ネット注文、本を買う

　この2か月、近所の大型書店が営業をやめていたため、ネットで本を注文していました。
　送料が無料になるよう、何冊かまとめて買います。
　はじめのうちは、好きな作家の新刊を探していたのですが、見当たらなくなると、ネットの情報を参考に、読んだことのない作家の小説をカートに入れるようになりました。
　この時期に限ったことではないのですが、一文も読んだことのない本は、わりとハズレます。本そのもののクオリティとは別で、単純にぼくの好みと合わないのです。
　せめて一度でも手にとって冒頭を読めたなら、こんな不幸な出会いは生まれなかった。
　ネットでも少し読める本はあります。
　では、すべての本の最初何ページかが読めるようになれば、長い付き合いのできる本と出会えるのかというと、それは書店で手にした場合と一緒で、必ずしも幸せな行く末とはならないでしょう。
　ネットだけで繰り返し注文していると、だんだん視野が狭くなっていく感じがします。
　興味のあるところばかりを探すのです。
　夜中にネットの海を彷徨う何時間よりも、店内をあちこち歩き回っているときの、新しい出会いの予感に満ちた時間の方が、ぼくには向いているようです。

丸くて穴の開いた甘いもの

　スイーツ、デザート、ドルチェ。
　単なる「食」でなく、特別な「楽しみ」に属する甘い物の中で、何が一番好きかと考えると、ドーナツが浮かびました。
　ドーナツとは、また庶民的な、それはどちらかというとポテチの縁者ではないのかと自分でも思います。
　幾種類もあるドーナツの中で、さらに特別感の薄いオールドファッションが好みです。
　コーヒーを飲みながらオールドファッションを食す。できればミスドがいい。
　何年か前に、コンビニのレジ横にドーナツが並びました。
　コーヒーを買うついでにドーナツも、という意図だったようですが、ぼくにとってその発想は逆です。
　ドーナツは、店に行く前から買おうと決心して買うのです。
　何も考えず、それほど気軽にドーナツを食べるには、カロリーが高い。
　やはりドーナツは、特別な「楽しみ」なのです。

大事な歯のこと

　奥歯に物が挟まったようなとは、何かを隠しているような物言いを指します。
　でも、本当に挟まっているような、本当のところは何も挟まっていないのに、そんな感覚がしばらく続いています。
　たとえば綿が挟まっているような。
　歯茎が腫れているのです。
　奥歯が割れてしまい、歯科医院で一部を抜いた後、一日経ってから腫れてきました。
　腫れのピークは2、3日だそうで、そろそろ下りにさしかかってきてもいい頃です。
　腫れが引いて、このまま治療を続けていけば治って終わりかというと、そうでもなさそうです。
　残っている部分も、いつの日か割れてしまうかもしれず、そうなったらすべて抜かなくてはいけない。
　医師の説明は、どこか奥歯に物が挟まったような印象を受けました。

みんなが家で仕事をすると

　在宅での仕事は、同僚同士のコミュニケーションがうまくはかれないのでしょうか。
　仕事を請け負っている会社の人からメールが来ました。
　その人の同僚で、いまぼくが一緒に仕事をしている人と連絡が取れないというのです。
　スケジュールがどうなっているのか知りませんか？
　申し訳ないですが、ぼくはわかりません。
　そんなやりとり。
　電話がつながらず、メールの返事がこない。
　一体どこで何をしているのだ。
　モヤモヤした気持ちが伝わってきました。

見失ってしまったこと

　細い階段を下りて、狭くクネクネと曲がった道を歩きます。
　静かな住宅街です。
　角を曲がると、その先にあった家が消えていました。
　近づいてみると駐車場になっている。
　この前まで、庭の花を綺麗に手入れしていた家がありました。
　いつの間に。
　買い物の回数を減らしているので、この先にあるスーパーに行かなくなり、この通りを歩かなくなっていました。
　さらに歩いていくと、木々に囲まれた低層のマンションの様子が変です。
　雑草が伸びている。
　入り口にロープが張られています。
　誰も住んでいない。
　いつの間に。
　世の中の流れを見失ってしまった。