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And This Is Not Elf Land

情報待ち その①:Serve Yourself


ミュージカルCUTMANの話です…もうねぇ、今後は「情報待ちシリーズ記事」で粘着いたします!

しかし、これって、どこまで続くんでしょうか(笑)とりあえず、今回は①ですが…○に数字というのは⑳までしか出来ないはずだと思うんですけど~そこんとこ、ヨロシクです、関係者の皆様!!

とにかく、今は、作詞作曲のドリュー・ブロディのサイトで公開されているデモ録音からのCUTMANの曲のいくつかを、聴いている毎日です。これは4年前の録音ですが、しかし、これを聴くたびに感動が新たになって、「また観たい!」との思いがつのります。


これまでも、CUTMANのことについては、ぐだぐだと書いているんですが…とにかく、私が一番感動したのは、蓋を開けてみると、「技巧的にも優れた脚本」の「素晴らしい人間ドラマ」だったという点です。

大学卒業後、コーリー・グラント、ジャレッド・マイケル・コセリア、ドリュー・ブロディの3人でプロダクションを立ち上げ、さまざまな舞台を作ってきました。今は、当時の資料から、それらの内容を窺い知ることができるだけなのですが…特に、05年のLIGHTENING FIELDは、ゲイ・カップルを主人公にして、人間の深い業と究極の愛の形を描いた力作で、フリンジでベスト・プレイに選ばれ、NT TIMESなどでも絶賛されました。その後、ロンドンでも上演されています。(このときは、コーリーはJBに加わっていて、ロンドンでは、演じていません)し…しかし、公開されているフォトを観ましてもですね~オバサン的には目のやり場に困るというか(汗)

とにかく、彼らは、常に挑発的な問題作を発表してきているようでもあり、私は、今回のCUTMANにしても、「オバサンはちょっとついていけない」的な作品であったとしても、それは仕方がないと思っていたのでした。しかし、繰り返しますが…蓋を開けてみると、斬新な手法をとりながらも、最後は、多くの人が涙するような、素晴らしい人間ドラマとなっていたのです。

こういう、完成度の高いドラマが作れるチームなんだ!…と、思うと、あの3人に対する愛情が、さらに深まっていくのであります(笑)

さて、今月号のボクシング雑誌に、CUTMANのことが6ページぶち抜きで載るという話は以前に書きましたが、そこの載せられている記事がネットに上がっていましたので、紹介いたします。こちら

とにかく、Goodspeedのワークショップ・プロダクションについては、全ての批評が禁じられているので、このように、作品の本質を的確にとらえたエッセイは嬉しいです。これを書いた人は、普段はボクシング関連の記事を中心に書いていらっしゃる方のようですが、舞台を見る目の確かさも驚きです!

冒頭の部分で、この作品は、ボブ・ディランの言うGotta Serve Somebodyというのが、究極のテーマなのだと書いています(そのとおりですね)Gotta Serve Somebodyの中では、ディランは「人は誰でも、帰依する存在が必要なのだ」と歌っていますが、これに反論したのがジョン・レノンでした。レノンは、この曲は陳腐でナンセンスなものだと批判し、自らの曲の中でServe Yourselfと歌っています。まさに、CUTMANのテーマです…ただ、この作品の中では、この二つの立場は、相対するものとしては描かれていません。(と思う)

また…これはちょっと驚きだったのですが…ボクサーのドミトリー・サリタはCUTMANについては、あまり協力的ではないのだそうです。サリタはロシア移民の敬虔なユダヤ教徒でもあります。サリタは「自分は、戒律を破ってまで、ボクシングを優先させたことはない」と語っているそうですが。私は、ここの「選択」のシーンは、人が生きていく中で直面しなければならない、究極の選択の象徴として描かれているものだと思うのですが、ユダヤ教の教えを生活の中心に置いている人には、そういう風に割り切って考えるのは難しいのかもしれません。

CUTMANのクライマックス。ボクサーとしてタイトルを失い、人としての誇りも失いかけていたアリでしたが、大雨の被害にあったシナゴーグに、新しいトーラ(ユダヤ教の聖典)を寄付します。ここ…私はよく知らなかったのですが(汗)トーラというのは、巻物であり、美しい刺繍を施した布に包まれているものなのですね。私は、単純に「ん?なんで、トーラは本の形をしてないの?」と思ってしまったのでした(笑)また、トーラの祀ってあるのは、トーラアーク或いは契約の箱と呼ばれる、箱舟の形をした聖櫃です(…と、この部分は、帰国後にユダヤ系アメリカ人の人に教えてもらった…笑)

で、そのクライマックスのシーンでは、アリは、厳かに箱からトーラを取り出し、その完成された「美」を称えます。そして、自分の財産を投げ出しても、大雨で失ってしまったトーラを、ふたたびシナゴーグの契約の箱に取り戻したというのは、自分の生涯でもっとも崇高な行いであった、と。しかし、それは、愛するオリビアには理解してもらえませんでした…でも、アリは歌い続けます…オリビアだって美しいではないか、自分を支え続けてくれた彼女が正しくないと言い切れるのか…神よ、僕たちはまだ対等ではないのですか?まだ、僕は借りを返してはいないのですか?神よ、お導きください、どうしたら、あなたに対して、そして、自分自身に対しても、忠実でいられるのでしょうか

結局、この長い曲の後、アリはトーラを箱に戻し、そっと扉を閉めてしまいます。ここのシーンも、私は、彼は宗教を否定したのではなくて、さらに、その先にある世界に歩み出る決意をしたのだと受け止めたのですが…でも、観る人すべてが、宗教的に中立的な立場であるとは限りません。(むしろ、そういう人は少ない?)いろいろな解釈があるでしょうね。

それとですね~、このFaithfulという曲は、メロディーも美しくてドラマティック…ミュージカルとしては満点の曲なのですよ。ドリュー・ブロディという人は、ホントにすごいわ!劇中歌として、確実に「語り」ながらも、「音」として、観る人の情緒を揺さぶるという、そういうミュージカルの理想形の曲が作れる人です!あ~あ、何度も劇場ですれ違ったのに、っていうか、駐車場で隣同士になったのに(笑)やっぱ、少し話をしてくるべきでした(!)


さて、この記事に戻りますが、記事では60年代にボクシングをテーマにしたミュージカルGOLDEN BOYにも言及しながら、CUTMANのNYのランは十分に可能であると述べています(私もそう思います!!!お願い!!)

あと、本当に納得したのは「この作品は、もっと前衛的なものにしようと思ったら、それも可能だったかもしれない。しかし、このクリエイティブ・チームは、ミュージカルの伝統を無視することは頑なに拒んだ」と書かれている部分です!私は、先に「斬新な手法を取りながらも、観る人に『おいてけぼり感』を与えない」と書きましたが、本当にその通りなの!!新しい試みを通して伝わってくる刺激と、伝統に則った「安心感」の、両者のブレンドが非常に心地よい作品なんですよ。(あ~、ピックアップされてくれ!)


なんか、「その①」という割には、長々と書きましたが(今日は、わりとヒマなんで…)(っていうか、②、③…とネタがあるんかいな~笑)最後に…

こうなると、この3人による新作ミュージカルDERMAに対する関心も湧いてきました!!これは、1年半ぐらい前に完成していて、デモ録音などもできているのですが、一般への公開はまだのようです。何かの機会にリーディングを披露してくれないでしょうか?この作品では、コーリーは「共同脚本」としてクレジットされています。(CUTMANは共同原案ですが)

…このストリーは、ひとりの若い女性が困難を乗り越えて、自己を確立していくまでを描いています。彼女が難病の皮膚(derma)病を抱えていて、それが、永遠に人を閉じ込めようとするものの象徴として描かれているようです。ちょっと、CUTMANと共通するものが見て取れます。このチームは、技巧的にもレベルの高い脚本と、骨太な人間ドラマを作れるんですよ!こっちも要チェック!!

あ~深みだわ!!
私はどうなるのでしょうか(笑)
NYで「ライオンキング」とか見て満足していたころは平穏でしたよ(遠い目)
もう戻れないよね?

今日はこのくらいで!
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