Kさんの旦那さん(以下おじさん)
がいる施設に
面会(という名目の見学)に行った次の週
息子さんがご実家に帰省するから
会いませんかと言ってくれたので
父と母も連れて
Kさんのおうちにお邪魔しに行った
Kさんのおうちに着くまで
母は何度も
「おじさんのところに行くの?」(違う)
「退院したの?」(おじさんはいない)
「Kちゃんは元気だよね?」(んなわけない)
と聞いてきた
()はその度に父と私が言ったこと
かなり混乱しているようだった
Kさんのおうちに着くと
久しぶりにKさんの御仏壇に
手を合わせた
御仏壇の前に座ったとたん
母は涙を流した
なのにその後リビングで
息子さんと話しているときに
「Kちゃんは生きているよね?」
と言い出す
Kさんの息子さんも
おじさんに良く似てきて
母の中で息子さんがおじさんに
見えて
おじさんに話しているような発言が
度々あった
まだKさんが生きていて
そこのおじいさんも生きていた時間に
母はタイムスリップしたようだ
息子さんからおじさんの話を
いろいろ聞いた
施設入所までの1年ほどは
かなり大変だったようだ
排泄の失敗も去ることながら
足腰が丈夫なので
自転車で高速入り口まで侵入して
警察から連絡が入ったり
デイサービスに行ってる間に
空き巣に入られたようだが
認知症のおじさんは気づけず
デイサービスの送迎の人から
息子さんに連絡が入り
週末に息子さんが帰省して確認して
警察に通報するまで
ガラスは割れたままだったらしい
そしてなにより
おじさんは食事に困っていたらしい
毎日デイサービスに行き
昼ごはんはデイサービスで
食べさせてもらい
帰りに夜ごはん用に
お弁当を持たせてもらうのだが
デイサービスがお休みだと
前日に2日分のお弁当を渡されて
それを一晩で食べてしまうので
次の日の分がない
もう自炊も出来ず
買いに行くという発想もない
家の中の食べられるものを探し
塩をなめてやり過ごすこともあったようだ
ある時はお米がわからなくなり
ざらめを炊飯器に入れて炊いたことも
あったらしい
それを聞いておじさんは
施設に入って本当に良かったと思った
一人でお腹をすかせて
不安だったと思う
今施設で穏やかに暮らせている事
改めて良かったと思う
帰るとき
御仏壇に手を合わせた母は
また泣いていた
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