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綾子のディスクの失踪者の山は半端ではない
家出人届けだけでも手が回らない
署内では事件、事故、窃盗やら詐欺やらの被害届も多数
その中で事件性の高いのをリストアップしていく
家出は大抵、数日で戻るケースが多い
雑務処理の仕事に最近はストレスが溜まる
しかし誰かがこなさなければならない仕事でもある
勤務時間など、あってないような仕事の忙しさ
落ち度があってはいけないし
クタクタになって帰宅した綾子の部屋の前にナイロン袋が置かれてる
真っ赤に熟した採りたてプチトマトが沢山入ってた
琴子さんが置いて行ったのね
シャワーを浴びた後、新鮮なプチトマトをツマミにビールを飲む
ハァ~美味しい
変わり者の琴子だが何故か親近感が湧く
女は色気より食い気だと自分で自分を笑う
時計は11時を回っていた
程よい酔いが眠気を誘う
疲労感に襲われウトウトし始めた頃
琴子の部屋のベランダの開く音が聞こえた
帰ってきた、ベランダ越しにお礼でも言うかな?
琴子の帰りを心待ちにしてた綾子
ベランダを開けると
悪臭が鼻につく
『琴子さんプチトマト有難うね』
『あっいいえ~新鮮なプチトマトを食べてもらいたくて』
『ところで変な質問だけど怒こらないでね、野菜に名前付けてるの?』
『あら聞こえてたんですか子供の頃から庭なんかに咲く花に芸能人の
名前を付けて呼ぶのが好きなんです』
『へ~そうなんだ、ちなみにプチトマトの名前は?』
『正夫って付けたんです』
『芸能人の誰か?』
『いいえ違います大きな声で言えませんが隣に住んでた人の彼の名前です』
『なんだ、そうだったの』
『隣に住んでた女性は綺麗な方でしたよ』
『方でした?って事は引越しして居ないの?』
『はい昨日、引越しちゃいました・・・何だかとっても急いでたみたいですが』
『このマンション1人暮らしの人が多いもんね』
『そうですね、胡瓜の名前は光男さんて言うんです』
『美味しい光男君のお礼に何かしなくっちゃ』
『あっお礼なんていいんです美味しいって食べて頂けるだけで』
『とっても美味しいわよ有り難う』
綾子は丁重に礼を言いベランダの戸を閉めた
隣から漂う悪臭に我慢が出来ない
いったいどんな肥料を使ってるの?
近所迷惑の悪臭が鼻に残る
美味しい野菜を作るって忍耐と努力なのね
そんな事を考えながら
たわいない会話の中で偶然、知った呼び名の訳
最後の1個のプチトマト
『正夫君は美味しいよ』
それから数日間
ベランダでの琴子のお喋りが聞えない
気にはなっていたが仕事ですれ違いになってるのかもしれない
琴子の仕事は看護師
琴子の職業を知らない綾子
すれ違いの日々が暫く続いていたがベランダの戸の開く音に気付き
琴子が帰ってきてる
いつの間にか琴子を待つ綾子
プチトマトのお礼に夏みかんを用意して待っていた
琴子の部屋のインターホンを鳴らす
インターホンが部屋に響いてるが出てこない
あれっ?
さっきまでベランダに出てたのにもう寝たのかな?
部屋のドアの前に夏みかんを置いて綾子は戻った
ん?
ベランダで話し声が聞える
静かにベランダを少しだけ開けて様子を伺った
『健史さん琴子の為に沢山の実を付けてね』
次は何を植えたのか
ベランダにいてもインターホンの音に気付くはず
居留守したのね
しかも男の名前も増えてる
腹が立つ綾子
ベランダ越しに声を掛けようか迷ったが止めた
自分の世界に入っている琴子
そっとしておこう
静かに音を立てないようにベランダの戸を閉めた
琴子は隣の綾子が聞き耳を立てているのを知っている
琴子は楽しくて仕方がない
綾子が自分の私生活に興味を持っている事を
*:・'゜☆。.続く:*:・'゜゜'・:*:.。.
o(^◇^)/~ ばいちゃ~♪
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