2014-05-19 08:02:33
latifaさん、おはよう~。
この小説、新聞書評でもう大絶賛されてて、私も少し前に読みました。
その書評がこれ以上ないほどの高評価だったから期待し過ぎたからか、私はそれほどでもなかったかな。
でも、その後も本屋大賞ノミネートされたりとか、最後の大江健三郎賞受賞されたりとか、ものすごくプッシュされてるね。
これからが気になるね~、デビューして、書き続けるって本当に大変なことだと思うから。
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真紅さん☆ (latifa)
2014-05-20 11:57:44
こんにちはー真紅さん
えっ、そうなんだ? 新聞書評で大絶賛されていたのかー。
そういう絶賛とか、高評価とかっていうのを先に知って読んでしまうと、それほどでもないかな・・・って気になる事あるよねー。小説でも映画でも。
とはいえ、大絶賛されていて、どんなもんよ?って、斜に構えて読んだものの、やっぱり凄く良かったって事もあるけど。

真紅さん的には、そうでもなかったんだねー。
そうそう、書き続けるって事、本当に大変な事だよね? 
次回作は、どんな小説を書かれるのかなー。
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読みました (todo23)
2023-01-31 16:00:22
読み始めて感じたのは、新人らしい「凝り方」でした。文体にも構成にも無用に力が入った感じがしました。ですから入り口で随分戸惑った。
でも私としては結果オーライかな。
読み応えのある作品でした。

http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/30727159.html
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todo23さん☆ (latifa)
2023-02-01 11:45:23
こんにちは、todo23さん
寒いですねー。
今年は寒さがキツイ気がします。そちらはどうかな・・・

これ、新作も興味ありますし、本作も再読したいなーと思います。
殆ど記憶が残ってないのって、、、呆れてしまいます。
4つ★半と、私にしては、殆どマックス5つ★と言ってもいいほど良かったはずなのに。

覚えてない為、ちゃんと反応できなくてごめんなさい!
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