echo garden

基本的に読書感想文です。

ナルニア国物語 ライオンと魔女 18

2006-03-29 01:30:12 | Weblog
 けれども、ライオンの歩き方はなんとのろかったことでしょう!その大きな王者の頭は低くたれて、鼻づらが草の葉に触らんばかりでした。しばらくしてアスランは、つまづいて、低いうめき声をあげました。
 「ああ、アスラン、どうされたんですか、お体が悪いのですか?」とルーシィが声をかけました。
 「悲しくて寂しいのだ。もっと近くによっておくれ。」
 3人はよりそって山道をのぼりましたが、草原の手前にくると、アスランは「なにがあっても出てきてはだめだよ。」と二人に別れを告げました。
 アスランは石舞台の方に歩いて行きましたが、そこには、オオカミがナルニアじゅうから集めてきた、魔女の手下どもが群れをなしていました。
 そして石舞台のうえに、周りにいる悪鬼どもに持たせた、たいまつに赤く照らされて魔女が仁王立ちに立っていました。
 魔女はアスランを見ると、けたたましい笑い声をあげ、叫びました。
 「愚か者がきたわ!あいつをきりきり、しばりあげよ!」
 アスランは抵抗もせずに縛られ、縄のかたまりのようにされました。
 「毛をそりあげてしまえ!」
 魔女の命令で羊毛バサミを持ったた鬼婆がアスランのたてがみを刈りあげました。
 悪鬼どもは「いよ、こいつはただの猫のでっけえのだよ!」とか、「にゃーにゃーちゃん、ねずみはいかが!」などと、口々にはやしたてました。
 「ひきょうもの!ひようもの!」とスーザンはむせび泣きました。
 魔女は石のナイフを取り出してアスランのそばに立ちました。
 「さて、勝ったのはだれじゃ?愚か者め、こんなことで裏切り者の人間が救えるとおもったのか?では約束どおり、あの子のかわりにきさまを殺してやろう。それでこそむかしからの魔法にかなうというものよ。だがきさまが死んでしまえば、わらわがあの子を殺すじゃまのできる者があろうか?」
 魔女がナイフを振り下ろす瞬間、ルーシィとスーザンは思わず顔を伏せてしまいました。
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 17

2006-03-27 19:28:27 | Weblog
 14 魔女の勝利

 「私たちはすぐに、山のふもとに移動しなければならない。石舞台の場所は別のことに使うことになった。」アスランは言いました。
 誰もが魔女との取り決めが何だったのか知りたがりましたが、アスランの厳しい表情を見ると、誰も切り出せれませんでした。
 一同は大急ぎでテントをたたんで、山を降りました。
 その夜、スーザンはなかなか寝付けませんでした。
 ルーシィに話しかけると、ルーシィも起きていました。
 「アスランの様子がずっと変だったわ。」
 「わたし、何だかこれから恐ろしいことが起こるような気がするの。」
 「わたしはそれをアスランが自分から起こそうとしてるようにおもえるわ。」
 「アスランは今、ここにいるかしら?」
 「いるような気がしないわ!」
 二人は飛び起きてテントの外に出ました。
 すると、ちょうど、ライオンのうしろ姿が森の暗闇のなかに消えていくところでした。
 二人は静かに後をつけて行きましたが、木のない場所で振り向かれ、隠れることもできず、ばれてしまいました。
 アスランはうなづくと、「今夜はお供がいるほうが嬉しいよ。ついておいで。」と言いました。
 
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 16

2006-03-26 01:54:43 | Weblog
 13 世のはじめからの魔法

 魔女が小人とエドマンドを蹴飛ばして歩いているところへ、オオカミがうなりをあげて飛び込んできました。
 「やられました!石舞台でやつらを襲ったのですが、アダムの息子めにモーグリムが殺されました。逃げましょう!」
 「逃げることは無い、返り討ちにしてくれる。そちは我が手下どもに集まるようにふれまわれ、みなこぞって闘うのじゃ!」
 オオカミは一礼して、駆け去りました。
 「こやつは取引のためにまだ生かしておきましょうか?」小人がエドマンドを小突いて言いました。
 「もうよい、やつらに奪い返されたら元もこもないわ。いけにえの仕度をせよ、」
 こびとはエドマンドを木に縛り付け、魔女は石のナイフをとりだして、刃を研ぎ始めました。
 エドマンドは、空腹と疲れで朦朧とした意識のなかでそのシュッ、シュッ、という音を聴いていると、突然ひづめと翼のとどろきが聞こえました。
 次に小人の叫び声と魔女の悲鳴がしたかと思うと誰かに縄が解かれましたが、そのまま気を失ってしまいました。
 「魔女はどこに行った?」
 「おれはナイフを叩きおとしたが、そのあとは知らん、」
 「このなかから逃げたというのか?」
 アスランに遣わされた救助隊は不思議がりながら、エドマンドを背負って引き上げていきました。
 その場にあった丸石に足が生え、切り株にこそこそ話しかけたのは、そこに誰もいなくなってからでした。

翌朝、ピーターたちはテントから離れたところをアスランとエドマンドがなにか話しながら歩いているのを見ました。
 「兄弟がもどってきた。もう過ぎたことを話すひつようはないぞ。」とアスランがみんなにいいました。エドマンドは兄弟のひとりひとりに握手をもとめ、めいめいに「ごめんなさい!」と言い、ほかの子たちは「もういいよ、」とか「いいのよ」とかいいました。それからみんなは、エドマンドとふたたび仲良しになれたことがはっきりするようなことを、ごくふつうにさりげなく言いたいと、一心に思いましたが、もちろん、そうやすやすと言えるものではありません。
 その時、こびとが歩いてきて、「ナルニアの女王」との会見を申し出ました。アスランは受け入れました。
 「ここには裏切り者がいるな、アスラン。」と魔女がいいました。「このナルニアができる時にあたって、あの大帝がくだした魔法は、ご存知のはずじゃ。裏切り者はことごとく、掟にしたがってわらわの当然のえじきになり、裏切りがあるたびにわらわがそれに死をあたえるの権利があることはご存知のはずじゃ。」
 「おお、そのためにしだいに自分が女王だとおもいこんでしまったのだな。」とビーバーさん。「大帝の死刑係りだからな。」
 「静かに、ビーバー、みんな下がってくれ、わたしは二人だけで話したい。」とアスランがいいました。
 話し合いは長くつづきました。
 エドマンドは息が詰まって、いっそ、自分からなにか言おうかと思いましたが、アスランを信じたほうがいいと気がついて思いとどまりました。
 とうとうアスランが「話し合いがついた。」とみなを振り返りました。「あなたがたの兄弟の血をよこせと言うのはやめてくれた。」
 みな、一斉に安堵のため息をもらしました。
 魔女は立ち去りかけて、言いました。「この取り決めは間違いあるまいな?」
 「うおーお!」アスランは声の限りほえはした。
 魔女はほんのしばらく口をぽかんとあけて見ていましたが、さっとスカートをつまみあげて、命かぎりに走って、逃げていきました。
 
 

 
 

 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 15

2006-03-24 00:56:18 | Weblog
 前回の投稿から随分間があいてしまいまして、すみません。(別にあやまることもないか)
 最近、急に家を買う話が浮上して、建売やら、土地やら、注文住宅やら調べていたんですが、これからローンの金利が上がってくる気配があり、また、3月は決算期ということで、いますぐ決めれば、いろいろとお得なオプションがあるとか、セールスの人に脅され(?)、今、非常にあせってプランを練っています。
 今のところ、トヨタホームのエスパシオ・メッツォがいいな~と思っています。
 
 12 ピーターの初陣

 同じころ。
 ビーバーとこどもたちは急に春になった森のなかを夢のような気持ちで歩いていました。
 日が傾きかけたころ、ビーバーさんは「もう遠くありません」というと、川ぞいの道をはずれ、山の斜面をのぼりはじめました。
 ルーシィがもう一度休憩せずにのぼりきれるかしら、と思ったとき、目の前がひらけ、草原にでました。
 草原の中央に石舞台の名のとおり、4本の大きな岩の柱に支えられた巨大な平たい岩が乗ってるのが見えました。
 その横に大テントがあり、動物や妖精があつまっていて、彼らの視線の先に会いに来た、その人がいました。
 その姿を見て、皆、緊張してしまいました。
 「どうぞ、ビーバーさんからお先に、」ピーター。
 「いや、私は動物ですから、」
 「じゃ、スーザン、レディ・ファーストだから・・・」
 「年上はあなたよ、」
 と、ひともんちゃくの後、ピーターが決心して、アスランの前に進み出ました。
 「われら、ここにまいりました。アスランよ。」
 「ようこそ、アダムとイヴの子供たち、そして、ビーバー夫妻。」
 アスランの声は堂々として、同時におだやかで、子供たちを落ち着かせました。
 「して、もう一人はどこに?」
 「あの者は、みんなを裏切って、魔女の側につきました。アスランよ。」ビーバーさんが言いました。
 その時、なにかがピーターにこう言わせました。
 「その原因の一部はわたしのせいでした。アスランよ。わたしはあの弟をしかりとばしたのですが、そのせいで、間違ったほうに行かせたように思われます。」
 するとアスランはピーターを大きな瞳でじっと見ただけでした。
 「お願いです。エドマンドを助けてください。」ルーシィが言いました。
 「あらゆる努力をしよう、しかし、それは簡単ではなさそうだ。」
 その時、ルーシィはアスランの顔に悲しみの色が浮かぶのを見ました。しかし、次の瞬間、元の堂々とした顔にもどって、近くの動物に言いました。
 「彼らに、食事と休憩を!ピーターはわたしと一緒に来なさい。」
 アスランほピーターを草原の東のはしに連れました。
 はるか彼方に海が見え、森と海の境に丘があり、その上に城が夕日を受けて赤くそまっていました。
 「あれがケア・パラベルだ。そなたは長男だから、一の王となるであろう・・・」
 その時、不意に、ふしぎなラッパの音が聞こえました。
 「呼んでいる。そなたの妹の角笛だ。」
 いそいでテントにもどると、大変な騒ぎになっていました。
 スーザンはと見ると、木の枝に必死にぶらさがっていました。
 その下で、熊かと見間違えるほどの大きな狼が、スーザンの足に噛み付こうと、何度もジャンプしていました。
 ピーターは自分に勇気がみちているとは思いませんでした。それどころか気持ちがわるくなるような気がしました。といって、このさい、何かしなければならないことには変わりがありませんでした。
 ピーターはサンタにもらった剣を引き抜いて、しゃにむに狼に突きかかりました。
 生きているのか、死んでいるのか分らないような混乱した時間が過ぎると、狼はぐったりして動かなくなっていました。
 スーザンは木から下りてきて、ピーターと抱き合いました。
 死んだ狼はモーグリムでした。ほかの狼たちは親玉がやられたので、逃げ去っていきました。
 「あいつらを追いかけろ!女主人のもとにいくぞ!そこにエドマンドがいるはずだ!」とアスランが大声で指示をだしました。
 
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 14

2006-03-17 00:15:13 | Weblog
 11 アスラン、近づく

 魔女はモーグリムを呼び出し、命じました。
 「配下を集めて、ただちにビーバーの家に行け!もし家がもぬけの空だったら石舞台を目指せ、連中を見つけたら問答無用じゃ、かみ殺せ!」
 「あ、あの、お願いです。約束のプリンは・・・、」エドマンドはおずおずと言いました。
 「だまっとれ、ばか者!」
 魔女はそう叫ぶと、小人が用意したそりにエドマンドも乗せ、暗闇の雪のなかに走りだしました。
 ものの15分も進むうちに、もう体の前のほうは、雪だらけになりました。やがてエドマンドは雪をはらうことをやめました。どんなに速くはらっても、新しい雪がつもって、くたびれてしまったのです。そのうちにまもなく、からだのなかまで濡れてきました。まあ、なんとエドマンドのみじめなこと!
 朝になってもまだそりは明るい光のなかを走っていました。
 「とまれ!」と魔女が言ったとき、エドマンドがどれほど「朝ごはんにしよう、」と言ってくれるのを期待したでしょう。
 しかし違う理由でした。
 すこし先にある木の根元に見るも楽しげな集まりが開かれていました。
 テーブルをかこんで、きつねとリスの家族、小人と二人のサタイア人がごちそうを食べていましたが、そりに乗ってる人の顔を見て、表情が凍りつきました。
 「申せ!これはなんのまねじゃ、どこからこんな食べ物を手にいれた?」
 「これはサ、サンタクロースに・・・」
 「ありえぬ!あれはわらわが来られぬようにしてあるのじゃ、ウソを申すとただではおかぬぞ!」
 するとこのとき、子リスの一匹がすっかりあたまをくるわせて、「きたんだ、きたんだ、きたんだもん!」とちいいさなスプーンでテーブルを叩きながら、キーキー声をあげました。
 エドマンドは魔女がきりりと唇を噛み、血がひとしずく、白い片ほほのすみにうかぶのを見ました。魔女は杖を振り上げました。「おお、止めてください、止めてください、お願いです!」とエドマンドが叫びました。
 石像の群れにかわりはてた彼らを見て、エドマンドははじめて、自分以外の生き物を哀れに思いました。
 再び、そりが走ろうとして、ぎくん、と止まりました。いつのまにか雪が緩みはじめていたのです。
 それでも魔女は小人を叱咤して走らせようとしましたが、ますます雪がとけてそりは使い物にならなくなりました。
 3人は一列になって、ぬかるんだ道を必死に歩きました。エドマンドはこびとに後ろ手に縛られ、1番最後から魔女が「やれ、いそげ、それ、いそげ、」と追い立てました。
 しかし、キンポウゲが咲き、蜂が飛び交うのを見て、こびとが言いました。
 「これは春でございます。どういたしましょう。あなたさまの冬はたしかに滅ぼされましたぞ!アスランのしわざにござります。」