米澤さんの小説は、以前「氷菓」にトライしたものの、途中で挫折してしまって以来初めて。
随分前に図書館にリクエストしたものの、忘れる位に待って、ようやく回って来ました。
凄い人気がある本なんですね。
ミステリー本の中で色々な処から1位!と言われている本だとは・・・。読み終わってから知りました。
個人的に、ミステリーは短編集だと、次々新しい設定に頭を切り替えなくちゃならなくて、読むのが大変なんですよね。
6つの短編ではなくて(せっかくオチとか面白いのに、ちょっと短かくて、もったいなく感じたし・・)この内容で、長編1本とか、中編を2、3本とかだったら、より一層嬉しかったかな。
4つ★~4つ★半
最後のお話「満願」タイトル作が、一番面白かったです。
今回は白文字ではなく、全部ネタバレで書いていますので、注意してください!!
夜警
交番勤めの警官が主人公。ちょっと頼りない新人が入って来る。かつて、警官に向いてない新人に厳しく当たり、その後、その男は自殺してしまったという苦い経験がある。
交番には以前から、夫の嫉妬から来るDVを相談する中年の女性がいた。そのトラブルの渦中、家に踏み込んだ新人警察官は、今にも妻を刃物で傷つけようとしている夫を射殺し、刺されて自らも殉死してしまった。
後から解る事実。新人はどうやらピストルマニアで、銃が好きという理由で警察官になった模様。
交番で昼間、銃をいじっている時にふと銃が暴発してしまい、それが工事現場で作業中の人間のヘルメットに当たっていたようだ。
ピストルの弾などを毎日帰りに厳しくチェックさせられる習慣が日本の警察にはあり、そんな事が明るみに出ると大変なので、それをもみ消そうとして、仕組んだ計画だった(嫉妬深い夫に、妻の不倫の相手が、緑1交番の男だと言う電話や、踏み込みの際の彼の発言)
このように、新人警官は、そもそも銃を発砲する目的で、踏み込んだのだった。
死人宿
行方知れずとなっていた元彼女が、死人宿と呼ばれる宿屋で仲居をしており、そこに訪ねて行く。
露店風呂の脱衣室に、遺書らしき手紙を発見し、現在宿に泊まっている3名のうち、誰がこの手紙を落としたのか?を推理する。
露天風呂から書き損じた手紙を細かくちぎって捨てた紙片が、梁に留まっているのをみつけ、そこに書かれていた名前から、落とした人間は痩せた男だったことを突き止めた。彼は自殺をふみとどまったのだったが、翌朝、別の人間で紫髪の女が自殺してしまっていた。
彼女は宿で用意したのとは別の浴衣を、わざわざ死装束として持参してきていたのだった。
柘榴
美しい女性が、女性に非常にもてる夫と結婚して、2人の姉妹を育てている。夫はぶらぶらしていて、生活力が無く、離婚を決意した。
離婚の審判で、親権を得るのは、当然自分だろうと思っていたのに、夫の方に親権が行ってしまった。
長女は父に特別な感情を抱き、母から虐待されていたという作り話を実証するために、妹と姉とで、背中に傷をつけるのだった。
長女は、自分よりも魅力的に成長するであろう妹を怖れ、まだ幼いうちに、背中に決定的な魅力を半減するであろう傷をつけたのだった。
(このお話は、ちょっと、んん・・・?って感じだった)
万灯
井桁商事の男は仕事に命をかけている。今はバングラデシュの天然ガス開発のために奔走しているのだった。
アラム・アベッドというマタボールに、彼らの土地に進出することを拒否されてしまい、その交渉に自ら出向いた時に、OGOの森下という日本人と遭遇する。彼もまた同様にアラムと交渉するためにやって来ていたのだった。断固として断られてしまい、2人が困っていた時に、対立する他のマタボール達からアラムを車で轢き殺す話を持ちかけられ、実行したのだった。しかし、そのショックが大きかったのか、気の小さかった森下は会社を辞め、日本に戻っているという。森下を追い、口封じのために殺すが、殺した後に分かった事には、なんと森下はコレラにかかっていたようだ。森下と接触してコレラを移された人間がテレビで報道されている。自分も森下の首を絞めた際に出た嘔吐物から感染して、コレラになってしまったようだ。でも、自分がコレラにかかってしまった事が判明すると、どこで移ったのか?ということから森下との関係がバレてしまう。
不運にも日本の入国審査の時、疲れからか熱があったため、検疫所にて検査をされて、白だった事からも、入国後の、日本国内にてコレラにかかったことが証明されてしまう・・・。
(以前、伝染病の事がニュースで取り沙汰されていた際に、私もぼんやり悪い事とか秘密にしていたことが、こういう感染でバレたりすることもあるんだろうなーなんて考えた事があるので、まさにそれを使った推理小説で、面白かったです)
関守
先輩から都市伝説をネタにした題材を譲り受けて、とあるライターが、伊豆の現場を訪れた。
現場近くのドライブインの女主人に、コーヒーを飲みながら、過去の4件の謎の死亡事件に探りを入れるのだったが・・・。
なんと、この女主人が数々の事件の犯人だった。最初の事件は、娘がダメ夫の頭を店の前にあった、道祖神で撲殺してしまったことを隠すための偽装事件だった。その後の事件は、その道祖神について調べようとした者など、最初の事件発覚を恐れるための殺人だったのだった。
先輩は、ここに実際に来てなかったから、無事でいられたのだったが、今、まさに自分も事件に首を突っ込み、色々調べてしまったが故に、今度殺られる事になりそうだ・・・。
「世にも奇妙な物語」風なお話でした。
満願
司法試験に合格し、弁護士さんになった主人公が初めて扱った殺人事件は、自分に良くしてくれた、下宿先のおかみさんの妙子が起こしたものだった。矢場に関係を迫られ、突発的に、妙子が持っていた包丁で殺してしまったという事件と思いきや、妙子は殺すつもりで、矢場を自宅に入れていたのだった。妙子は家宝である貴重な掛け軸を守りたかったのだった。夫が作った借金で、根こそぎ家財を没収されてしまう際に、その掛け軸を失わずにいるために、わざと殺人事件のその場に掛け軸をかけ、血が飛び散った証拠品として検察に没収させたのだった。
その掛け軸は、表装の処にだけ血が飛んでおり、重要な禅画の部分には飛んでいなかった。証拠品の座布団で、その禅画の部分を重ねてみたら、みごとにハマって・・・。わざと血しぶきをつける際に、血がつかないように、その部分に座布団を置いたのかもしれない)
その場所に置かれていたダルマは背中に血しぶきがついていた(たぶん目を避けるために、前もって、後ろを向かせたのではないだろうか)
米澤さんの小説、また他のも読んでみたいなーと思いました
満願 2014/3/20 米澤穂信
第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位
面白かったですねー。
米澤さんは長編も良いですが短編は最後にどんでん返しがあったり、なかなかブラックだったりして好きです。
この作品がお好きなら「儚い羊たちの祝宴」とかも楽しめるんじゃないかなと思います。こちらも短編です。
そうなんですよ、、、氷菓、アニメ化にもなったり、とても人気のあるシリーズ作品?なのに、しょっぱなから挫折してしまって・・。
ありがとうございます。儚い羊たちの祝宴、読んでみます!
コンサートに行った後に、もっとそのアーティストさんの曲を聞きこんで行けばよかったなーって、私も思ったことあります。
クロいお話、好きなんですよ^^
ちょっと昔の乙一さんの小説を懐かしく思い出したりもしました。
折れた竜骨、ファンタジーものは、ちょっと苦手なジャンルなのですが、せっかくなので、トライしてみます!ありがとうございます。
私、米澤さんの本は初めてなんですが(アニメ化された「氷菓」の表紙の絵柄が・・・で、書店で並べていた時に苦手意識を持った)食わず嫌いはいけませんね、とても好感持ちました。
すごくぎゅっとまとめてあるのがいいです。
あと、結構からくりを支える、感情がリアリティがあって、いいと思いました。
短編が上手いならば、氷菓シリーズも読んでみたいです。
今年もよろしくお願いします!
私も「氷菓」が、お初だったのですが(その時は、まだアニメ化されてなくて、普通の写真の表紙だったんですけれども・・)、なんだろうか・・・何か、こう・・・ダメだったんですよ。
薄い文庫だから、さくっと読めるかな?と思ったのに。
その後、アニメ化されて、再トライする気に、ますますならなくなってしまって。
でも、本作読んで、私も「食わず嫌いはイカン」と、思いました。