「言葉の障壁をなくして」上演することから得られるものも多いはず。
2005年にブロードウェイでオープンした「ジャージー・ボーイズ」はその後、イギリス、オーストラリア、ニュー・ジーランドで上演され、2012年にはアジアで初めてシンガポールで上演され、そのカンパニーはその後南アフリカへ向かいました。ここまでの流れで言えるのは、一貫して、英語圏で英語による公演を続けてきた、ということです。
その後、2013年にオランダで、歌は英語、台詞はオランダ語という形で上演されたのが初の非英語圏での「ジャージー・ボーイズ」となりました。
とにかく、同じく既成のミュージシャン(アバ)の曲を使ったミュージカル「マンマ・ミーア!」が、ロンドンやNYでオープンした後、またたく間に日本やヨーロッパ諸国など非英語圏での上演が広まったのとは明らかに事情は違っています。
で、日本ではどうなるのか…?
私は「オランダ形式」(つまり、歌は英語のまま、台詞は日本語)を踏襲しそうな気がするんですが、どうでしょう(笑)
「ジャージー・ボーイズ」の場合は実在の音楽グループをモデルにしたドキュメンタリータッチのミュージカルなので、歌詞でストリーを語るというのは(原則的には)ありません。観客の側としても、舞台上で原語のまま歌われていても、「これがフォー・シーズンズだったんだ」と思って観ていればいいので、さほど違和感はない筈です。
ただ、国民の大半が英語を理解すると言われるオランダと違って、日本では、少なくとも主要曲の幾つかは、何らかの形で歌詞をわかってもらった方が作品世界を伝えやすいですよね。(「ショート・ショーツ」とかは別にいいと思う…笑)
そこは日本独自の演出を期待したいと思います。
まぁ、とにかく…日本版がどのような形で上演されるのかについては、まだまだ推測の域を出ないわけですが「台詞は日本語」…これは確実(!)
「ジャージー・ボーイズ」の最大の魅力はその音楽だと思いますが、脚本も非常によくできています。そうでなければ、トニー賞やオリビエ賞などの演劇賞を受賞することはなかったでしょう。この脚本は日本語で上演する価値はあると思います。
私も長年「ジャージー・ボーイズ」と付き合ってきて、台詞もほぼ理解しているつもりでいたのですが、イーストウッド監督の映画の字幕または先日の舞台の字幕から、一つひとつの台詞が実際にいつも使っている言葉として目に入ってくると、また微妙に印象が違ってくるものなのですよね。で、そのギャップを自分で埋めるようにしながら鑑賞していたわけですが、次第に、この脚本…すべて普段使っている言葉(日本語)に置き換えてみるのもいいのではないか、と考えるようになりました。
「字幕」はあくまでも字幕でして、字数も限られていますし、細かいニュアンスまで伝えきれません。舞台の字幕などは「筋が追える程度」のものではないでしょうか?(それでも、生の演技の迫力と言うのはそこを補って余りありますが)そんな中でも台詞の面白さも味わいながらご覧になった方もいらっしゃったと思います。
逞しい生命力にあふれたトミーの「春」の語り。知的で希望に溢れた「夏」の語りはボブらしい洗練された比喩に富んでいます。悲しみや絶望と隣り合わせの人生を語るのは「秋」のニック。苦難の中からの再生を探るフランキーの「冬」の語りは求道的で引用も多い…移ろいゆく四季の情緒を繊細に感じ取ることができる日本の人たちにこそ、字幕だけではなく、翻訳された台詞で細かいニュアンスを伝えることは意味があると思います。もちろん、対話としての台詞も非常に機知に富んでいて味わい深いものです。
これが、日本独自の演出によってさらに魅力を増すとしたら、非常に楽しみであります。
また、「ジャージー・ボーイズ」をぜひ日本語で上演してほしいと思う理由がほかにもあります…以下、ちょっと「ボヤキ」です(笑)
日本では昨年の映画が公開されてこのミュージカルの存在が広く知られるようになりましたが、それ以前からも、海外ミュージカル・ファンだけでなく、洋楽ファンの人たちが注目していらっしゃいました。それは当然と言えば当然です。
ただ、そんな中、演劇関係者や演劇ファンの方の反応が今ひとつな気がしてならないのですが…思い過ごしでしょうか(笑)演劇に深くかかわっていらっしゃる方というのは、とにかく「ジャージー・ボーイズ」というのが「ジュークボックス・ミュージカル」というカテゴリーに入るというだけで色眼鏡といいますか…最初っからB級作品扱いといいますか…まともに相手にしないといいますか…まぁ、これはアメリカ本国においてさえもそういう傾向が無かったとは言えないんですが。(このあたりは来日公演のプログラムの中で演劇ジャーナリストの伊達なつめ氏が的確に書き記していらっしゃいます)とにかく、な~んか「冷気」を感じてしまうんですが~(考えすぎ?)
今回の来日公演の呟きやブログなどを眺めていますと、演劇に深くかかわっていらっしゃる方(ファンの方も含めて)からの意見として、「単なるコンサート、演劇と呼べない」という辛口のものも見受けられまして…これはジュークボックス・ミュージカルと呼ばれるものへの一般的な反応とも言えるわけですが…。まぁ、感想は人それぞれではありますが、でも「ジャージー・ボーイズ」はこのジャンルの作品としては唯一メジャーな演劇賞を受賞していますし、やはり残念ではあります。
ただですね…「ジャージー・ボーイズ」は、台詞が十分に理解できなければ「単なるコンサート」として映るだろうと思います。それでも、音楽がお好きな方はそれだけでも楽しむことができるでしょうし、それはそれで悪い話ではありません。まぁ、演劇に関わっていらっしゃる方というのは、例えばエドワード・オールビーの新作劇を英語のままでご覧になっても、即座に台詞を理解できる方ばかりなのかも知れませんが。
とにかく、「ジャージー・ボーイズ」は、音楽は日本人にも親しみやすいものである一方、台詞部分は英語が第一言語でない人には難度が高いものです。音楽が素晴らしいだけでなく、「演劇作品としても面白い」と思ってもらえるには、まだまだハードルが高いのですよね…。私は、そこの部分を解決することで…つまり、「言葉の障壁をなくして」上演することで、さらに作品の世界を深く、広く伝えられることができると信じています。
で、「歌部分」はどうされるんでしょうかね?
とにかく、ご健闘を祈ります(笑)
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