写真:Esther Haase and DG
昨年、マンハッタンのLe Poison Rougeでアリス=紗良・オットのコンサートを見た。
ピアノ演奏は神がかっていたが、ステージ後に話をしてみると
本当にごく普通の明るく礼儀正しい女性で、そのギャップに親近感を覚えた。
そして、よみタイムのオンガク喫茶(11月16日号)で
彼女にインタビューする機会が巡ってきた。
ドイツにいる彼女にスカイプで30分ほど話を聞かせてもらったが
何よりも印象に残っているのは、音楽家としては勿論のことだが、
一人の人間として考え方が、とてもしっかりしていて、頷かされることばかりだったこと。
本当に素晴らしい音楽家だと感心させられた。
ピアノに対しての愛情と言えるくらいの深い敬意と
音楽に取組む上での、真摯で謙虚な姿勢には頭が下がる思いだった。
子供の頃、日本語学校に通っている時に読んだという伝記シリーズ。
それらの書物からキューリー夫人、ヘレン・ケラー、
ナイチンゲールの存在を知り、強い女性に憧れたと言う。
音楽にのめりこむ毎日だが、ピラティスをしたり
他にも料理をするのが好きらしい。
妹のモナ=飛鳥・オットは、アリスを追うようにしてピアノを習い始め、
18歳になるまで同じ先生の元、二人で腕を上げ、絆もどんどん深めた。
今でも音楽やピアノなど何でも率直な意見を交せることができる双子のような存在だと言う。
また姉妹だからと言うだけで、全くタイプの妹と比較されることはナンセンスとし
比べられるなら、同じ世代のピアニストの方が良いとも主張していた。
ステージでは靴を履かないアリスだが、その理由は、5年程前、晩年のフランツ・リストが演奏したという
ドイツの会場でコンサートをした時、ハイヒールを履いていては膝がピアノの下に入らない為、
裸足で演奏したのがきっかけだったと言う。
ただ演奏面で裸足でも靴を履いていても変わらないとのことで
強いて言えば、裸足だとペダルがひんやりして気持ちいいくらい、そうだ。
もう明日になったが、ニューヨークで3回目の公演を行うアリス。
演目はベートーヴェンの『テンペスト』とリストの『パガニーニによる大練習曲』だが
両方とも子供の頃に組んだことがあり、とても思い入れがあると言うことで
今回のコンサートの準備にも力が入っている感じだった。
Alice Sara Ott
■11月30日(日)11:00am
■会場:Walter Reade Theater
165 W. 65th Street, New York, NY 10023
■電話: 212-875-5600
■入場券:$22