ミュージカルCUTMAN3回目 6月4日(土)マチネ
今、アムトラックの中で、これを書いています。いやいや、オバチャンのコネチカット大冒険は終わりました。無事にNYCに向かっています。ホント、よく生きて帰れたわ(ははは)
CUTMANも、こちらの時間で、明日で終わります。今日は「BWプロダクションだったら、どこが、どう変わるんだろう…などと、早くも想像をたくましくしながら観ていました
ところで、先日、HOW TO SUCCEED…を観まして、結構よかったですよ。ダニエル・ラドクリフ君って、ホントに小さくて、結構顔が大きかったです(?)~いや、そういうことよりも、あれは作品的には、もう文句のつけようのない名作なんで、今さら内容がどうこうという話もないでしょう。それよりも、とにかく「ブロードウェイ・プロダクションって、(良くも悪くも)こういうものなのね」という「勉強」になりました。
CUTMANは、ストリー、脚本、音楽、演出・振付、ともに完成度が高く、BWにやっても何の不思議もないレベルに達しています。特に、音楽が想像以上に素晴らしい。(そういえば、今日、駐車場で、私の車の隣に、作詞・作曲のドリュー・ブロディーが駐車しましたよ)脚本も、(細かいところまで分からないのが非常に残念なんですが)どれひとつ無駄なラインがなく、巧みに構成されています。
Goodspeedでは、ボクシング・ジムのセットは非常によく作りこまれていましたが、シナゴーグの視覚効果については、まだ手を加える必要がありそうでした。場所が変わると、スケール感も違ってくるでしょう。
昨日は、ロゴマークになっている写真に込められたメッセージについて、思うことを書きましたが、今日気づいたこともいくつか書きましょう。
父が、シナゴーグの地下室で、アリのタイトルマッチのラジオ中継を聴こうとするのですが、電波がよく届かなくて、聴こえにくい…というシーンがあります。まぁ、平たく言えば「圏外」になるってことですよ。地下室が外の情報から隔絶された世界であったことを、さりげなく示しているんでしょうね。
父は、アリに自分がかなえられなかった夢を託して、1歳になる前から、シナゴーグの地下室で、ボクシングのトレーニングをします。(って、どういうトレーニングなんだよ…笑)(一応、突っ込んどく)しかし、一方では、普通の社会で、普通に生きていくスキルを教えませんでした。アリは、実際、成長してからも、自分が実社会のことを何も知らないことを痛感せざるを得ませんでした。父は、そのことをアリに詫びるシーンがあるのですが、そこと繋がっているんですね。とにかく、こういう綿密さが随所にみられる作品です。ついでに付け加えると、この「ラジオ」がシーンとシーンの「繋ぎ」の役割もします。巧い演出~
父とべったりくっついていても、将来の展望が見えないと感じたアリは、学校を辞めてボクシング・ジムに入ります。そこのトレーナー、リンカーンと相対して歌うのがKiller Instinct。「なんか、物騒なタイトルだな(?)」と、最初は思ったのですが、今日、意味がわかりましたよ(笑)
アリは、父のトレーニングのお陰で、高い技術を身につけているけれど、ボクサーとしての根本的な闘争本能のようなものが欠けていることを、リンカーンは気づいていたんですね。アリの父親は、ただただ神のもとで善良でありたいと願い、競争社会から身を引いてしまっていましたから、そうう父親に訓練されても「技術」以上のものは身に付かないかもしれません。そこで、リンカーンは、アリの中に眠っている闘争本能を引き出そうと試みます。この曲は、激しいラップのリズムとユダヤのメロディーをブレンドした凄い曲です。ふたりのアクションも圧巻!…ここで、アリの中のkiller instinctが目覚めたことを確認したリンカーンは、プロとして試合をセットすっるのでした。
あとは、宗教的なメタファーなのですが…十分に理解しきれていないところはあると思いますが、たとえば、嵐と大雨でシナゴーグの地下室が水没しそうになったり、シナゴーグの祭壇(と呼んでいいのでしょうか?)の天井が嵐で壊れて、大切なトーラが濡れて壊れるという「水」にまつわるエピソードが重要になってくるのですが、に隠された意味があるのでしょうか。何かを洗い流す…あるいは、何かを清める…(すいません、これ以上のことは分かりません)
また、アリの恋人のオリビアは、ユダヤ人ではなく、ごく当たり前のようにアメリカ的物質主義の影響を受けている女の子でした。ファッションの世界で成功したいという夢を持ち、同じく、夢に向かって目を輝かせているアリを愛します。しかし、彼の足を引っ張っている(ように見える)ユダヤ教の教えに大きな疑問を持ちます。それでもアリと結婚するために改宗しようとするのです。しかし、それが出来ない自分に気付きます。もう、これ以上自分を偽れないと…シナゴーグで、カントルが「犠牲とは最も神聖な愛」なのだと、教えを説きますが、そのあとに、オリビアが絞り出すように歌うのがCome Back、「男女の性愛だって神聖なはず!」ここは、オリビア役のアナ・ノゲイラの歌唱とともに圧巻。
とにかく、キャストはみんな、歌うまいのよね。もうねぇ、心の中では、コーリーに「あんた、フランキー・ヴァリだったんだから、歌頑張ってね」とハラハラでしたが(?)最後の長い曲Faithfulでは、もう、観客の心の奥まで入り込むような、素晴らしい歌唱でした。今日は、ここで泣く人が前日、前々日よりも多かったです。既成のポップソングを歌うフランキー役と違うのは、あくまでも「演じるように」「語るように」歌わねばならないところでしょう。
なんか、ただ思いついたことだけを連ねているみたいですが(笑)しばらくは、これでお付き合いくださいませ…
CUTMANは、ふたつの相対する考え方の中で、引き裂かれる人間の物語です。こういう話はよくあります。「セールスマンの死」「陽の当る場所」…しかし、これらは全て悲劇で終わります。まぁ、「引き裂かれていく」人間の物語なんですから…私も、長年、こういうテーマには「悲劇」しかないのかと思っていました…
しかし…
結末をバラしますと、CUTMANはハッピーエンドなのです。もちろん、「実は、運にも恵まれた」というハッピーエンドではありません。凄まじいまでに一途な自己凝視の中から、一筋の光を見いだして、それを知恵と勇気と愛で手繰り寄せたハッピーエンドなのです。
私は、この話を悲劇にしなかったクリエーターたちに、最大級の賛辞を贈りたい。
つづく
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