絵は残る 人はいない

　夕方、公園に行ってみました。
　芝生の上、チューリップの花で描いた絵が完成していました。
　色とりどりの花は、不規則に並べられているのに、とても綺麗です。
　近くには誰もいません。
　ときおり、犬の散歩をする人が通るだけ。
　だんだん薄暗くなっていく時間。
　艶やかな花が、ただそこにあります。
　大勢の話し声が、急に止んでしまったかのような静けさ。
　よく見ると、花はしおれてきていました。

みんなで絵を作る

　公園の片隅で、花を使って絵を作っていました。
　芝生の上に輪郭線が描いてあり、その中にチューリップの花びらを並べていくのです。
　大きな花の絵のようです。
　赤、黄、白、ピンク。
　箱にたくさんの花が入っています。
　「好きに並べてください。どんなふうに並べても可愛くなりますよ」
　係の人に言われて、それならと、白と赤を手に取りました。
　欲張って5本並べたけれど、まだまだ絵は完成しません。
　あとでまた見に来よう。

急なことで

　友人が入院しました。
　夜中に激しい腹痛に襲われ、タクシーで病院へ連れて行ってもらったそうです。
　そのまま入院。
　その日、来週会おうと電話で話したばかりでした。
　3日後、病院で会いました。
　やっと、お茶を飲む許可がおりた。
　そう言って、カップに注いだほうじ茶を、それはそれは美味しそうに飲んでいました。

何にこだわるか

　昼食は、コンビニでおにぎりでも買って食べよう。
　出かける前にそう決めました。
　ところが、外出先のコンビニに入ったのは午後2時過ぎ。
　おにぎりが1個も残っていませんでした。
　朝から頭の中はおにぎりモード。
　いまさらほかのものに変えられません。
　弁当は残っています。
　でも弁当じゃないんだよなあ。
　なんというか、片手で食べる感じ？　
　では似た形のコロッケパンなどいかがでしょう。
　そうだねえ。
　ハンバーガーもありました。
　うーん。
　クリームパン？

新天地へ向かって

　マンションの隣りに住む家族が、引っ越しますと挨拶にきました。
　とくに親しい間柄ではなかったけれど、ちょっと寂しい。
　休日はバーベキュー、春にはお花見、夏にはドライブ、そんなことはしませんでした。
　醤油の貸し借り、洗濯物の取り込み、旅先でお土産の購入、それもなかった。
　引っ越しの手伝いもしないでしょう。
　おにぎりの差し入れもしないだろうし、見送ることもない。
　作業の慌ただしい音が、夕方突然止んで、そして誰もいなくなっている。
　きっとそんな感じです。