日本書紀 巻第十九 天国排開広庭天皇 四十二
・百済、使者を派遣する
八月七日、
百済は、
上部奈率科野新羅
(しゃうほうなそちしなのしらき)、
下部固德汶休帶山
(かほうことくもんきうたいせん)等を
遣わし、
上表して、
「去年、臣等は同議して、
内臣德率次酒
(うちのおみとくそちししゅ)、
任那大夫
(みまなのまへつきみ)等を遣わし、
海表(わたのほか)の
諸々の彌移居(みやけ)の事を奏しました。
伏して、
春の草が甘い雨を仰ぐ如く、
恩詔を待ちました。
今年に忽(たちま)ち聞いたところ、
新羅と狛国は通謀(つうぼう)して、
『百済と任那は、
頻りに日本に詣でている。
おもうに軍兵を乞い我が国を伐つためだろう。
もし事実であるなら、
国の敗亡は、
企踵(たちどころ)にして、
待つばかりである。
願わくは、
先に日本の軍兵が発していない間に、
安羅を伐ち取り、
日本の路を絶とう』
といっています。
その謀がまことなら、
臣等はこれを聞いて、
懐に深く危ぶみ懼(おそ)れ、
すぐに、
疾使い(ときのつかい)、
軽舟を遣わして、
表(ふみ)を馳せて
お聞かせいたしました。
伏して願うは、
天慈で速やかに前軍後軍を遣わして、
相ついで救いくださりますよう。
秋節(あきころ)に
海表(わたのほか)の
弥移居(みやけ)を固めましょう。
もし、
遅れたなら、
ほぞをかんでも、
及ばないことでしょう。
遣わした、
軍衆が到り来たなら、
衣糧の費(あたい)は、
臣がまさに充(みた)し、
給(たまわ)りましょう。
任那に到り来たなら、
また、おなじです。
もし、
給するのが十分にできないようでしたら、
臣が必ず助け充て、
欠乏がないようにいたします。
別に的臣が敬いて天勅を受けて、
来て臣の蕃(くに)を治めていました。
夙夜(しゅくや)乾乾(けんけん)し、
庶務を勤め修めました。
これによりて、
海表の諸蕃も、皆、
その善をほめ、
まさに万歳(よろづよ)までも、
海表(わたのほか)を
清くしずめおさめると思っていました。
いのちみじかくして、
亡くなりました。
深く追って痛みます。
今、
任那のことは、
誰が修治(しゅうち)するべきでしょう。
伏して願うは、
天慈をもちてその代りを速やかに遣わして、
任那を鎮めてください。
また、
海表(わたのほか)の諸国は、
甚だ弓馬が乏しいのです。
古より今にいたるまで、
天皇から賜わって、
強敵を防いでいます。
伏して願うは、
天慈をもちて
多くの弓馬を下賜してくださりますように」
といいました。
・通謀(つうぼう)
相手方としめし合わせて犯罪などをたくらむこと
・企踵(たちどころ)
つまだちして
・海表(わたのほか)
海外
・夙夜(しゅくや)
1・朝早くから夜遅くまで。一日中。また、あけくれ。2・朝から晩まで同じように過ごすこと
・乾乾(けんけん)
止まらないで進むさま。怠けず努力するさま
・修治(しゅうち)
つくろってなおすこと。手を入れること
(感想)
(欽明天皇14年)
8月7日、
百済は、
上部奈率科野新羅、
下部固德汶休帶山らを派遣して、
下部固德汶休帶山らを派遣して、
上表して、
「去年、臣等は同議して、
内臣徳率次酒、
任那の大夫等を派遣し、
海外の諸々の官家の事を奏しました。
伏して、
春の草が甘い雨を仰ぐように、
恩詔を待ちました。
今年ににわかに聞いたところ、
新羅と狛国はしめし合わせてたくらみをして、
『百済と任那は頻りに日本に詣でている。
おもうに
軍兵を乞い我が国を討伐するためだろう。
もし事実であるなら、
国の敗亡は、
たちどころにして、
待つばかりである。
願わくは、
先に日本の軍兵が出発していない間に、
安羅を伐ち取り、
日本の路を絶とう』
といっています。
その謀がまことなら、
臣等はこれを聞いて、
懐に深く危ぶみ懼(おそ)れ、
すなわち、
時の使い、軽舟を遣わして、
表(ふみ)を
馳せてお聞かせいたしました。
伏して願うは、
天慈で速やかに前軍後軍を派遣して、
相継いで救いくださりますよう。
秋節(あきころ)に
海外の官家を固めましょう。
もし、
遅れたなら、
ほぞをかんでも、
及ばないことでしょう。
派遣した、
軍衆が到着したなら、
衣糧の費(あたい)は、
臣がまさに充(みた)し、
給(たまわ)りましょう。
任那に到り来たなら、
また、同じです。
もし、
衣食を給するのが
十分にできないようでしたら、
臣が必ず助け充て、
欠乏がないようにいたします。
別に、
的臣が敬いて天勅を受けて、
来て臣の国を治めていました。
朝早くから夜遅くまで、
怠けず努力し、
庶務を勤め修めました。
これによりて、
海表の諸蕃も、
皆、
その善をほめ、
まさに万歳(よろづよ)までも、
海外を清く鎮め治めると思っていました。
しかし、
命短くして亡くなりました。
深く追って痛みます。
今、
任那のことは、
誰がつくろってなおすべきでしょうか。
伏して願うは、
天慈をもって、
その代りを速やかに派遣して、
任那を鎮めてください。
また、
海外の諸国は、
甚だ弓馬が乏しいのです。
古より今にいたるまで、
天皇から賜わって、
強敵を防いでいます。
伏して願うは、
天慈をももって、
多くの弓馬を下賜してくださりますように」
といいました。
明日に続きます。
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