久保田万太郎の句集を読みたいと思い、全集の第十四巻を借りてきました。
全集の月報に何人か万太郎ゆかりの人が寄稿しているのですが、
その中の渋沢秀雄氏(渋沢栄一の四男)の文章がなかなか面白いです。
(以下抜粋)
手紙の中の先生
「俳句はともかく、夢声の話を聞くだけでも面白いですよ」
俳句が作れるかしらと危ぶんでいる私を、森岩雄さんはこういって「いとう句会」へ連れていった。昭和十一年の夏である。そのとき私は久保田万太郎宗匠に弟子入りし、渋沢にちなんで「渋亭」なる俳号を授けられた。宗匠もかつてそう名のったことがあるそうだ。
なるほど面白い会だった。これでよく俳句が作れるとおもうくらい、ムキになって議論したり、しゃれをいったり、時勢を慨嘆したり、芸術を論じたり、書評、人物評をしたりする。
堀内駘蕩亭 「宗匠。啓蟄って何ですか?」
宗匠 「春が来て地虫が穴 を出ることです」
駘蕩亭 「するてえと不在 地虫か」
内田水中亭 「取引先がこっちの言うことを聞かないので、そんなに強情張ると、僕は血圧が高いからヒックリ返りますよといったら、折れてくれました」
駘蕩亭 「ケツアツをまくるという新手だね」
こんな調子で一座に笑いが絶えない・・・(以下省略)
ぶぶっ、なにこれ。句会ってこんなこと話してるの。たのしそう。
駘蕩亭さん、切れ味いいですね。
「ケツアツをまくる」は「ケツをまくる」、「不在地虫」は「不在地主」のしゃれでしょうか。
月報にはみなさん真面目に俳句について寄稿されているのですが、秀雄さんのこの掴みは秀逸だなぁと妙に感心してしまいました。
※駘蕩亭さんは堀内という苗字からすると堀内敬三氏のようです。