二回目は一回目よりも冷静に(スクリーンの小ささにめげず…てこと)細部まで観察できました。
舞台ミュージカル映画化の「成功例」ってどういうものなのかと。
実際、この舞台をブロードウェーで観たときは「面白い!来日してほしい!!」と思ったけれども、既に話が出ていた「映画化」についてはあまり期待していませんでした。このまま映画化すると、どう考えてもブツ切りビデオクリップ集のようにしかならないだろうし…ま、私が撮るわけじゃないんだけど…でも、ちょっと想像つかないな…と。
で、今年は「来日」と「映画化」という二つの夢がかなったのですが、
ふたを開けてみれば
来日公演=△
映画=◎
それでですね…
まず、この映画『ヘアスプレー』、舞台とはかなり話の展開が違っています。特に後半。舞台の展開に親しみを覚えているものには一瞬「!」でしたが、でもやはりこれが「正解」なんでしょうね。
特に、舞台の方の脱獄シーンなんかは、スクリーンでは違和感があるだろうし、フィナーレの「衣装早変わり付き三段落ち」も舞台ならではの醍醐味でしょうし。また、話は前後しますが、メイベルのパーティーに招かれてからデモに至るまでの成り行きがわかりやすくなっていますね。それと、映画では、エドナ・ウィルバー・ベルマの三角関係を入れたのがgood!ベテラン俳優を起用しただけあって、中だるみになりそうな部分を上手く演出している。
また、音楽のシーンでは、元々ちょっと捻りのある歌詞に、なかなか凝った映像をくっつけているのが面白いんです。(前の記事でもちょっと触れたけど)I Can Hear the Bellsとか(You’re )Timeless to Meなど、「おー、そうきますか!」とちょっと興奮!もちろん、初めてこの作品を観た人にとっても、きめ細かい映像と俳優の表情が心地よいだろうと思いますよ。
デモのときに歌うI Know Where I’ve Beenも、「私も参加するわ」と健気に言うトレイシーの表情を映しながら、メイベルがThere’s a light in the future…と歌い始めるところなど、不覚にも泣きそうになりました。(映画でのこの曲は、リードに合わせてオブリガートが入るのが感動的♪)
メイベル役のクィーン・ラティファの歌もいい。あちらのサイトでは、もう少しこの歌にパワーがあっても…という声もありましたが、確かに舞台では、この役の女優はもっと「濃い」歌い方をします。黒人霊歌独特の唸るような歌い方で。それと比べるとクィーン・ラティファの歌唱が「弱い」と感じる人もおられるのだろうと思いますが、私自身『ドリー○ガールズ』もあんまり好きじゃなかったし(?)ミュージカルにはポップな歌が一番似合うと思うのでこれで良かったと思います。(心を揺り動かすような黒人歌手の歌は他の場所で聴きたいです)
あとは、俳優のちょっとしたしぐさもすべて計算されているのが印象的なんです。
最後にトラボルタasエドナがスタジオに乱入するシーン。ベルマがジト~ッとした眼差しで見つめます。あれって、もしかして嫉妬?欲しいものは全て手に入れてきたベルマだったんですが、新たな野望は失敗に終わってしまいます。一方、相変わらず「交通渋滞を起こしそうな」いでたちで現れたエドナ。おでぶで美人じゃなくて貧しくても、夫に愛されて温かい家庭があるエドナを、ベルマは、心の底では、恨めしく思っているのが窺えるんですよね。
観ている側は、こういう何気ないシーンでその作品全体の印象がきまったするものです。
出番は少ないけれど、コーニー・コリンズのちょっとした表情や仕草が、完璧にそのストリーテラー的な役割を果たしているし、また、リンク役のザック・エフロンがコミカルな演技が上手いのにも感心しました。Without Loveのところなんか、舞台ではリンクも相当カッコいいのに…映画では「一人壊れて」いましたけど(笑)
いかにもプレスリーかぶれのリンクは黒人音楽に興味があるんだけど、でも実際に身近にいる黒人に自分から近寄って「ねぇ、君たちの音楽やダンス、教えてよ~」なんて言えるような時代じゃなかったんですよね。(もしかしたら、今でもそうかもしれません)居残りクラスで、黒人の口調を真似てみるのが精いっぱい。でも、いい意味で空気の読めていないトレイシーに「くっついて」いれば、何かプラスになるんじゃないかという「魂胆」だったんでしょうね、最初は。そこが嫌みなく演じられていて…ザック、よくやった♪
あとは、シーウェードのイライジャ・ケリーが魅力的~!彼はサミー・デイビス・ジュニアの伝記映画にも出演が決まっているそうですね。目がきれいでダンスもうまいし…もうねぇ、ザックとイライジャを家に持ち帰りたいと思ったオバサンは少なくないはずだ(!)
一番素晴らしいのは、最後にショーが人種差別撤廃をして、コーニー・コリンズがシーウィードに握手を求めるんですが、シーウィードは嬉しそうではあるけれど「なんだよそれ?」みたいな表情をして突っ張ってみせるんですよね。
ここのシーン凄い!!!
何でもないシーンだけど、ここで、この映画全体がバシッと引き締まった感じがしますよ。
これも緻密に計算されたシーンなんだろうな…
で、こういうところが評価されたんでしょうね、うん…いいよ、いいよ!
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