購買力平価でみれば、正しい姿が見えてくる。
米国金利上げが円高に振れるのは正しい判断でしょう。
東洋経済オンライン 12月14日(月)6時0分配信
円安終焉へのカウントダウンが始まった
米国の利上げが契機となって、過剰な円安への反動相場が始まるだろう(TAKUMI-CG/PIXTA)
私はかつて拙書およびさまざまな媒体で、「米国のQE3開始をきっかけに、円高トレンドが終焉するだろう」あるいは「2013年は円安トレンドへの
大転換の年になる」と、2012年のうちから予測してきました〔参考記事の一例:『2013年は為替トレンドの大転換の年になる!』(2012年12月5日)・
『円安時代が始まる』(2012年12月28日)。ところが2015年に入ってからの私は、米国の利上げをきっかけにして、円安トレンドがいよいよ終焉するだろうという
見通しを持っています。11月9日の対談記事でも述べたように、円安トレンドの終わりを決定付けるのは、米国の利上げが始まる前後の1カ月以内に訪れる円相場の
急伸になるのではないでしょうか。 そのように考える理由は、米国が2012年9月にQE3を開始した直後に、1ドル75円台という円高のクライマックスが訪れて、
その後に歴史的な円高が終焉しているからです。要するに、今回予想する円安トレンドの終焉はその逆バージョンであると考えられるのです。すなわち、
2015年12月~2016年1月のどこかで、過剰な円安への反動相場がようやく始まるというわけです。
■ 円相場の長期トレンドは購買力平価で判断
それでは、円高トレンドに転換した円相場は、どのくらいまで高くなるのでしょうか。言い方を換えれば、現在の円相場はどのあたりが適正な水準であるのでしょうか。
私はおそらく、100円~105円のレンジがひとつのターゲット・プライスになるだろうと考えています。長期的なドル円相場のトレンドを見るうえで、
私が重視する判断基準は、「購買力平価」で見るとどうなるかということだからです。
購買力平価とは、その国の通貨でどれだけのモノを買えるかという購買力を基準にして、その時の為替相場が高いのか安いのかを見極めるための物差しのようなものです。
短期の相場予測には向かないものの、長期の相場動向を予測するうえでは非常に有効な判断基準になりえます。
適正なドル円相場を考えるうえでは、米国と日本の2カ国間の物価動向を比べ、通貨の相対的な価値を測るという方法があります。米国では2014年の消費者物価指数が
2000年と比べて35%も上がったため、この間にドルの購買力は35%下落しています。これに対して、日本では2014年の消費者物価指数は3%下落しているので、円の購買力は
逆に3%上がったことになっています。日米の物価動向を反映すると、長期的なドルの価値は円に対しておよそ38%下落しているはずだと考えられるわけです。
購買力平価が長期的にドル安円高の方向に動いているのは、米国の物価上昇率が日本の物価上昇率より高い状態がずっと続き、ドルの円に対する価値が落ち続けたことを
示しています。実際のドル円相場も、数年単位で激しい動きをしながらも、結局のところ、長期的には購買力平価のトレンドに回帰することを繰り返してきました。その意味では、
インフレが進む国の通貨価値は下がり、逆にデフレが進む国の通貨価値は上がるという購買力平価の考え方は、とても説得力があるといえます。
消費者物価指数ベースで考えると、購買力平価は今のところ1ドル100円~105円あたりになります。また、企業物価指数ベースで考えると、購買力平価はさらに円高方向に振れ、
1ドル95円~100円あたりまで上昇します。12月8日時点のドル円相場は123円台で推移しているので、現状では消費者物価指数ベースの購買力平価よりも18%~23%程度、
円安方向に乖離していると考えられます。
■ 劇的に改善した日本の経常収支
ですから、やや控えめな購買力平価で判断してみても、2016年~2017年にドル円相場は100円~105円の範囲内に回帰するのが自然な流れであると言えるのです。
さらには2014年~2015年にかけては、短期および中期の相場予測に有効な経常収支においても、大きな変化が見られ始めています。米国の経常収支が原油輸入の減少により
徐々に改善傾向を示している一方で、日本の経常収支は2014年を底にして2015年には劇的に改善してきているのです。
日本の2014年上半期(1月~6月)の経常収支は0.5兆円の赤字でしたが、下半期(7月~12月)には3.1兆円の黒字に転換し、2015年上半期(1月~6月)には8.1兆円と黒字額を
大幅に増加させています。そのうえ、2015年7月~10月までの4カ月間で6.3兆円の黒字を積み上げて、2015年通年では黒字額は16兆円~18兆円にまで膨らむ見通しにあります。
購買力平価だけでなく経常収支の推移を見ても、今の123円台の円安は正当化することができないわけです。
今のドル円相場は、日米の金融政策の方向性が真逆になるなかで、両国の金利差が拡大するという短中期的な相場予測の要因により、大きく歪んでしまっているといえます。
大きく歪んでしまった相場が正常化に向かう過程では、「円安トレンドが終わり、円高トレンドが始まる」と考えるのが必然的なのです。
なお、外貨投資に関して私は、2012年12月にドル一極投資に集中し、今月に入って123円台ですべて売却しましたが、2016年にドルの買い場がまったくないわけではないと
予想しています。その理由については、ブログ『経済を読む』で述べていますので、興味がございましたらご覧いただければと思います。 中原 圭介
米国金利上げが円高に振れるのは正しい判断でしょう。
東洋経済オンライン 12月14日(月)6時0分配信
円安終焉へのカウントダウンが始まった
米国の利上げが契機となって、過剰な円安への反動相場が始まるだろう(TAKUMI-CG/PIXTA)
私はかつて拙書およびさまざまな媒体で、「米国のQE3開始をきっかけに、円高トレンドが終焉するだろう」あるいは「2013年は円安トレンドへの
大転換の年になる」と、2012年のうちから予測してきました〔参考記事の一例:『2013年は為替トレンドの大転換の年になる!』(2012年12月5日)・
『円安時代が始まる』(2012年12月28日)。ところが2015年に入ってからの私は、米国の利上げをきっかけにして、円安トレンドがいよいよ終焉するだろうという
見通しを持っています。11月9日の対談記事でも述べたように、円安トレンドの終わりを決定付けるのは、米国の利上げが始まる前後の1カ月以内に訪れる円相場の
急伸になるのではないでしょうか。 そのように考える理由は、米国が2012年9月にQE3を開始した直後に、1ドル75円台という円高のクライマックスが訪れて、
その後に歴史的な円高が終焉しているからです。要するに、今回予想する円安トレンドの終焉はその逆バージョンであると考えられるのです。すなわち、
2015年12月~2016年1月のどこかで、過剰な円安への反動相場がようやく始まるというわけです。
■ 円相場の長期トレンドは購買力平価で判断
それでは、円高トレンドに転換した円相場は、どのくらいまで高くなるのでしょうか。言い方を換えれば、現在の円相場はどのあたりが適正な水準であるのでしょうか。
私はおそらく、100円~105円のレンジがひとつのターゲット・プライスになるだろうと考えています。長期的なドル円相場のトレンドを見るうえで、
私が重視する判断基準は、「購買力平価」で見るとどうなるかということだからです。
購買力平価とは、その国の通貨でどれだけのモノを買えるかという購買力を基準にして、その時の為替相場が高いのか安いのかを見極めるための物差しのようなものです。
短期の相場予測には向かないものの、長期の相場動向を予測するうえでは非常に有効な判断基準になりえます。
適正なドル円相場を考えるうえでは、米国と日本の2カ国間の物価動向を比べ、通貨の相対的な価値を測るという方法があります。米国では2014年の消費者物価指数が
2000年と比べて35%も上がったため、この間にドルの購買力は35%下落しています。これに対して、日本では2014年の消費者物価指数は3%下落しているので、円の購買力は
逆に3%上がったことになっています。日米の物価動向を反映すると、長期的なドルの価値は円に対しておよそ38%下落しているはずだと考えられるわけです。
購買力平価が長期的にドル安円高の方向に動いているのは、米国の物価上昇率が日本の物価上昇率より高い状態がずっと続き、ドルの円に対する価値が落ち続けたことを
示しています。実際のドル円相場も、数年単位で激しい動きをしながらも、結局のところ、長期的には購買力平価のトレンドに回帰することを繰り返してきました。その意味では、
インフレが進む国の通貨価値は下がり、逆にデフレが進む国の通貨価値は上がるという購買力平価の考え方は、とても説得力があるといえます。
消費者物価指数ベースで考えると、購買力平価は今のところ1ドル100円~105円あたりになります。また、企業物価指数ベースで考えると、購買力平価はさらに円高方向に振れ、
1ドル95円~100円あたりまで上昇します。12月8日時点のドル円相場は123円台で推移しているので、現状では消費者物価指数ベースの購買力平価よりも18%~23%程度、
円安方向に乖離していると考えられます。
■ 劇的に改善した日本の経常収支
ですから、やや控えめな購買力平価で判断してみても、2016年~2017年にドル円相場は100円~105円の範囲内に回帰するのが自然な流れであると言えるのです。
さらには2014年~2015年にかけては、短期および中期の相場予測に有効な経常収支においても、大きな変化が見られ始めています。米国の経常収支が原油輸入の減少により
徐々に改善傾向を示している一方で、日本の経常収支は2014年を底にして2015年には劇的に改善してきているのです。
日本の2014年上半期(1月~6月)の経常収支は0.5兆円の赤字でしたが、下半期(7月~12月)には3.1兆円の黒字に転換し、2015年上半期(1月~6月)には8.1兆円と黒字額を
大幅に増加させています。そのうえ、2015年7月~10月までの4カ月間で6.3兆円の黒字を積み上げて、2015年通年では黒字額は16兆円~18兆円にまで膨らむ見通しにあります。
購買力平価だけでなく経常収支の推移を見ても、今の123円台の円安は正当化することができないわけです。
今のドル円相場は、日米の金融政策の方向性が真逆になるなかで、両国の金利差が拡大するという短中期的な相場予測の要因により、大きく歪んでしまっているといえます。
大きく歪んでしまった相場が正常化に向かう過程では、「円安トレンドが終わり、円高トレンドが始まる」と考えるのが必然的なのです。
なお、外貨投資に関して私は、2012年12月にドル一極投資に集中し、今月に入って123円台ですべて売却しましたが、2016年にドルの買い場がまったくないわけではないと
予想しています。その理由については、ブログ『経済を読む』で述べていますので、興味がございましたらご覧いただければと思います。 中原 圭介
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