次の年は畑を広げ、馬糞や枯れ草をうめたのでたくさんの収穫がありました。
<ところが、ある霜柱のたったつめたい朝でした。>
みながいつものように畑に行こうとすると、農具が全部なくなっていました。
どこを探しても見つからないので、狼森に行きました。
<すると、すぐ狼が九匹でてきて、みんなまじめな顔して、手をせわしくふって言いました。「無い無い、決して無い無い、他をさがして無かったらもう一度おいで」>
みんなは尤もだと思って、西の笊森に行きました。
森の奥に入っていくと、古い柏の木の下に、木で編んだおおきな笊が伏せてありました。
怪しいと思って開けてみると、中になくなった農具がならべて置いてありました。
<それどころではなく、まんなかには黄金色の目をした、顔の真っ赤な山男が、あぐらをかいて座っていました。そしてみんなを見ると、大きな口をあけてバァ、と言いました。>
百姓たちはびくともしないで、山男をしかりました。
<山男はたいへん恐縮したようで、頭をかいて立って居りました。>
みなが農具を持って帰ろうとすると、
<「おらさも粟もち持ってきてくろよ、」と叫んでくるりと向こうを向いて、手で頭をかくして、森のもっと奥に走っていきました。>
みなはあっはっはと笑いました。もちろん、あとで狼森と笊森に、粟もちを持っていってやりました。
次の年は平らなところはすべて畑になりました。
秋の実りはたいへんなものでした。
そしてやはり不思議なことが起こったのです。
<ある、霧の一面においた朝、納屋の粟がみんななくなっていました。>
みんなは森に探しに行きました。
すると狼たちも、山男も、もう森の前に出て待っていて、にやにやしながら俺たちじゃないよ、今日も粟もちだ、といいました。
北の黒坂森にいくと、
<「おれは明け方、まっ黒な大きな足が、空を北にとんで行くのを見た。」>
と言うので、もっと北に行って、松のまっ黒な盗森のなかにはいって「さぁ、おらたちの粟を返せ、」とどなりました。
<すると森の奥から、まっくろな手の長い、大きな男がでてきて、まるでさけるような声で云いました。「なんだと、おれを盗人だと、そうゆうやつは、みんな叩き潰してやるぞ」>
みんなは負けずに「黒坂森が証人だ」と叫びました。
<「あいつの云うことはあてにならん、ならん、ならん、ならんぞ、畜生、」>と盗森は叫び返しました。
みんな恐ろしくなって引き返そうか、と顔を見合わせたとき、突然頭上から声が響きました。
「いやいや、それはならん、」
盗森は頭をかかえて地面に倒れました。
声の主は銀の冠を戴いた岩手山でした。
<「ぬすとは確かに盗森に相違ない。おれは明け方、東のそらのあかりと、西の月の明かりとで確かにそれを見届けた。しかしみんなもう帰ってよかろう、粟はきっと返させよう。だから悪く思わんでおけ、一体盗森は、自分で粟もちをこさえてみたくてたまらなかったのだ。それで粟も盗んできたのだ。ほっはっは。」>
みなはあっけにとられたまま家に帰ると、粟はたしかに納屋にもどっていました。
<そこでみんなは笑って粟もちをこしらえて、四つの森に持っていきました。>
<さて、それから森はすっかりみんなの友だちでした。そして毎年、冬のはじめにはきっと粟もちを貰いました。>
あらすじ?終わり。
<ところが、ある霜柱のたったつめたい朝でした。>
みながいつものように畑に行こうとすると、農具が全部なくなっていました。
どこを探しても見つからないので、狼森に行きました。
<すると、すぐ狼が九匹でてきて、みんなまじめな顔して、手をせわしくふって言いました。「無い無い、決して無い無い、他をさがして無かったらもう一度おいで」>
みんなは尤もだと思って、西の笊森に行きました。
森の奥に入っていくと、古い柏の木の下に、木で編んだおおきな笊が伏せてありました。
怪しいと思って開けてみると、中になくなった農具がならべて置いてありました。
<それどころではなく、まんなかには黄金色の目をした、顔の真っ赤な山男が、あぐらをかいて座っていました。そしてみんなを見ると、大きな口をあけてバァ、と言いました。>
百姓たちはびくともしないで、山男をしかりました。
<山男はたいへん恐縮したようで、頭をかいて立って居りました。>
みなが農具を持って帰ろうとすると、
<「おらさも粟もち持ってきてくろよ、」と叫んでくるりと向こうを向いて、手で頭をかくして、森のもっと奥に走っていきました。>
みなはあっはっはと笑いました。もちろん、あとで狼森と笊森に、粟もちを持っていってやりました。
次の年は平らなところはすべて畑になりました。
秋の実りはたいへんなものでした。
そしてやはり不思議なことが起こったのです。
<ある、霧の一面においた朝、納屋の粟がみんななくなっていました。>
みんなは森に探しに行きました。
すると狼たちも、山男も、もう森の前に出て待っていて、にやにやしながら俺たちじゃないよ、今日も粟もちだ、といいました。
北の黒坂森にいくと、
<「おれは明け方、まっ黒な大きな足が、空を北にとんで行くのを見た。」>
と言うので、もっと北に行って、松のまっ黒な盗森のなかにはいって「さぁ、おらたちの粟を返せ、」とどなりました。
<すると森の奥から、まっくろな手の長い、大きな男がでてきて、まるでさけるような声で云いました。「なんだと、おれを盗人だと、そうゆうやつは、みんな叩き潰してやるぞ」>
みんなは負けずに「黒坂森が証人だ」と叫びました。
<「あいつの云うことはあてにならん、ならん、ならん、ならんぞ、畜生、」>と盗森は叫び返しました。
みんな恐ろしくなって引き返そうか、と顔を見合わせたとき、突然頭上から声が響きました。
「いやいや、それはならん、」
盗森は頭をかかえて地面に倒れました。
声の主は銀の冠を戴いた岩手山でした。
<「ぬすとは確かに盗森に相違ない。おれは明け方、東のそらのあかりと、西の月の明かりとで確かにそれを見届けた。しかしみんなもう帰ってよかろう、粟はきっと返させよう。だから悪く思わんでおけ、一体盗森は、自分で粟もちをこさえてみたくてたまらなかったのだ。それで粟も盗んできたのだ。ほっはっは。」>
みなはあっけにとられたまま家に帰ると、粟はたしかに納屋にもどっていました。
<そこでみんなは笑って粟もちをこしらえて、四つの森に持っていきました。>
<さて、それから森はすっかりみんなの友だちでした。そして毎年、冬のはじめにはきっと粟もちを貰いました。>
あらすじ?終わり。