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琴子はマンションに１人暮らし
ベランダにプランタを置き小さな菜園が楽しみ
プランタの１つ１つに名前を付けてある
正夫と名付けたプランタにはプチトマト
雄二と名付けたプランタは茄子
光男と名付けたプランタには胡瓜
その他にもプランタが6個程あるが名前は付いてない
朝晩の水やりが楽しい
大きく実が実ると収穫して食べる
無添加で身体に優しい野菜作り
季節の野菜の種をプランタに植え名前を付けて世話をする
『正夫もっと沢山のプチトマトつけてちょうだいね』
隣人は最初の頃は彼氏と会話しているのかと思っていた
『や～ね～雄二ったら、なかなか実を付けてくれなくて』
実を付けてくれない？
不思議な会話のカップル
しかし男が出入りしているのを見た事がない
帰宅すると直ぐにベランダの戸が開く音がする
そして会話が始まるの
まるで彼氏と会話しているかのよう
『ただいま～今すぐ水をあげるわね』
女の１人暮らしは寂しいものだ
気にしないように努めた
そんな隣人の琴子が突然、部屋に尋ねてきた
『隣の者ですけど、あの・・・これ・・・』
恥ずかしそうにうつむき加減で差し出した胡瓜
『たった今採った胡瓜なんです良かったら食べて下さい』
『あら～嬉しいわ有り難う』
胡瓜の新鮮な匂いがしてる
『悪いわね遠慮しないで頂くわ』
ニッコリ微笑んで
引っ越してきて半年も経つのに挨拶もろくにせず
『また野菜が採れたら持ってきます』
そういい残して部屋に戻って行った
滅多に顔を合わせる事のない隣人さん
今日も隣の琴子の独り言が聞こえる
『ウフフフフッ～光男さん胡瓜が5本も出来てる～』
夏はベランダの戸を開けっぱなしにしているので会話が筒抜け
『雄二さんは駄目ね茄子が大きくならないし』
聞いている方は相手が野菜だと知らなかったら赤面ものだ
『元(はじめ)さんは凄いわ、もうこんなに大きな実がなってるし』
新しい名前が増えている
プランタに名前を付けているのか？
野菜に名前を付けているのか？どっちでも良いが変な趣味の隣人
男名前の付く野菜を食べるのも笑えるが
新鮮な胡瓜を丸齧りして舌鼓
さすが採れたて野菜はみずみずしくて美味しいわ
冷えたビールを飲みながら
暑い夏の１人暮らしを満喫
琴子の隣に住む綾子は今年で31歳になる
彼氏が居ない歴2年
前の彼と別れて今のマンションに引っ越して来た
暫く男はこりごり
琴子のように植木でも買って男の名前でもつけようか？
皮肉にも琴子の楽しそうな会話を聞いて思ったりもした
鼻を突く臭いのする時があるがベランダの戸を閉めれば問題は無い
琴子は野菜のお裾分けの時にホームセンターで売っている肥料を入
れているので臭いがするけど我慢出来なかったら言って下さいねと言っていた
異様な臭い、これが肥料の臭いなのか
近所迷惑の悪臭
しかしそれ以上に琴子のお裾分けの野菜は美味しい
綾子の職業は婦人警官
小さい頃から憧れていた職業に就いて満足していた
今日も、さっそうと職場に向かった
ディスクには仕事の山
溜息が出るが、やりがいのある仕事だ
行方不明や家出人の捜査が主な仕事
てんこ盛りになった家出人や行方不明
尋ね人の写真や名前を整理している時だ
新しく受け付け受理された家出人の名前が元・・・・岡本 元 29歳
琴子が最近プランタに付けた名前と同じ
気にも留めずに黙々と今日も仕事をこなす綾子
*：・'゜☆。.:*:・続くのだ゜'・:*:.。.:*:・'゜:*
ブログを初めて半年程の頃に投稿したサスペンス
読んだ事のある人も始めての人も
楽しんでね
o(^◇^)/~ ばいちゃ~♪
*：・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜:*♪
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