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甲状腺ガンは、「一病息災」のお守り

2012-06-05 13:56:58 | 甲状腺ガン

『甲状腺ガンは、「一病息災」のお守り』

●初めての定期検診の日

 初めての検診の日がやってきました。「甲状腺ガン」と診断さ
れて、半年後のことです。朝5時に起きて、モダン寺の坂をのぼ
ります。私もガン患者になってから、はや半年がたったんだ。
今日はなんて言われるだろう。『ガンが大きくなってますね』だ
ろうか。いや『たいへんです! 気管支に転移しています。すぐ手
術しないと危ないですよ』と言われたらどうしょう。考えただけ
で気分が滅入ります。「喉を切る手術って恐いな。私の命もこれ
までか」と、またも心臓がドキドキしてきました。


 一時間後、診察室で次のように言われました。「藤原さん、緊
張されてますね。だいじょうぶですよ。7.5ミリです。1cm以上
になったら取りましょう。また半年後にきてください」。
「え、半年でO.5mm大きくなっただけ! そんなんでいいの?」
私はひょうし抜けしてしまいました。


 その後の経過でわかったことですが、半年にO.5mm大きくなる
ガンなら、1cm以上になるのにあと5年はかかる、こんな流暢な
ペースでいいの? なんだか今まで恐怖感いっぱいで過ごした一日
一日がうそのように思われてきました。


●原発事故の後遺症として「甲状腺ガン」がクローズアップ

 東北大震災につづく福島原発事故・・・その後遺症として「甲
状腺ガン発症」の危険性を、新聞やテレビなどで何度も取りあげ
られています。私としてはとても他人ごととは思えません。小学
生の子どもたちに十年後に発症する率は、今までの5倍とか。
なんてこわい話しでしょう。

 ただ私の認識では甲状腺ガンは、ガンのなかでも一番おとなし
いもので、あまり悪さをしないガンだということがわかってきま
した。もちろんケースバイケースではありますが。


●知らせる人は最小限にしておきたい

 ガンとはいえ私の場合、進行はゆっくりだし転移もあまりしな
いという説明を医師から受けました。「ラッキーだ、このラッ
キーをしっかりと味方につけて、病気に負けない生活をしていこ
う」と、心に決めました。

 誰に伝えるか。まずは家族に。それから職場の上司に。これは
当然伝えなくてはならない人たちです。それからもう一人、卓球
のダブルス・パートナーに。試合にいつ出られなくなるかわかり
ません。そのとき迷惑をかけてしまうでしょうから、知らせてお
かないと。

 この三つの領域の人たちに知らせました。家族は晴天のへきれ
きのように打ちのめされた顔つきになり、職場の上司は「・・・
手術するなら腕のいい医師を選んで。なんなら紹介するよ」と。
一番落ち着いていたのがダブルスのパートナーでした。その理由
はあとになってわかるのですが。


●「病気はするけど、病人にはらならないぞ」

 この言葉を心に誓って、私の本格的な「ガン患者生活」はス
タートしました。

 落ち込んだ暗い表情にならないように。できるだけすてきな笑
顔の人でいようと思って、何度も鏡の前で笑顔の練習をしたり。
私の好きな女優さんの松坂慶子の写真を机の前に立てかけたり。
服装はなるだけ明るい感じの服にして、気にいったアクセサリー
をつけておしゃれを楽しもう。今までしなかった(いやする時間
の余裕がなかった)ウインドウ・ショッピングもするようにしま
した。

 背筋をしゃんと伸ばして、元気な印象を与えられるように。79
才のバレエリーナ、アーラ・オシペンコの写真をはりだして、見
るたびに「そうそう背筋ピーンだったわ」と伸ばしたり。
 
 感動した人は俳人の金子兜太(とうた)さん。NHKの番組で見
たのですが、90才におなりだったと思います。「私はやめませ
んよ。死ぬまでこの仕事を続けます」と、きっぱりと言い切って
おられました。「私も金子兜太さんのような生きる姿勢をもちた
い」と思いました。

 試合会場でダブルス・パートナーが教えてくれました。「藤原
さん、ほらあの人見て。向こうから3台目で試合してる人。赤い
ユニホームを着てる人よ。あの人も甲状腺ガンで手術されたの。
もう三年前だけど。今じゃ元気に卓球の試合に出てられるの。だ
からあなたもだいじょうぶよ」。

 この情報はとてもありがたかったです。「手術してもあそこま
で戦えるんだ。私もがんばれる!」。私にとっては地獄で仏に
あったような気持ちで、その人の戦いぶりを見つめていました。

●私にとってはガンは「一病息災」のお守り

 「甲状腺ガン」についていろんな人の話を聞き、テレビの健康
番組を見、本を読んだりして知識を積極的に増やしていきました。
     


 
やがて私の認識が少しづつ変わってきました。初めのうちはガ
ンというと「転移、手術、放射線治療、吐き気、脱毛そして
死・・・」こんな怖い文字のとりこになって、生きたここちのし
ない毎日でした。しかし「甲状腺ガンは、ちょっと違うぞ」と思
いはじめました。

 医師に処方された薬をきちんと飲んで、半年ごとの定期検診を
受けていればだいじょうぶ。いままでと同じように仕事もできる
し卓球もできる。体を冷やさないようにして、極端にムリをしな
い生活を続ければ、そうそう恐れることはない症状なんだ」。

 こんな気持ちが今では定着し、「甲状腺ガン」という病気は、
今の私にとってはお守りみたいなもの。「一病息災」と意味づけ
しながら、やりがいを感じられる仕事に精をだし、なによりも好
きな卓球で体をきたえ心のストレスを解消しています。



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