リートリンの覚書

日本書紀 巻第二十三 息長足日広額天皇 三 ・大臣と天皇の遺詔



日本書紀 巻第二十三 息長足日広額天皇 三

・大臣と天皇の遺詔



ここにおいて、
大臣は、
山背大兄の告を得たことに、
ひとりで答えることができず、

則ち、
阿倍臣(あへのおみ)、
中臣連(なかとみのむらじ)、
紀臣(きのおみ)、
河辺臣(かわへのおみ)、
高向臣(たかむくのおみ)、
采女臣(おねめのおみ)、
大伴連(おおとものむらじ)、
許勢臣(こせのおみ)等を
喚(よ)び、

なお、
くわしく山背大兄の語ったことを
挙げました。

やがて、
大夫等に語って、

「汝、大夫等は、
共に斑鳩宮を詣で、
山背大兄王にあたり啓(もう)して、

『賤臣(せんしん)が、
どうして、

ひとり嗣の位を
たやすく定めることができましょうか。

ただ、
天皇の遺詔(ゆいしょう)を挙げて、
群臣に啓(もう)しただけです。

群臣の並びの言は、
遺言に如く、
田村皇子に自ずと嗣の位に当たります。
更なる異言はありません。

これは群卿の言です。

特に臣の心だけではありません。

但し、
臣の私意があったとしても、
惶(おそ)れおおく、
これ啓し伝えることができません。

乃ち、
面する日に自ら啓しあげましょう』
と言ってくれ」
といいました。

ここに、
群大夫等は、
大臣の言を受けて、
共に斑鳩宮に詣でました。

三国王(みくにのおおきみ)、
櫻井臣に、

大臣の辞を
山背大兄(やましろのおおえ)に
啓(もう)しあげさせました。

時に、
大兄王は、
群大夫等に伝え問わせて、
「天皇の遺詔とはどういうものか」
といいました。

答えて、
「臣等はそれ深くは知りませんが、
だた大臣の語った狀を得て、
天皇が病に臥した日に、

田村皇子に詔して、
『軽々とたやすく、
国政を言ってはいけません。

ここをもちて、
なんじ、
田村皇子よ、

愼(つつしみ)をもって言いなさい、
緩めてはいけません』
といいました。

次に大兄王に詔して、
『汝は、肝が稚(わか)い、
さわがしく言ってはいけません。
必ず群臣の言う事に従いなさい』
といいました。

これすなわち、
近侍や諸女王及び采女(うねめ)等が、
ことごとく知っていますし、
大王の察しているところです」
といいました。



・賤臣(せんしん)
身分の低い臣
・遺詔(ゆいしょう/いしょう/ゆいじょう/いじょう)
天皇または上皇が、生前に死後のことについて指示した詔
・采女(うねめ)
侍女



(感想)

昨日のお話


この時、大臣は、
山背大兄の訴えを聞いて、
ひとりで答えることができませんでした。

そこで、
阿倍臣、中臣連、紀臣、
河辺臣、高向臣、
采女臣、大伴連、許勢臣らを呼んで、

なお、
詳しく山背大兄の語ったことを
話しました。

やがて、
大夫らに語って、

「お前たち、大夫らは、
共に斑鳩宮を参じて、
山背大兄王に申して、

『身分の低い私が、
どうしてひとり、

日嗣の位を
たやすく定めることができましょうか。

ただ、
推古天皇の遺詔を取り上げて、
群臣に告げただけです。

群臣の皆の言葉は、

"遺言のように、
田村皇子が自ずとと日嗣の位に当たります。
更なる異言はありません"

と言っています。

これは群卿の言葉です。
とりたてて私の心だけではありません。

但し、
私の私意があったとしても、
おそれおおく、
これ申し伝えることができません。

そこで、
お会いする日に自ら申しあげましょう』
と言ってくれ」
といいました。

そこで、
群大夫らは、
大臣の言葉を受けて、
共に斑鳩宮に出かけました。

三国王、櫻井臣に、
大臣の言葉を
山背大兄に伝えさせました。

この時、
大兄王は、
群大夫らに伝え、問わせて、
「天皇の遺詔とはどういうものか?」
といいました。

答えて、
「私どもは、
それ深くは知りませんが、

だた大臣の語るところを聞くと、
天皇が病に臥した日に、
田村皇子に詔して、

『軽々とたやすく、
国政を言ってはいけません。

こういうわけで、
なんじ、田村皇子よ、

つつしみをもって言いなさい、
緩めてはいけません』
といいました。

次に大兄王に詔して、
『汝は、思慮が若い。
さわがしく言ってはいけません。
必ず群臣の言う事に従いなさい』
といいました。

これすなわち、
近侍や諸々の女王および采女たちが、
ことごとく知っていますし、
大王の察しているところです」
といいました。

さて、
推古天皇が臨終の際
その場に居たはずの

山背大兄王(やましろのおおえのおう)が、
群臣に、

「天皇の遺詔とはどういうものか?」

と問いかけたのは何故でしょうか。

明日に続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。


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