これでもあなたはPCR検査を受けたいですか？

私の生まれ住んでいる広島市の人口は概ね120万人です。
広島市における新型コロナウィルス感染症の検査状況を見ると、令和2年5月17日現在で2,565人がPCR検査を受けて84人が陽性と判定されています。
単純に考えると感染率は84÷1,200,000×100で0.007%となります。
しかし実際には無症状の感染者がこの10倍から20倍近くいるのではないか考えられていますので、15倍いると仮定すると感染率は約0.1%になります。
とりあえずこの0.1%で計算を進めましょう。

PCR検査は100%信頼できる検査方法ではなく、その感度（陽性の者が正しく陽性と判定される確率）は70%、特異度（陰性の者が正しく陰性と判定される確率）は99%程度だと言われています。
ですから、感染率0.1%とするとこれに感度の70%をかけた数字が陽性と判定された人のうちで本当に感染していた人（真の陽性者）の割合になります。
計算すると真の陽性者は0.07％になります。そして0.1%から0.07%を引いた残りの0.03%は実際には感染しているにも関わらず陰性と判定された人（擬陰性者）の割合になります。
同じように陰性の人を計算してみると、100%から0.1%を引いた99.9%が感染を受けていない人の割合になりますので特異度の99%をかけると98.9％となり、これが感染していない人のうちで実際に陰性と判定された人（真の陰性者）の割合になります。そして99.9%から98.9%を引いた1%が感染していないにも関わらず陽性と判定された人（擬陽性者）の割合になります。
っということで、全員を検査してしまうと真の陽性者の14倍もの擬陽性者が出るわけで、これは1人の感染者を治療するために感染していない14人がおつきあい入院しないといけなくなることを意味しており、むやみにPCR検査を増やしてはいけないということが容易に解ります。
ほんとに簡単な算数なので小学生にでも解けますよね。

ですからこんな事にならないように検査を受けるべき人を絞り込んで、より高い確率で感染者を見つけ出すことで医療崩壊を避けて一人でも多くの命を救おうというのが日本政府が決定した戦略です。この戦略はABEさんが自分の都合で勝手に考えたわけではありません。高度な知識を持った専門家が集まって議論して決定されました。
どのように絞り込んでゆくかというと、問診による実際の症状や行動歴の聞き取り、そしてレントゲンやCTスキャンの画像がかなり決め手になるそうです。
このようにして検査を受ける人の10人に1人が感染しているくらいになるように検査対象者を絞り込むことができれば、陰性の人が誤判定で陽性者とされて病院ベッドを占めてしまうリスクを大きく低減することができます。

ではここからもう少し突っ込んで計算してみましょう。
先に紹介したように、広島市では5月17日までに2,565人が検査を受けて84人が陽性と判定されました。
単純に計算すると検査を受けた人の約3.275%が陽性だったことになります。
そこで、実際に広島市がどのくらい絞り込んで検査を行っていたのかを逆算してみました。
エクセルにちゃちゃっと式を入力して、あとは真の陽性と擬陽性の合計が概ね3.27～3.28くらいになるように手動で検査対象者の感染率（事前確率）を少しづつ調整することで簡単に概算できます。もちろん感度と特異度と検査人数と陽性判定された人数から正確に事前確率を計算させることもできますが、そもそも感度と特異度がかなり丸められた数字しか手に入らないので、正確に算出する意味はあまりないのと、手作業で事前確率をいろいろと変えてみることで、擬陽性者や義陰性者の割合がどう変動するのかも分かりますので、一発で事前確率をはじき出すよりも得るものが多いように思います。
っで、広島市の検査は事前確率3.3%の時に真の陽性と擬陽性の合計が3.277となりました。まだまだ篩の目が細かすぎて事前確率10%にまで検査対象者を絞り込めていない、つまり検査しなくてもよい人まで沢山検査していたことが解ります。
そして何よりも、PCRで陽性と判定された84人のうちのなんと29.5%、つまり24.8人が実際には感染していなかったことになり、陰性と判定された2,481人のうち25.4人が実は感染していたと・・・・。

こう考えてみると、濃厚接触者として検査を受けて無症状で陽性と判定された人や、症状が非常に軽くて早期に退院できた人はただの風邪だったりで、そもそも新型コロナウィルスには感染していなかったのかもしれませんね。

今回はかなり大雑把な計算ではありましたが、このように具体的に数字を弾いてみると、PCRで陽性だった人が必ずしも感染者というわけではないことと陰性だったからといって感染していないことのお墨付きではないことが理解でき、同時に陽性者に対する偏見や差別、誹謗中傷がどれだけ根拠の乏しい感情的で罪深い行いであるかも分かります。

データの持つ意味をきちんと理解して、冷静に行動したいものですね。