長い間、お付き合いいただいた日本書紀。
やっと読み終えることができました。
これも読んでくださる方々が
いてくださったからこそ。
読み始めたのは、
日本書紀が編纂されてから
1300年に当たる、
2020年1月1日から、
読み終えたのは2023年5月7日。
2023年は、
天武天皇即位1350年の節目の年です。
※奈良県観光公式サイトよりお借りしました。
イベントは全て終了しております。
何か、ご縁を感じます。
さて、
足掛け三年。本当に長かったです。
最初の、
天地開闢や神産み・国産み、
天照大神・素戔嗚尊の誓約や
天孫降臨・神武天皇の条あたりは、
楽しんで読むことが出来たのですが…
中盤、
他国とのやり取りが出てきた辺りから。
同じことの繰り返しで、
読むのが辛かったことを思い出します。
もう、
俺、何でこんなことを始めてしまったのか!
やめたい。
と後悔の嵐が何度も吹き荒れました。
しかし、
読んでくださる方がいるのだから、
頑張ろうと、
続けることが出来ました。
読者の皆様には、
本当に感謝しております。
最後に、
日本書紀を読んで
一番心に残った一書を載せておきます。
第七段一書(三)
現代語訳
一書に曰く、
日神の田は、三か所ありました。
呼び名は、
天安田(あまのやすだ)、
天平田(あまのひらた)、
天邑田(あまのむらあわせた)といいます。
みんな良い田で、
長雨や日照りにあっても、
害を受けることがありませんでした。
素戔嗚尊の田もまた、
三か所ありました。
呼び名は、
天杙田(あまのくいた)、
天川依田(あまのかわよりた)、
天口鋭田(あまのくちとた)といいます。
そこはみんな痩せた土地でした
雨が降ると流れ、
日照りになるとやけてしまいました。
素戔嗚尊は姉に嫉妬し、
彼女の田を壊しました。
春には、
用水路の板をはずし、
また溝を埋め、畔を壊し、
また二重に種を播き、
秋には田に串を刺し、
自分の物と主張し、
馬を伏せさせ稲を倒しました。
それらの悪事は
やむことがありませんでした。
しかし、
日神はとがめず、
広い心でそれらを許していました。
云々。
日神が天の石窟(いわや)に
閉じこもると、
諸々の神々は、
中臣連(なかとみのむらじ)の
遠祖の興台産霊(こごとむすひ)の子、
天児屋命(あまのこやね)を
遣わせ祈らせました。
天児屋命は、
天香山の眞坂木(まさかき)を
根ごと抜き出し、
上の枝には、
鏡作の遠祖で天抜戸(あまのぬかと)の子、
石凝戸辺(いしこりとべ)が作った
八咫鏡(やたのかがみ)をかけ、
中の枝には、
玉作の遠祖で伊弉諾尊の子、
天明玉(あまのあかるたま)が作った
八坂瓊之曲玉(やさかにのまがたま)かけ、
下の枝には、
粟国の忌部の遠祖の
天日鷲(あまのひわし)が作った
木綿(ゆう)をかけ、
これを忌部首(いんべのおびと)の遠祖、
太玉命(ふとだまのみこと)とり持たせて、
あつく賛辞を祈りました。
これを聞いた日神は、
「このごろ多くの人が請いますが、
このように麗しく美しいことを
言うものはいませんでした」
と磐戸を細く開けてのぞきました。
この時、
天手力雄神(あまのたぢからおのかみ)が
磐戸の側に控えており、
磐戸を引き開けました。
すると日神の光が
世界中に満ちあふれました。
ゆえに諸々の神は大いに喜びました。
出典・Wikipedia
すぐさま素戔嗚尊に
千の台座にのるほどの
沢山の解除(はらえ)を科し、
手の爪を吉爪棄物(よしきらいもの)として、
すぐさま素戔嗚尊に
千の台座にのるほどの
沢山の解除(はらえ)を科し、
手の爪を吉爪棄物(よしきらいもの)として、
足の爪を凶爪棄物(あしきらいもの)として、
徴収しました。
天児屋命に、
その解除の大諄辞(ふとのり)を
司らせました。
世の人が謹んで自分の爪を収めるのは、
これがその起源です。
諸々の神々は素戔嗚尊を責めたてて、
「お前の行いは酷いものだ。
だから、
天上に住んではならない。
また葦原中国にも居るべきではない。
速やかに底根の国へ行け」
と皆一緒になり素戔嗚尊を追い出しました。
時に長雨でした。
素戔嗚尊は青草を束ねて結び笠簑とし、
衆神に宿を乞いましたが、
衆神は、
「お前は行いが邪悪で、
責められ追放された者だ。
それなのに、
どうして宿を私に乞うのだ」
と皆同じく素戔嗚尊を拒みました。
風雨がひどい状態でしたが、
このように、
留まり休むことが出来ず、
辛く苦しみながら
素戔嗚尊は降りていきました。
それ以来、
世間では、
笠簑を着て他人の家内に入るのを、
忌み嫌うのです。
また束ねた青草を背負って、
他人の家内に入ることを忌み嫌います。
この忌事を犯した者は、
懲罰を負わせる。
これは、
いにしえの違法なのです。
こののち、素戔嗚尊は、
「諸々の神々は俺を追放した。
俺は今まさに永久に去ろう。
だが、
姉さんに会わずに
どうして勝手に
行くことができるだろうか…」
といい、
また天を震わせ、
大地を震わせ、
天に上がっていきました。
その時、
天鈿女(あまのうずめ)は、
それを見て報告しました。
日神は、
「我が弟が上ってくるわけは、
また良い心ではなく、
我が国を奪おうと思っているのだろう。
私は婦女だが、
どうして避けたりできようか」
といい、
すぐに武装しました。云々
ここに素戔嗚尊は誓約をして、
「俺がもし良からぬことを思い、
また上って来た者ならば、
俺が今玉を噛んで生まれる子は、
必ず女の子だ。
もしそうであったら、
その女の子は葦原中国に
降ろしてくれ。
もし、
清い心だったら
生まれる子は必ず男の子だ。
そうであったら、
その子に天上を
統治させたらいいだろう。
また姉さんが生む子もまた、
この誓いと同じことにしよう」
といいました。
これに日神がまず十握剣を噛んで云々。
素戔嗚尊がくるくると、
その左の髻に巻いた
五百筒統之瓊(いおつみすまる)の
瓊(たま)の緒を解き、
瓊の音をじゃらじゃらとさせて、
天の渟名井にすすぎ浮かべました。
その瓊の端を噛んで、
左の掌に置いて生まれた子が、
正哉勝勝速日天忍穂根尊
(まさかあかつかちはやひあめのおしほねのみこと)。
また右の瓊を噛んで、
右の掌に置いて生まれた子が
天穂日命(あめのほひのみこと)。
これは出雲臣(いずものおみ)、
武蔵国造(むさしのくにのみやつこ)、
土師連(はじのむらじ)等の遠祖です。
次に天津彦根命(あまつひこねのみこと)。
これは、
茨城国造(いばらきのくにのみやつこ)、
額田部連(ぬかたべのむらじ)等の遠祖です。
次に活目津彦根命
徴収しました。
天児屋命に、
その解除の大諄辞(ふとのり)を
司らせました。
世の人が謹んで自分の爪を収めるのは、
これがその起源です。
諸々の神々は素戔嗚尊を責めたてて、
「お前の行いは酷いものだ。
だから、
天上に住んではならない。
また葦原中国にも居るべきではない。
速やかに底根の国へ行け」
と皆一緒になり素戔嗚尊を追い出しました。
時に長雨でした。
素戔嗚尊は青草を束ねて結び笠簑とし、
衆神に宿を乞いましたが、
衆神は、
「お前は行いが邪悪で、
責められ追放された者だ。
それなのに、
どうして宿を私に乞うのだ」
と皆同じく素戔嗚尊を拒みました。
風雨がひどい状態でしたが、
このように、
留まり休むことが出来ず、
辛く苦しみながら
素戔嗚尊は降りていきました。
それ以来、
世間では、
笠簑を着て他人の家内に入るのを、
忌み嫌うのです。
また束ねた青草を背負って、
他人の家内に入ることを忌み嫌います。
この忌事を犯した者は、
懲罰を負わせる。
これは、
いにしえの違法なのです。
こののち、素戔嗚尊は、
「諸々の神々は俺を追放した。
俺は今まさに永久に去ろう。
だが、
姉さんに会わずに
どうして勝手に
行くことができるだろうか…」
といい、
また天を震わせ、
大地を震わせ、
天に上がっていきました。
その時、
天鈿女(あまのうずめ)は、
それを見て報告しました。
日神は、
「我が弟が上ってくるわけは、
また良い心ではなく、
我が国を奪おうと思っているのだろう。
私は婦女だが、
どうして避けたりできようか」
といい、
すぐに武装しました。云々
ここに素戔嗚尊は誓約をして、
「俺がもし良からぬことを思い、
また上って来た者ならば、
俺が今玉を噛んで生まれる子は、
必ず女の子だ。
もしそうであったら、
その女の子は葦原中国に
降ろしてくれ。
もし、
清い心だったら
生まれる子は必ず男の子だ。
そうであったら、
その子に天上を
統治させたらいいだろう。
また姉さんが生む子もまた、
この誓いと同じことにしよう」
といいました。
これに日神がまず十握剣を噛んで云々。
素戔嗚尊がくるくると、
その左の髻に巻いた
五百筒統之瓊(いおつみすまる)の
瓊(たま)の緒を解き、
瓊の音をじゃらじゃらとさせて、
天の渟名井にすすぎ浮かべました。
その瓊の端を噛んで、
左の掌に置いて生まれた子が、
正哉勝勝速日天忍穂根尊
(まさかあかつかちはやひあめのおしほねのみこと)。
また右の瓊を噛んで、
右の掌に置いて生まれた子が
天穂日命(あめのほひのみこと)。
これは出雲臣(いずものおみ)、
武蔵国造(むさしのくにのみやつこ)、
土師連(はじのむらじ)等の遠祖です。
次に天津彦根命(あまつひこねのみこと)。
これは、
茨城国造(いばらきのくにのみやつこ)、
額田部連(ぬかたべのむらじ)等の遠祖です。
次に活目津彦根命
(いくつひこねのみこと)。
次に熯速日命
次に熯速日命
(ひはやひのみこと)。
次に熊野大角命
次に熊野大角命
(くまのおおすみのみこと)。
あわせて六男です。
そこで、素戔嗚尊は日神に、
「俺がまたここへ昇って来た理由は、
諸神たちに、
根の国に追放の処分をされたからだ。
今まさに去ろうとしていたのだが、
姉さんに一目会っておかなければ、
忍び別れることが出来ない。
誠に清い心で、
もう一度上って来ただけだ。
今はもう会うことができた。
衆神の意のまま、
永遠に根の国へ行こう。
どうか姉さん、
天国を照らし続けてくれ。
そうすれば、
自ずと平安となるだろう。
俺が清い心で生んだ子どもたちは、
姉さんに差し上げよう」
といい、
再び降りて行きました。
あわせて六男です。
そこで、素戔嗚尊は日神に、
「俺がまたここへ昇って来た理由は、
諸神たちに、
根の国に追放の処分をされたからだ。
今まさに去ろうとしていたのだが、
姉さんに一目会っておかなければ、
忍び別れることが出来ない。
誠に清い心で、
もう一度上って来ただけだ。
今はもう会うことができた。
衆神の意のまま、
永遠に根の国へ行こう。
どうか姉さん、
天国を照らし続けてくれ。
そうすれば、
自ずと平安となるだろう。
俺が清い心で生んだ子どもたちは、
姉さんに差し上げよう」
といい、
再び降りて行きました。
この一書は、
覚書のような文章で、
読みずらい点が多々ありますが、
何度読んでも
素戔嗚尊が独り、
雨に濡れて佇んでいる姿が目に浮かび、
涙が溢れてきます。
おそらく、
素戔嗚尊は、無実の罪で、
高天原を追われたのだと、
私は思っています。
そして、
子孫がいる芦原中国さえも
居ることを許されず、
根の国に去って行った素戔嗚尊。
普通の人なら、
恨みの念を抱くであろうが、
しかし、
彼は誰も恨むことなく、
未来を
姉と子どもたちに託し根の国に行きました。
「どうか姉さん、
天国を照らし続けてくれ。
そうすれば、
自ずと平安となるだろう」
天国を照らし続けてくれ。
そうすれば、
自ずと平安となるだろう」
彼の意志を受け継いで、
高天原や芦原中国を照らしづつける天孫。
そんな彼らを支え続けたいと切に思います。
、というか…
島国、日本列島。
我々は、
天孫や天孫と共に芦原中国に降り立った
神々の子孫である可能性が高いですね。
第七段一書(三)
原文
一書曰、是後、日神之田有三處焉、號曰天安田・天平田・天邑幷田、此皆良田、雖經霖旱無所損傷。其素戔鳴尊之田、亦有三處、號曰天樴田・天川依田・天口鋭田、此皆磽地、雨則流之、旱則焦之。故、素戔鳴尊、妬害姉田、春則廢渠槽及埋溝・毀畔・又重播種子、秋則捶籤・伏馬。凡此惡事、曾無息時、雖然、日神不慍、恆以平恕相容焉、云々。
至於日神閉居于天石窟也、諸神遣中臣連遠祖興台産靈兒天兒屋命而使祈焉。於是、天兒屋命、掘天香山之眞坂木、而上枝縣以鏡作遠祖天拔戸兒石凝戸邊所作八咫鏡、中枝懸以玉作遠祖伊弉諾尊兒天明玉所作八坂瓊之曲玉、下枝懸以粟国忌部遠祖天日鷲所作木綿、乃使忌部首遠祖太玉命執取、而廣厚稱辭祈啓矣。于時、日神聞之曰「頃者人雖多請、未有若此言之麗美者也。」乃細開磐戸而窺之。
是時、天手力雄神、侍磐戸側、則引開之者、日神之光、滿於六合。故、諸神大喜、卽科素戔鳴尊千座置戸之解除、以手爪爲吉爪棄物、以足爪爲凶爪棄物。乃使天兒屋命、掌其解除之太諄辭而宣之焉。世人愼收己爪者、此其緣也。既而、諸神、嘖素戔鳴尊曰「汝所行甚無頼。故不可住於天上、亦不可居於葦原中国。宜急適於底根之国。」乃共逐降去。于時、霖也。素戔鳴尊、結束靑草、以爲笠蓑、而乞宿於衆神。衆神曰「汝、是躬行濁惡而見逐謫者。如何乞宿於我。」遂同距之。是以、風雨雖甚、不得留休、而辛苦降矣。自爾以來、世諱著笠蓑以入他人屋內、又諱負束草以入他人家內。有犯此者必債解除、此太古之遺法也。
是後、素戔鳴尊曰「諸神逐我、我今當永去。如何不與我姉相見而擅自俓去歟。」廼復扇天扇国、上詣于天。時、天鈿女見之而告言於日神也、日神曰「吾弟所以上來、非復好意。必欲奪之我国者歟。吾雖婦女、何當避乎。」乃躬裝武備、云々。
於是、素戔鳴尊誓之曰「吾、若懷不善而復上來者、吾今囓玉生兒、必當爲女矣、如此則可以降女於葦原中国。如有淸心者、必當生男矣、如此則可以使男御天上。且姉之所生、亦同此誓。」於是、日神先囓十握劒、云々。
素戔鳴尊、乃轠轤然、解其左髻所纒五百箇御統之瓊綸、而瓊響瑲瑲、濯浮於天渟名井。囓其瓊端、置之左掌而生兒、正哉吾勝勝速日天忍穗根尊。復囓右瓊、置之右掌而生兒、天穗日命、此出雲臣・武藏国造・土師連等遠祖也。次天津彦根命、此茨城国造・額田部連等遠祖也。次活目津彦根命、次熯速日命、次熊野大角命、凡六男矣。於是、素戔鳴尊、白日神曰「吾所以更昇來者、衆神處我以根国、今當就去、若不與姉相見、終不能忍離。故、實以淸心、復上來耳。今、則奉覲已訖、當隨衆神之意、自此永歸根国矣。請、姉照臨天国、自可平安。且吾以淸心所生兒等、亦奉於姉。」已而、復還降焉。廢渠槽、此云祕波鵝都。捶籤、此云久斯社志。興台産靈、此云許語等武須毗。太諄辭、此云布斗能理斗。轠轤然、此云乎謀苦留留爾。瑲瑲乎、此云奴儺等母母由羅爾。
こうして原文を見ますと、
よく読めたなぁ、と思います。
…しばらくは漢文は読みたくないですね。
最後まで
読んでいただきありがとうございました。
参考
(原本現代訳)
日本書紀(上〜下)
訳者・山田宗睦
発行所・販売 株式会社 ニュートンプレス